第27話 縫い目を隠す

作戦決行日

「はあ…めんどくせえ…」

俺はそんなことを呟きながら情報収集をしていた、ブレインズのマーケットにある酒場__と言うにはあまりにも質素で酒は少ない__の席に座り安っぽいプラスチック製のコップに注がれたオレンジサイダーを飲んでいく

「アンタが電撃丸か?」

「ン、ああそうだ」

電撃丸、俺が適当に作ったコードネームだ。マーケットには巨大な掲示板がありその掲示板にバイク泥棒の共犯者を求める紙や安値でタバコを売ってくれと言うメモ帳の破片があった

「先にお代をネ」

「はいはい」

千円札を渡すと奴は受け取った

「この学校以外の不良についてだが、葉桜は一切の情報がない。桜木工業だがマフィアごっこをしてこっちのマーケットに武器を下ろしたりしている。桜スプリングは俺たちと桜木工業の用心棒として雇われたい奴等が流れてきている」

「そうか」

俺はオレンジサイダーのおかわりを二杯頼み一杯を奴に渡してやった、すると奴は身を乗り出す

「ここだけの話だが、アナーキーの連中はどっから金を得たのかヘリを手に入れやがった」

「はあ!?」

アナーキーの軍用ヘリ購入についてはまだ調べている最中らしく五千円を渡して情報を手にいいれたらすぐに教えてくれと念押ししておいた

その後、酒場を出てマーケットの中心部に置かれた大きめのテント。周りのテントと違いしっかりとした支柱が刺さっている

「アンタがバイヤーか」

「はい、何をお探しで?」

スーツをきた男、周りの浮浪者と違い手に職つけ仕事に誇りを持っているようだ

「どんなのがあるんだ?」

「こちらになります」

レストランのメニューのようにクリアファイルに入れられた商品の名

「無反動砲…12万、ハンドガン2千円にライトマシンガン1万円…無反動砲と弾薬をくれ」

「承りました、お支払いは?」

「現金だ」

俺は財布から1万円札を12枚取り出し段ボールに入れられた無反動砲を購入した、家電を買った時のようにビニール紐で段ボールを固定し青いプラスチックの取手を取り付けて俺は帰宅した


段ボールから取り出した無反動砲はオリーブドラブの軍用と言えるようなカラーリングで説明書がついていた、弾薬については普通の爆薬が入っている

それをアイテムボックスにしまっておく、これがあればもしもアナーキーのヘリがきたら撃墜できる

「さて…今日は俺ちょっと遊んでくるからご飯先に食べててくれ」

「はーい」

「行ってらっしゃい」

俺は玄関を出ると玲が原付に乗って待っていた

「よ、乗っていくか?」

「ああ」

玲の原付に乗って俺たちは作戦の場所である十字路にきていた、葉桜の学区とかなり近いここは廃ビルが並んでおり見下ろせる状況としては最適だ。無線機を取り出した例は四つのフロアと地上に隠れた実働部隊に状況の首尾の確認を取りながら一緒に屋上へと登っていく

カツン、カツン、一つ、またひとつと電気の通っていないため薄暗いビルの階段を登っていく。なんの会話もないことにちょっと気まずくなった俺は声をかけた

「なんでバンディットを結成したんだ?」

「……元々普通の不良にもなれない奴らの溜まり場だったんだ、あのライブハウスで俺と瑠衣、それと神谷とか数人の連中と一緒に不良ごっこしてた___


結成したのは二年前、俺たちが中3の頃だった

不良グループはいくつかあったが大それたことはできず喧嘩が時折起きる程度だった

しかし今年に入ってからカツアゲや暴行事件が増えた、玲は喧嘩に黒館は空手に心得があったためその暴行事件を抑えるため自警団のように動き出した。だが相手はスキルや魔法、武器を使い簡単に返り討ちに

