2.一時限目
怜奈は、三学期の期末テストの勉強のため、朝早くに登校した。
怜奈は、毎回、中間テスト、期末テストの一週間前から、早朝七時頃、登校している。
それは、クラスの大抵の生徒が知っている。
朝の支度が大変なのだそうだ。
風呂場、トイレと洗面台を妹と奪い合いになる。
三十分、どちらかが早く起きれば、問題は解決する。
怜奈は、自分が姉だから、三十分早く起きて、通学の支度をしている。
どうせなら、テスト期間の一週間前から、一時間早く起きようと思った。
朝早く登校して、テスト勉強する事にしている。
そういう訳で、怜奈は、登校してすぐ、職員室へ教室の鍵を預かりに入室した。
職員室には、川口先生が居た。
先生に挨拶して、鍵を預かり、中央通路から渡り廊下を通って、本館南棟へ向かった。
本館南棟出入口の階段を上がり、二年三組の教室へ向かった。
教室の出入口の鍵を開けると、職員室へ戻った。
職員室へ鍵を返して、退室した。
職員室には、まだ、川口先生だけしか出勤していなかった。
うさぎの飼育ケージに誰か居た。
美加だ。
「おはよう」怜奈は、美加に挨拶すると「おはよう。早いんやなあ」と美加が挨拶を返した。
「期末テストの勉強や」と怜奈は答えた。
美加は、うさぎの世話をしていた。
職員室の西隣が指導室になっている。
廊下から中庭に向かって、うさぎの飼育ケージが、二つ並んで置かれている。
怜奈は、美加と一緒に教室へ向かった。
怜奈は、上履きに履き替えていた。
美加は、登校してすぐ、中庭にいたので靴のままだ。
中央階段を上がって教室へ行く方が近いのだが、美加と一緒に中央通路から、渡り廊下を通って本館南棟へ向かった。
渡り廊下は、コンクリートが打たれていている。
片側が一段高く、上履き用のマットが敷かれている。
渡り廊下は、本館の東隣にある新館まで続いている。
怜奈と美加は、本館南棟の出入口の階段を上がって、三組の教室へ向かって廊下を歩いた。
怜奈は、美加と二人で、教室後方の出入口から入った。
吃驚!
床に、鮮やかな茶色のうさぎが、横たわっていた。
美加が、うさぎを見て、「ラブ」と叫んで抱き上げた。
瞬間、うさぎは、板のように硬くなっているのが分かった。
美加の顔色が変わった。
「ラブ!」
怜奈は、うさぎが死んでいるのだと分かった。
怜奈は、迷ったが、美加を教室に残して、急いで職員室へ走った。
三人の先生方が出勤していた。
一年の時、担任だった岡野先生に声を掛けようか迷った。
すぐ近くで川口先生が顔を上げた。
怜奈と目が合った。
「先生」怜奈は、川口先生近づいた。
川口先生に事情を話した。
怜奈は、川口先生と一緒に、二年三組の教室へ向かった。
美加は、教室に居た。
怜奈は、用務員さんを探して連れて来るよう、川口先生に指示された。
怜奈は、用務員さんを探した。
用務員さんは、本館と新館の間にある水槽の掃除をしていた。
怜奈は、用務員さんに状況を説明して、教室へ急いだ。
二年三組の教室に、川口先生も美加も居なかった。
うさぎの死骸も無かった。
怜奈は、用務員さんと一緒に職員室へ急いだ。
職員室の入口の前まで来ると、突然、指導室から川口先生が顔を覗かせた。
川口先生が膨らんだレジ袋を用務員さんに渡した。
レジ袋の中には、うさぎの死骸が入っているのだろう。
片山さんは、西の中庭で飼育しているうさぎだと思った。
怜奈は、川口先生と一緒に中央階段を上がり、二年三組の教室へ向かった。
清掃用具のロッカーからカラーコーンとバーを取り出し、三組の教室へ入った。
川口先生が床の雑巾がけをした。
そこだけ、床の色が変わった。
怜奈は、「歩行注意」のカラーコーンを置いた。
川口先生に連れられて、指導室へ入った。
川口先生は、職員室の前で立ち止まり、怜奈に「先に指導室で待って」と云って中庭へ降りた。
怜奈は、指導室の前に佇み、川口先生を待っていた。
中庭で飼育しているうさぎを確認しようとしていると思った。
うさぎの飼育ケージに近づいた。
飼育ケージの前で、二組の柚葉がうさぎを見ていたようだ。
政木柚葉は、二年二組、西川先生担任のクラスの生徒だ。
「お早うございます」柚葉が川口先生を見付けて挨拶した。
「お早う」と云って川口先生がケージを覗いた。
うさぎは、二羽とも居たようだ。
「先生。上履き」柚葉は、川口先生が上履きで中庭に降りている事をこっそり伝えた。
柚葉は、そのまま、中央通路から渡り廊下を歩いて行った。
怜奈は、川口先生に今朝の出来事を順序立てて説明していた。
川口先生に最後まで説明し終えた時、出勤して来た斉藤先生が、指導室を覗いた。
川口先生は、斉藤先生が、出勤して来るのを待ちかねた様子だった。
そして、川口先生と斉藤先生の二人に再度状況を説明した。
最後に、斉藤先生が云った。
「うさぎの死骸を教室に遺棄した者は、速やかに、名乗り出るように」
怜奈は頷いて、「絶対に許せない!」と云った。
斉藤先生は、怜奈を宥めるように頷いた。
「あるいは、教室にうさぎの死骸を遺棄するのを見た者は、その旨、申し出るように」
斉藤先生は、このような行為は、決して許されるものではない。
自ら名乗り出る事を願う。
と云った。
しかし、また、決して、犯人探しをしたい訳ではないと云い添えた。
あっと云う間に、一時限目の授業時間が終わった。
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