第25話 狙撃手のプライド
聖剣を噛めた俺は気配を探っていた、煙は木々を押し退けて天高く登っていく
そして、時がきた
「来たな!」
旋風が周辺を襲い俺は剣を眼前に構え視界を確保する、茶色の毛皮に身を包み巨大な翼を携えた巨体のキンググリフィンがそこに現れた
「もうでかくなったのかよ!」
突撃しながら俺は吐き捨てる、俺の存在に気づいた奴は前足を使い鋭利な爪で切り裂く
ダメージを軽減させるために土魔法の剣を8本作り出し盾のようにする、久遠の盾が使えれば便利なのだがあの盾は魔法とスキルを無効化する能力を持っていて俺にもそれが効くため盾と同時に他の武器を持つのはあまり得策ではない
奴の攻撃は重い、キンググリフィンは全身が筋肉で一撃があまりにも重く怪我はしなくともダメージはくる
奴のタックルに合わせて俺は聖剣を上に投げてメイジの杖を取り出した
「強固たる土、今我を守りたまえ。ランドウォール!!」
地面からへてきた巨大な柱、本来は壁なのだがメイジの高度な魔力操作により柱として形成した
そして空を舞う聖剣に向けて風と火の発を放つ、刃によって反射した魔法はグリフィンの顔面に攻撃しクチバシが削れ甲高い鳴き声をあげる
その隙を逃さず紫乃は1本の矢を2本に増やすデュアルアローというスキルを使い両翼を一度に打ち抜いた。
右翼は正確に筋肉を打ち抜けたのだが左翼は数センチずれやつは少しふらつくが飛び去っていった
「クソ逃げられた…!?違う、奴は違う!」
「え?なんすか!?」
「違うんだよ、奴は…爪を残したグリフィンじゃない!!」
たりていた、奴の爪は各足に三つ。
しかし情報提供者からもらった爪は一つ、グリフィンの爪は一度取れたら二度と生えることはない
つまりは
「グリフィンはもう一匹いたんだ!!」
最悪の状況だ、奴は雄だった。爪は性別的な特徴を残さないから番である可能性が頭から抜けていたのだ
俺は追うぞと紫乃に指示しようとしたのだが背後から現れたもう一匹のグリフィンの爪が紫乃の腹を突き刺し空高く舞い上がった_____
痛みで脳みそが危険信号をあげる、腹部に空いた穴は痛みが流し込まれるが血は爪によりせき止められていたのは幸いだった
空から見る葉桜町は夜景が綺麗だった、引きこもりプロゲーマーが社畜の作る夜景を見ながら死ぬなんて
「くぅ…クソっ!クソっ!」
スキルによって作った矢を奴の足に突き刺す、耳を覆いたくなる甲高い鳴き声とともに僕はほおり投げられた
短い一生だったな、次のシーズンは僕以外がランカーか、お父さんとの問題は解決できなかったな
そんな走馬灯が流れた
「違…う、まだ…まだ僕は死なない…」
傷口から手を離し弓を構える、矢をつがえ息を整えて奴がやってくるのを狙う。ビルの壁が僕の姿をうつしている、何かが落ちたと気にしている人々…ゲームの大会と一緒だ
「僕のプレイを見ろ」
奴が飛んできたが僕の腹部から飛び出た血液が顔を濡らし目を閉じた、その瞬間を逃さず奴の顔を蹴って場所を移動する
そして奴の首筋に向けて一撃を放った、深く鋭く刺さったソレから血が垂れて僕の血と混ざり地面を濡らす。ああ、これが終着点か…僕が死ぬのはゲーミングチェアでカフェイン中毒だと思っていたのだがけどな…
まあ一匹は道連れにできた、アーチャーの力も僕でも受け継げたし他の人でもいけるだろう
「まだ死なないんだろ?」
その声が僕の鼓膜にもう一度刺さった___
無斬を使いもう一匹を仕留めた後になんとか追いついた俺は目を疑った、紫乃が命をかけていたのだ
土壇場のファインプレーで倒したが…