そんな時、スキルと魔法を売っているバイヤーと知り合いスキルを購入した

そして暴行事件などを防いでいるうちに助けた生徒たちが集まり今の自警団としてのバンディットができたそうだ

だが生徒会や他の生徒たちは不良グループの一つ程度としか認識していないらしい

「そうか…でも何で助けようと?」

「さあ、忘れた。多分カツアゲされたら俺らの分が減るってキレたからだった気がするなー」

急に投げやりになった玲に俺は適当に笑って返し作戦の決行時間をまった

俺は今回バンディットにホースランチャーと言う兵器を貸し出した__ヴォルザに作ってもらったのだが___このホースランチャーはザアナでの移動手段である馬の足を発射した縄で絡め取り落馬させるためのもので少し改良してバイクのホイールとフレームに絡めるようにしてもらった

ホースランチャーが二つとバリケードが十字路を潰すため4つ、そしてビルからの強襲のためにライトマシンガンを5つ購入した。これだけあればバイクに乗っていた連中を一網打尽にできるだろう

「ま、切り札もあるけどな」

俺はそう呟いて時をまった___



夜が更けていき、バイクの排気音が遠くで鳴り響く

ドローンによる空中からの追跡映像を見ながら俺は呟く、奴らは路上駐車されている車のフロントガラスを鉄パイプで叩き割ったり歩道に火炎瓶を投げつけたりととんでもないことをしている。

「もうすぐだな」

「全班、攻撃準備!地上部隊はまだ隠れろ!!」

俺はサブマシンガンを手に、背中に聖剣を背負い柵に隠れて状況を見る

今回の俺の目的はリーダーの確保、ベルトにつけた手錠さえつければ後はこちらのものだ

バイクの音が近づきランプの光で周囲が照らされ始めた

「来た10秒後にA班を出せ……今だ」

「A班攻撃!!」

その声とともにビルの階下から煙幕弾が投擲される、キキィッ!とブレーキ音が響き始める

「C、D、E、F班、出口を塞げ!B班は射撃用意!」

次に動いたのは地上で待機していた班、バイクの連中から見て十字路の左右に隠れていた二人はバリケードを設置した後にホースランチャーを構えて音を頼りに発射した

そして前方と後方がバリケードで封じられたことにより奴らの退路は立たれた、

「俺が飛び降りたら撃て!」

サブマシンガンのコッキングレバーを下げて薬室に弾薬を装填する、煙幕が晴れるのと同時に俺は飛び降りた

聖剣を壁面に突き刺し落下速度を殺しつつサブマシンガンでバイク乗りの連中に撃っていく

人数は23人、全員がフルフェイスのヘルメットを被っており全員に貼られた骸骨のステッカーが光を反射していた

「全隊展開」

ヘルメットからくぐもった声音が聞こえヘルメットの軍団は背負っていた武器や銃を手にした

「殲滅開始」

その声とともに奴らは一気に突撃してきた、だが違和感がある

「くっ!?なんだこいつら…生きてるのか?」

近づき剣を振り下ろしてきた奴を聖剣で防ぎ腹部にサブマシンガンを押し当てて連射する

しかし奴はまだ立ち上がる、違和感とはこいつらから生気を感じられない

「クソっ、寝てろ!」

聖剣の柄で立ちあがろうとする奴のヘルメットを叩こうとするとヘルメットが吹っ飛んだ、そのヘルメットの下には何もない

いや、骨があった__


「こいつらは…人じゃない!?」

奴らがきている服の下には骨のみがあった

「だったらぶっ殺すだけだ!!」

剣を構え直し一気に奴らに突撃する、剣とともに縦横無尽に走り抜け奴らの隙間を縫うようにしひさしぶりの本気で叩き切る

左手のサブマシンガンを投げつけ力を込める、腹部から左腕にかけて鳥の羽のように七色の剣が現れ奴等を切り裂いていく

銃声や剣戟音がない響く中、ただヘルメットの女の声だけが聞こえた

「百鬼夜行____


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