2話:ネコの飼い主

近くに来たネコを、僕はなんとはなしに抱き上げた。シュッとした体、綺麗な黒い毛。首元に、目立つ赤い首輪がついている。

「あっ…」

その首輪をじっと見る。さっきとは打って変わってネコは動かない。

「ごめーん!」

遠くから声が聞こえる。顔をあげると、クラスメイトが走ってくるのが見えた。

「山野くんだよね…その子、ウチのネコなの」

「そうなんだ…返すね?」

僕はそのネコを渡そうとしたが、離れない。

「あー待って待って!私には懐いてないの…」

「あれ、でもこのネコは相田さんの家のじゃ…」

「なんでかな…私がちっちゃい頃から家にいたんだけどね」

言われてみると、納得がいく。ネコは飼い主であるはずの相田さんの方へ行こうとしない。

「失礼なのは承知の上だけど…家まで連れてきてくれる?」

「でも僕下校中だし…」

「お願い!」

相田さんは両手を合わせて頭を下げた。こうされると、僕も断りづらい。

「…いいよ」

ご満悦そうなネコを抱え、相田さんについていった。

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