空中で彼女をキャッチし聖剣をビルの壁面に突き刺して落下エネルギーを殺していき地面に降り立った、人々は避難しており周囲には誰もいない
俺は紫乃を地面に置きもう一度剣を構える
「紫乃も命かけたしな…俺もかけてやる!!」
C、CBOX__道にある茶色い箱__の扉を剣で叩き切り内部にあった配電盤に腕を突っ込んだ、電流が肉体に走り抜ける
それを魔力に変換し俺は雷の魔王、ウロボロスへと変わっていった
ワイバーンのような翼と前足が一体になり、後ろ足で体重を支える形ではなく。ヴォルザのような四つ足の巨体の竜でもなく
蛇のように長い胴体と短い前足と後ろ足を持った中国や日本の伝承に出てくるような龍
尻尾をグリフィンに絡ませて後ろ足の爪を食い込ませ空に上がっていく、体内にある発電器官を最大にまで発電しグリフィンに電流を食らわせた
しかしあまりダメージにならず俺はグリフィンを離した、ふらふらと漂いながらも俺に相対するグリフィン
もう一度、俺は発電する。紫色の鱗が光を放っていく
すると路上にポイ捨てされていた空き缶俺の元に近寄ってくる、体内の電力を鱗の磁石に流すことで電磁石として周囲の鉄を引き寄せるのだ。最大まで発電すると自動車も引き寄せるのでできるだけ抑える
引き寄せた空き缶を高速に近い速度で打ち出し、余剰電力を空き缶に向けて放つ
空き缶が高電圧を一気に受けたことにより破裂した。グリフィンの肉体に破片が突き刺さっていく、甲高い鳴き声をあげたグリフィンの喉元に向けて尻尾を叩きつけた
紫乃の矢がもっと深く突き刺さりグリフィンはようやく生きたえた______
「なるほど……葉桜高校が…」
「ああ」
あの後、俺は紫乃を治癒魔法で治してから自宅に帰った
アイテムボックスに入れていたグリフィンの死体をヴォルザは庭で解剖していた。ザアナでの兵器はモンスターの内臓や鱗を使っていたため兵器研究者であるヴォルザは生物の解剖学などにも精通しているためすぐに終わるだろう
そして自宅に生徒会長を呼んだ、名目上はグリフィンを討伐したことの通達と報酬の相談として
「生徒会の癒着……どう言う事かわかるか?」
「……さあ」
生徒会長の瞳には何やら思惑が見てとれる、しかしまだ踏み込むには早い…
ティーカップに入ったアールグレイティーを一口のみ報酬について俺は口を開いた
「俺が要求するのはそちらの所有する武器弾薬、兵のもつスキル、魔法の情報だ」
「無理だ、我々はあくまで学校の治安維持を目的としている。確かに私は君を雇ったが君の立場は不良グループの人間、敵に情報を渡すことはできない」
「なるほどねえ…じゃあ何を出せる?」
空気が少し引き締まる、紅茶の香りでそれを誤魔化しながらも俺は引き下がらない。
「我々の情報収集班とのコネクションだ、他校の生徒会にもこれから目を光らせるように通達するから情報源としては優秀だと思うが」
「アンタ、俺に情報渡して解決するように言うつもりだろ…」
ふふ、バレたかと悪戯っぽく笑う生徒会長。まあ、流石に宣戦布告を行うようなヤバい連中の情報が手に入るならば良いか……
「仕方ない、今回はアンタにカモられてやる」
そういうと待ってましたとばかりに情報収集班の情報を処理する非公開のメッセージグループのIDの書かれたメモ帳を取り出した
しかし一つだけ気になることが、下にもう一つIDが書かれていた。メッセージアプリのIDであるとはわかるのだが
「私のIDだ、次からはこちらで呼び出す」
「へいへい」
ティーカップがチリンとソーサーと共鳴したとき、ドアが開き沙奈と愛理が帰ってきたのだった___
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