第22話 グリフィンハント!

葉隠総合病院は桜市最大の病院だ、大抵の病人はここで治療する

「すいません、宮崎漣さんの病室ってどこですか?」

「えっと……どのようなご関係ですか?」

何やら雰囲気のおかしい受付だ

「クラスメイトで結構仲が良かったんですけど、ここ最近風邪で寝込んでて……それで久しぶりに学校に来たら入院しているって聞いて飛んできたんですけど……」

「あ、そうですか!すいません、最近変な人たちがうろついてましてね。203号室です」

ありがとうございますとかえして俺は目標の病室へと向かっていった、変な人か……

病室の扉を開くと目的の宮崎がベッドの上でゲームをしていた

「だ、誰だアンタ!?」

「怪しい者じゃない……いや、怪しいな……まあ聞きたい事があるだけだ。落ち着いてくれ」

宮崎は渋々ゲームをおいて俺に向かった

「何のようだ?」

「怪我の原因を知りたくてね、現場の状況を説明してくれないか?」

「状況っつても……事件当日は下校してる時に背後から急に襲われて……」

「そうか……何か取られたか?」

宮崎は首を振った、ロイヤルグリフィンはカラスのように光ものを集める習性があり金銀財宝を蓄えることから王族に見えるためこの名が付けられた

違うとなると、キンググリフィンだな

「ありがとう、礼と言ってはなんだが……ほら」

俺は杖を取り出し簡単な部分麻酔の魔法をかけた、奴の背中の傷をすぐに治して怪しまれるからこれくらいしかできないが…


紫乃は弓を片手に握りしめ葉桜高校を見ていた、千里眼に加え彼女の目には魔力の流れを見ることができる魔力眼が備わっており一つの疑問点を写していた

それは雷の魔力が一つの箱から供給され、一つの倉庫の内部にわたっていることだ。魔法とスキルに関して何一つ聞いていない彼女はとりあえずスマホにその疑問点や内部に入っている人数、一時間ごとによって入れ替わる警備の人数を事細かにメモしていく

「ボクなんかでいいんすかね…」

そんな言葉を漏らして紫乃は再度視線を向けた、葉桜高校の校舎は広がったグラウンドと入り組んだ寮の二つに挟まれている。建物の角には監視カメラが付けられ囲われたプレハブ小屋が重要なものであるとは分かった

「監視カメラの電源があの雷魔法の箱に繋がっている…学校の警備は魔法をエネルギーにしてるってことっすよね…何かメリットが…?」

「よお、紫乃。首尾はどうだ?」

後ろから階段を登る音が聞こえていたのですぐに慎吾に返答した

「あ、慎吾さん。えっと一応これにまとめてるっす…一つ疑問なんですけど、魔法をエネルギーにするメリットってなんすか?」


「まあ、人間も持ってるエネルギーだからすぐに復旧できるってのがあるな。普通の電気だったら配線を新しいのにしなくちゃいけないが、魔力系の装置なら魔力を無理やり流し続ければ復旧できる。でもそれをやると周囲の魔力が枯れて人間側が魔力を回復できなくなるんだ、俺が魔王化をあまり使わないのもこれのせいだな」

話を一部始終聞いた俺は紫乃と同じ方向を見ながらその問いに対して返答する

例えば戦場の夜営で魔法をエネルギーにした発電機があったとする、暖かい料理を兵に提供することができるが周囲の魔力を吸われ敵の奇襲に対して迎撃するための魔法が封じられる

