第三部 林は何を隠す
第30話 森の中の謎
「あだだ……」
「はいはい、動かない」
俺達はあの惨状の駐車村から警察が来る前に脱出しライブハウスのもう一つの楽屋で治療をしていた
治癒魔法は新陳代謝促し自然治癒力を高めるのだが激しく動いたせいで俺と玲の傷は開いておりライブハウスに応急処置用に包帯があって助かった
もう一つの楽屋はソファーや簡易ベッドがおかれており、俺と玲、紫乃と愛理、そして俺らを出迎えた黒舘が適当に座っている
「派手にやったなぁ」
黒舘はスマホに映るニュース映像を俺と玲に見せた、そこには爆炎を上げる数台の廃車とボコボコに窪んだアスファルト
「……まあ、どうせパノプティコンが金出すんだ」
「いや、人の物を壊したらダメだろ」
「あ、それはそう……ごめんね」
前までの威圧的な様子とは打って変わった正論で俺は反論出来なくなったので謝った
すると楽屋の扉が開き玲の双子の弟である瑠衣が顔を出した
「兄さん、新崎さん。少しいいですか?」
「ああ、構わないぞ」
そして案内されたのはライブハウスの地下、空調設備のある薄暗い部屋にポツンと2つのパイプ椅子とランプだけが置かれた尋問室と警備室があり警備室と空調の部屋を隔てる一枚のガラスがあるのだがどこかで買ったマジックミラーに変えるシートが貼られておりこちらからは姿は見えるが相手からは見えないようになっている
「尋問には応じなかった、こちらとしても拷問なんかはしたくないですし……」
「俺がやろう」
尋問室に入った俺は椅子に座り女の情報が描かれた書類を見ながら足を組んだ
「吉崎茉「百鬼夜行って知っている?」
問いかけを遮った茉里に合わせて俺は首を横に振りながら答えた
「……妖怪とかが大量に街を練り歩くってくらいしか知らない」
「それだけ知ってれば十分よ、私のスキルはソレ」
「なぜ教える」
「バンディットはいずれアナーキーだけじゃなく色んなチームと戦うことになる、私みたいなスキルもいるわ」
「お前らは何を知っている?」
ただその言葉はゆっくりと空調設備に跳ね返り狭い室内を見たした、そして顔を出したのはある答えだった
「黒幕を___
あの後は奴から何かを語られることはなく生徒会に身柄を引き渡した、バンディットの設備では長期間の拘束は健康的な問題もあるため生徒会から警察に引き渡してもらうように頼んだ
「さーてと、どうする?寿司でもいく?」
集合場所の公園で俺たちは解散する雰囲気になっていた、近くの回転寿司が目についたので適当にしゃべる
「悪い、俺海鮮アレルギーだから無理」
「ああ、そう…じゃ解散にすっか。おつー」
玲と瑠衣、そして黒館は逆方向に帰っていった。俺たちも帰ろうかと思ったところに愛理が肘でグリグリと横腹を突いてきた
「で、なんで私達に黙っていったわけ?」
「いやーそれは…」
単純にバンディットに加担してるとバレれば愛理と紫乃が他のチームから巻き込まれるのが嫌だったからだ
俺は英雄達の力でなんとか対応できるが紫乃は近接戦闘に回られればすぐにやられる上に愛理は背後からの奇襲などに弱い
「少しは頼ってくれてもいんじゃない?」
「っすよ、僕だって遠距離からの狙撃もできますし」
「……次は頼るさ」
そうして暴走行為による事件は幕を閉じる
だが新たな事件が幕を開けるのだった
月曜日、学校全体は喧騒に包まれていた
理由は学校始まって早々の林間学校の準備期間だからだ、林間学校は男女混合の6人班で一つのコテージに泊まりキャンプのように薪割りやら料理をしたり山にある施設で色々と学習したりする
班は友人と組むことになっているので皆がざわついているのだ、同居している3人は俺の班に入ることになった
「あと二人か」
愛理の友人でも入れようかと思った俺の頭に何か重みがかかる
「俺も入れろ〜」
「玲!お前同じクラスだったのか!」
「ああ、生徒会に目をつけられてたから行きにくかったんだがな。ま相棒もいるしってことで来た…生徒会室に行け、カイチョーさんがお呼びだ」
楽しそうに話した後に目を細め耳打ちした、俺は班のメンバーの名前を書く紙を渡して言われるがままに生徒会室に向かった
「で、次はなんだ?」
俺はいつものパイプ椅子に座り生徒会長と向かい合う
「先日はアナーキーの身柄の受け渡しをありがとう、バンディットのリーダーである新垣くんとの連絡先を交換することで情報交換が容易となった。そこで話がある」
会長はまたプリントを出した、次はどんなモンスターだ?と思いつつその資料を捲る
「次は林間学校での防衛戦をお願いしたい」
「防衛…」
「我々の諜報員がブレインズの情報を手に入れた、林間学校の周辺は廃屋が多いのは知っているね」
林間学校は北部の桜山脈にありその周辺は老人達の集まりだ、大半は老人ホームに集められ廃屋は放置されたまま
「そこに他のチームが残したであろう武器が見つかった…目的は謎だが確かに囲うようになってる……」
リビングには数丁のライフルが置かれており探った事を悟られないためにあまり調べられなかったが倉庫には大口径のライフルやバイクがあった
山中にも魔法で作られた細い道路があり襲撃するには十分そうだ、確かに襲撃の準備はできているが隠すのは下手なようだ
「一応我々もすでに校舎に武器を隠れて運んだが襲撃に気づいていると勘付かれたら逮捕のチャンスを逃す、バリケードの設置はできない」
林間学校に通じる正規の道は正門の一つ、だけだったはずだが一つだけ後方に通じるところがあった
「ここは?地図に書かれてなかったが」
俺が指差したのは校舎の裏側にあるゲート、厳重な扉で隠されており堅牢な様子だ
「ああ、そこは古い鉱山だ崩れる危険があるため学校側はこれを隠している」
「後方からの襲撃もあり得るな、だが一体何が目的だ?」
「生徒を人質にして生徒会に何かを要求する可能性もある、学習会はこちらで工面する。何か要望はあるかい?」
「ここのコテージを俺たちの班を泊めるようにしてくれ」
正門から入ると左右にコテージがあり巡回しやすくなっている、その中で唯一離れた場所にコテージがあった
それは少し狭いが丘の上に作られた特別感のあるコテージ
「そこは…部屋が少ないけどいいのかい?」
「ああ、こっちの方が探しやすいからな」
その後は簡単な作戦の概要を説明されて解散となった
俺が教室に帰ってくると最後の一人が集まっていた
「クロエ…リーウェスト?」
「私だ」
外国の名前に一体誰だとと首を傾げた俺の後ろから声がかかった、振り向くと以前生徒会長の言伝を担っていた褐色の女が立っている
コイツはまあ会長から回された伝達係だろう
「よーし、決まったなーじゃあ授業始まるから席つけー」
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