5話:相田さんの悩み
僕は相田さんと共に家を出た。
相田さんは少し下を向いて前を歩いている。
「私も退屈を感じてたのかも」
「…そうなの?相田さんはリーダーみたいな感じだし、そんなものないのかと」
「何もせずに自分の時間が欲しくって」
彼女は手を後ろに組み、上を向いて話し始めた。
「色々するからさ、それはそれで退屈なんだよね」
「そうなんだ…ならなにかしに行ってみる?」
多分以前の自分なら出ないような言葉が口をついて出たことに驚く。これも、ネコの影響なのかもしれない。
「…うん」
「軽く散歩でもしてみようよ。僕も前はしてなくてさ…アイツのせいかなぁ」
「クロのせい?信じらんな〜い」
乾いた、涼しい風が二人の間を吹き抜けていった。道の落ち葉が風に乗って飛んでいく。
「わぁ…なんか初めてかも」
「気持ちがいいね。ここの辺りは歩いたことなかったから楽しいや」
「だね…退屈さも吹っ飛んでいっちゃった」
相田さんは軽やかな足取りで舞うように歩き出す。
さっきとは違って、憑き物が落ちたような感じで。
「踊ってるみたい」
「でしょ?お嬢様、って感じ!」
「ダンサーみたいだよ。優雅な感じ」
「これならクロも懐いてくれるかも…あっ」
少し先で、相田さんは躓く。僕は急いで駆け寄り、相田さんの手を取った。
「ごめんね。ちょっとはしゃぎ過ぎちゃった」
「こける前に助けられたから大丈夫!」
グッドサインを向ける。相田さんもグッドサインを返してくれて、思わず笑みがこぼれる。
少しして僕達は相田さんの家に戻った。
なんとなく、いい予感がした。
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