第28話 百鬼決行
骸骨たちを前にしてバンディットのメンバーは気圧されていた、人型であれど人ではない存在と初めて対面した彼らは防戦一方を強いられている
「こいつらは人じゃねえ!ぶっ殺しても死なないから本気でやれ、じゃないと殺されるぞ!!」
奴らはバイクが溶けるとその泥から骸骨が数体生えてくる、しかも死ぬことがない
「クソっ!!フレイム、ウォーター、ランド、ウインド!!」
杖を取り出し四つの魔法を同時に使用し四方の骸骨たちを攻撃する、服が裂けバラバラと骨が散らばるがすぐさま骨が修復され骨格模型かと思うほど綺麗な骨だ
エンチャンターの無属性魔法の一つである身体能力強化を戦っているメンバーに付与し人数の不利を何とか埋め合わせる
俺が一番強いと考えたのか10人ほどが一気に俺を囲んできた、だが焦ることはない聖剣を構え剣自体に魔法の剣を重ね攻撃力と範囲を伸ばし一回転とともに奴等を切り裂く、しかし後ろに隠れていた数体が崩れる骸骨を踏み台にして俺に掴みかかってきた
魔法の剣を作り出そうとするももみくちゃになり剣の魔力を集められなくなってしまう
「おらっ!!」
「玲!」
「最強戦力が最初に押されてんじゃねえよ!」
2本の片手剣を使い玲は骸骨たちを蹴散らしていく、双剣による連激と回し蹴りを組み合わせて俺の周辺を一掃した
「助かった」
「気にすんな!」
俺は玲に合わせて聖剣を右手に、左手に無斬を構えて双剣スタイルで構える。無斬を使い周囲の骸骨を引き寄せて腹部に聖剣を押し当て切り裂きそれと同時に魔法の剣を発射しメンバーを援護する
「百鬼、強行」
その声とともに骸骨たちは俺から離れてバリケードへと向かっていった、上階からの射撃を受けても物ともせず奴らは踏み越えていく
骨により作られた道を女はバイクで踏み越えてジャンプした
「マジかよ!」
「くそ、追うぞ新崎!」
ビルの受付に停められていた原付に乗って俺たちは奴等を追った__
ここから駐車村まで約五分程度、そこから他のグループとも合流すると考えると相当分が悪い
「あの骸骨は奴の魔法だろうな」
ラヴェンナの使っていたキメラ構築魔法と同じ物質を形成し使役する魔法というのはある程度あった
故に攻略方法はある
「時間切れか奴を気絶させる」
ドラゴンや上位の魔族は周囲の酸素を植物の光合成の如く魔力に変換するため長丁場になるが人間ならば話は別だ、魔力の吸収効率が凄く悪いため魔法はあまり連発はできない
「だが詠唱をどうやって短縮した……」
俺が聞いたこと女の声は全て感じが四つで済ませる文字数だった、魔法はイメージが大事なのだが人間の想像力と言うのは曖昧な上に経験しなければ想像は難しい
例えば火属性の魔法に必要なのは火の熱さだ、人間が経験する熱さなんて火傷程度で攻撃力としては低い
故に人間が魔力の繋ぎ合わせ構成、射出するエネルギー、飛距離を伸ばすために魔力を纏わせるには詠唱が必要なのだ
英雄のスキルにより俺は詠唱を短縮しているのだがイワンコフ達はそんなスキルを持っているのか?