そのためザアナだと魔法による装置はあまり研究が進まなかった

「うぅん…それじゃあ葉桜もパノプティコンに支援を受けてるってことか……」

元々考えていた作戦は俺がアサシンのスキルを使い潜入することだったのだが魔力を使ったカメラではバレてしまう

「呼ぶか…雇い主を」

俺はスマホで生徒会長を呼び出した、しかし来たのはいつもの褐色銀髪だった

「会長はお忙しい、私が用件を聞こう」

「武器を貸してほしい、あんたらが持ってる非殺傷の絶縁弾を使用するサプレッサー付きの拳銃とスタンロッドだ」

銀髪は両手を胸の前で組むと俺を睨んできた、その目に俺は違和感を覚えた。こちらの世界では中々見ないザアナで見慣れた目付き…

「支援者に対して無計画な要求は言語道断だ、副会長として容認できない。出資者からは生徒会の実働隊員分の装備しか支給されていない」

「だがこの依頼が失敗すればアンタらとアッチは相当まずい関係になるぞ、大人しく支援をした方がいいぜ」

俺と女は睨み合う、アサシンは人間は誤魔化せてもカメラは誤魔化せない屈折率を変えれば人間には視覚できないがカメラであればレンズを通すことで見ることができる、それゆえにアーチャーの弓は取り回しが悪く魔法を使えば音が大きすぎる

故に消音器が取り付けられた拳銃がこの状況では最適だ

「葉桜高校はこっちの高校と違ってスキルを持ってる不良たちを雇って警備して人数が多い。アンタらは確かに訓練されてるがもし葉桜高校の生徒会が両校の不良チームを雇えばどうなると思う?包囲されてゲームオーバーだ」

「ちぃ…わかった。少し時間をくれ、許可をとる」

銀髪女は店内に入り電話をかける

明らかに手綱を握れていない葉桜高校、首を絞められるような忠誠心を求める桜河高校の生徒会は必ず対立、もしくは戦争が起きるだろう

だがそれはできるだけ遅らせることはできる

「またせたな、会長からの許諾が降りた。もうすぐ…来たな」

そういうと銀髪女はどこかに視線を向けた、その方向からは小さいコンテナを抱えたドローンが空を飛んできた

コンテナを受け取った銀髪はカチっと開くと内部に収められた二丁の拳銃と2本の鉄の筒、そして六つのマガジンを見せた

「パノプティコンから支給された9ミリ拳銃、ラピッドショットのサイレンサーカスタム。マガジンに9発と薬室に一発が装填できる、サイトは拳銃用ドットサイトでグリップは樹脂製で絶縁弾と魔力弾の切り替えができる。今回渡すのは鎮圧用絶縁ゴム弾と魔力ゴム弾だ、返却期限は5日だ有効に使え」

俺は拳銃をとり鉄の筒、サイレンサーを銃口に回して取り付ける

「なんで二丁あるんすか?」

「貴様も使うのではないのか?」

「紫乃、護身用で持っとけ。お前の弓じゃ近距離にきたら困るだろ」

「近接考えなくちゃいけないんっすか!?」

そんなこんなで俺たちは着々と準備を進めていき時刻は八時半を回った、銀髪女は帰り俺と紫乃はとりあえず食事をフードコートですますことにした

この商業施設は前回の愛理と沙奈と向かったショッピングモールとは違い人が少ない、いつ潰れてもおかしくないレベルで寂れている

フードコートも寂しく、アイスクリームとたこ焼き、うどんのチェーン店が三つある程度だ

「しょぼいっすね」

「そんなもんだろ」

紫乃はカレーうどんを注文し俺はたこ焼きを注文した、一応店頭で焼いているのだがなぜか冷凍食品だと思ってしまうほど量産的な味

「愛理さんと沙奈さんは最近できたパンケーキ屋に行ってるらしいっすね」

SNSを見せてきた紫乃、俺は爪楊枝でたこ焼きをつまみながらそうかと頷いた

「紫乃、なんでお前はプロゲーマーを目指したんだ?」

ふと頭に浮かんだ疑問を投げかけた

「ボクって人と話すのが好きなんすけど、ただコミュ症で…まあ学校の通りなんすけど…それで動画サイトの広告でプロゲーマーを知ったんすよね…そこで好きなことをやって友達と話せるのっていいなあって思ってからゲームを始めたんす、そこからはまあ多少汚い部分は見たけどゲームを上達して幸いはやってるゲームも大半は最初からうまいから大会でも活躍できて…」

でもインタビューでガチガチっすけどねと苦笑しながら紫乃は言葉を続けた__

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る