第31話 いつか見た景色

アナーキーの骸骨女は他の場所に警備として骸骨を回していたためか小さいグループは大きく弱体化した

2日とたたずバンディットの戦闘班が四つほど鎮圧した、しかし元々大きかったチームは人数がなくとも弱体化していなかったのは想像通りだ

「後3日で林間学校だ、バンディットのメンバーの武器は俺が持っていくから大丈夫だとして……こっそりお菓子とか持って行こうかな」

「いいな」

俺と沙奈、そして玲は近所のスーパーで買い物をしていた

瑠衣と黒館と神谷を呼び俺たちは作戦会議を兼ねて食事をご馳走しようと思っていたのだ

と言ってもかなり人数が多いからホットプレートで焼き肉なのだが、安い肉を適当に放り込んでいき俺たちは適当にだべる

そんな帰り道に桜河の制服を着た数人と出会った、この時間帯だと部活の帰りだろうか。玲はめんどくさそうに自分の髪をわしゃわしゃとかきわけた

「……新垣、お前…」

「っち…んだ」

「まだ不良連中と絡んでるんだってな、お前が抜けて陸上部はせいせいしたよ」

「そうかい」

俺と沙奈は少し離れて二人を見ていた、玲は陸上部だったのか

すると男の右拳が飛んだ、喧嘩慣れした玲ならば避けれるほどの単純さだが玲は避けなかった。口内を切ったのか血を吐き捨てる

「もう二度とツラ見せんな!!」

男たちの去っていく姿を俺たちはただ見ているだけだった

数時間後

「ギャハハ、勝てよマジで!!」

リビングのテーブルに置かれた二台のホットプレートには焦げた肉が残され皆は別のことに注目していた

「うい、うい、いくぞー…ウェーイ!」

俺は四つん這いになった瑠衣に、黒館は玲に座り腕相撲していた。玲と瑠衣は想像以上に弱く瞬殺されたのだ

そして今、俺と黒館の腕相撲がスタート…しかし瞬殺、俺が優勝したのだった

「馬鹿ども、作戦会議じゃ」

「あいあい、しゅーりょー!先生に注目ー!」

ホワイトボードに地図を貼り付けたヴォルザに皆の視線が集中した

「さて、次回の作戦じゃが最小戦力による防衛戦じゃ。そこでこれを使う」

ヴォルザは大型の飛行ドローンをケースから取り出した、下部には奇妙な装置が取り付けられており何かしらの改造が施されていることは明白だ

「これは試作段階じゃが魔力を電波に変換しダンジョンや山中などの電波のつながりが悪い場所でも使用できるようにしておる。沙奈はこれを使い防衛線の状況把握を行う、紫乃は校舎の屋上にて援護狙撃を行い生徒会長殿は二人の援護を行う。愛理、慎吾、玲は遊撃部隊としてバンディットと生徒会の混合防衛班のA、B、C班を支援」

「生徒会は俺たちを目の敵にしてるはずだ……なぜ俺たちに味方を?」

黒館が声を上げる、バンディットは自警団として動いているが側から見れば不良グループの一つに過ぎず生徒の大半は嫌っているがそれでも彼らは守っている

「まあ、奴らは学校を守るために力を使う。生徒会長殿はお主らの組織を利用できる駒として見とるんじゃろう。そして盤上をひっくり返すに十分な慎吾がバンディットに所属してるとなれば手を出すよりも手を組む方が有利じゃからな……瑠衣殿、敵の情報を」

腕を組んで唸る玲の隣でスマホを見ながら立ち上がる瑠衣

「今回の敵の情報は未だ掴めていませんが集団戦が得意な作戦参謀としてブレインズで動く青山が参加すると考えられます。青山のスキルは未知数ですが動きがわかることから透視やドローンのように空から見下ろせる物のように相手の動きを読めるスキルであると考えられます」

生徒会による情報提供とフットワークの軽いバンディットの情報収集班の協力により素早く情報が集まるようになった、しかしどれ程の数が来るのかは未だ未知数だ

「青山の戦術として一度に3回の襲撃を行い相手に休む暇を与えないというのがあります、まあ言ってしまえばタワーディフェンスゲームのウェーブだと思ってください」

タワーディフェンスの定石だ、最初は弱い敵が出てきて味方を出撃させるコストを稼ぐ。そして最後にはボスや強敵が一斉に襲ってくるのがテンプレだ

「そして、ブレインズのモンスターによる襲撃もありうるかと」

「え、モンスター知ってるのか?」

瑠衣からでた言葉に俺は気まずそうに言葉を出した

「?ええ、バイヤーたちが売っている怪物たちです。兵器よりも高いため我々は購入していませんが」

「……マジか…」

隠していたことが無駄だったとは……俺は思い切ってグリフィンのことを白状した。バイヤーたちから逃げ出した野良のモンスターが人を襲っていて生徒会に駆除を依頼されたと大きく脚色し、葉桜のことは黙って_____


後日、放課後に俺は愛理を待っていた。廊下には誰一人おらず夕日が差していた

今回の林間学校の班は一応、愛理が班長として色々と準備をしている。

だが、コツン、コツンと廊下の先から音が聞こえてきた、そちらに視線を向けると頬に傷を負った王坂が鉄バットを持ち数人の後輩を連れていた

「今度こそてめえをボコす!」

「またかよ」

突撃してきた王坂の懐に潜り込み蹴りを入れる、吹き飛ばされた王坂を後輩たちは足蹴にして交代した

「もうてめえはいらねえな!」

「さよならっすね、王坂せ、ん、ぱ、い」

仲間割れかよと思いつつ俺は一人の鉄バットを受け止め顎に向けて肘打ちをして鉄バットを奪い取る

獲物を得た俺は聖剣の要領で奴らの攻撃を防ぎ1人の利き手の肩の骨を折った

「く、クソっ!!」

逃げていく後輩たちに対して王坂はまだ立ち向かってきた、力こそ強いが乱暴で単調。前回のスキルの連続使用の反動が抜けていないのかスキルは使わない

「俺は、後がねえんだ!!」

「知らねーよ」

全ての攻撃をバッドに受けていた俺は、少し身を翻して奴の大ぶりの攻撃を避けた。すると体制を崩し奴は廊下に倒れそうになる

その顎を狙い膝蹴りでノックダウン…のはずだったが執念からか立ち上がり逃げ出した

王坂は俺たちとは別のクラスだ、しかしそのクラスでは傍若無人に振る舞っていた。そんな中で奴はアナーキーに所属していたがあまり強くなく、そして俺に負けたことでアナーキー内のカーストを転げ落ちた

アナーキーは戦いで勝ったものが正しく、スキルの連続使用の反動でスキルの使用が少なくなったため後輩たちに負け続けているらしい

「哀れだな…」

俺へのリベンジが成功すればメンツが保たれると思ったのだろうが、それも失敗

「追放されるかな…」

そんなことを思いながら俺はただ、待ち人を待っていた__

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