「もう直ぐ骸骨達と合流するぞ!」
「了解、まさかこれを使うとはな……」
アイテムボックスから無反動砲を取り出し装填する
「お前のソレ、どんだけ入ってるんだよ……」
「ま、色々とな」
スマホを取り出し切り札に俺は連絡をした、すると銃声が響く
「来たか!」
右側の道路に現れた骸骨に向けて俺は無反動砲を発射した、道路が抉れ骸骨共がゴミ箱を蹴散らした時と同じ様に吹き飛ぶ
「うぉお!あぶねえ!!」
「守るからアクセルもっと踏め!!」
落下してくる骨やバイクを俺はラウンドシールドで防ぎ骸骨の持っていたライフルを奪い後方についた骸骨たちに向けて引き金を引く
ヘッドショットは無効化されるためタイヤか腕を狙う、だがクラッシュしたバイクや骸骨はまたもや泥に代わり生えてくる
それだけでなく数台のバイクが固まり骸骨が泥となってドーム状に変わる、するとバイクは八輪の戦闘車両に変形しバンパーと後方に機関銃を装備した
「武器も魔法かよ!」
バイクと骸骨が魔法の産物だと思っていたばかりに虚を突かれ原付が横転し俺と玲は空き地に頬り投げられた___
「うわぁ、先輩雑魚すぎないっすかあ?」
咄嗟に玲と自分の頭部から首などの脊髄を守るため魔法を展開し怪我は防いだのだが原付がもうダメでどうやって追うか考えていると近くの屋根から声がした
顔を挙げると両手に二丁のリボルバー式のグレネードランチャーを携えた青髪の少女がクスクスと笑いながら俺たちを見ている
「誰だ!?」
「落ち着け、俺が呼んでた切り札だ」
「切り札?」
俺が読んだ切り札、それは生徒会に頼んだら派遣してくれた役員の一人だ
霧咲悠、高校一年生の生徒会役員……生徒会に対して忠誠心はあまり高くなく戦闘技術の高い者を頼んだ結果としてこの少女が派遣された
彼女は凄まじい爆破の才能がありグレネードランチャーによる戦術的な殲滅爆破や設置式の爆弾による効率的な爆破解体などが得意だ、しかし爆破にしか興味がなく生徒会にいるのは逮捕されずに爆破できるうえに爆発物の供給があるだけなので忠誠心はない
「ほーら、先輩」
悠は何やら2つの物体を投げた、俺と玲はそれを受け取る。栄養ドリンクの様な茶色の小瓶には能力強化剤と書かれており飲むように示した
蓋を開けると強い柑橘系とラベンダーの香りが鼻腔を覆う、この匂いはザアナではあまり使われていなかった身体能力とスキルの使用回数を増やせる霊薬だ
コレは確かに強力だが一度使うと二日程筋肉痛を伴うため武闘大会の様な試合位しか使っているのは見たことがない
一気に飲み干して俺と玲は共に屋根に跳躍した、二階の屋根に難なく着地し俺たちは駐車村に走っていく
「悠は骸骨達の殲滅を頼む、俺達は骸骨どもを退けて女を確保する」
グレネードランチャーにはそれぞれに6発ずつ入っており、彼女のポーチに24発の予備弾頭が入っている。生徒会長の言う事が正しいなら俺たちを援護するには事足りるだろう
障害物がなく最短経路で走り抜けたため骸骨達と同時に俺たちも到着した、俺と玲は四対の剣を使い奴らに突撃した、それに気づいた奴らは駐車された自動車を縫うように展開し
風の剣による強い浮力で俺たちは着地し次に俺は土の剣を地面に突き刺した、アスファルトの下の砂利や土に連鎖し隆起させ骸骨達のバイクをクラッシュさせていく
玲は強化された身体能力を活かし自動車の上に乗って近づいた骸骨の一体に飛び膝蹴りを食らわせバイクを強奪した、地面に倒れた骸骨に片方の剣を突き立て残りの剣を使い骸骨たちを切り裂いていく
無斬を使い周囲の空間を削って骸骨たちを一か所に集める、俺の意図に気づいたのか玲はその集団に向かってきた、無斬を置いて聖剣と玲の剣に七属性の刃を纏わせる
ゲーミングキーボードの如く輝く輝く二対の剣が骸骨たちを二刀両断した
女の護衛としての奴らはまだ泥の状態だ、俺は玲のバイクに乗り立ち上がる
アーチャーの弓を取り出し女のバイクに向けて放つ、しかし右側からやってきた装甲車による機関銃の射撃により俺たちは自動車を盾にするために離れた
「クソッ!悠!!」
俺の声を聞いてかグレネードが飛んでくる、二発のグレネードによる制圧で自動車が吹き飛び弧を描いて後方に付いていた骸骨を一掃した
それだけでなく骸骨の泥に車がスリップするように滑り込み泥をまき散らして骸骨たちの復活を防ぐ、俺は再度弓を引き女に向かって放った
タイヤに弓が突き刺さりチェーンなどに絡んで転倒した、俺は隙を逃さずバイクから飛び降り地面に転がる女の腕を後ろに回し手錠をはめる。この手錠は絶縁弾の鉄で作られているため魔法は全て遮断される
はずだった____
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