第19話 飴玉の包み紙

ザアナには二つの陣営があった

俺を召喚した人類の代表である、アーノルド王国率いる人間種や亜人種の国家が参加していた王国軍

魔王たちが率いるモンスターや魔族の集団である魔王軍

二つの陣営の内部では多少の派閥はあれど新たに生まれる魔王や英雄の脅威により嫌々ながら手を組んでいた

英雄は魔王を倒し、魔王は英雄を倒し、そして時折聖者が呼ばれるこの戦争は1000年続いていた___


それで俺は、王国陣営のスパイやら魔王軍の全てから狙われながらなんとか英雄のスキル全てを引き継いだんだ」

学校の屋上で俺と沙奈、愛理、紫乃は昼飯を食べながらザアナでのことを話していた、5月が始まり3日が経った。木々に緑の葉がつき始め学校生活に慣れた一年がイキリだしたり新たなクラスのカーストが決まり始めた

昼飯のサンドイッチを食べ終えた頃に以前に校門前で見た褐色の生徒会員が屋上の扉を開き俺の元に近寄ってきた

「新崎慎吾だな、会長がお呼びだ。ついてこい」

「え、あ…はい」

俺は沙奈に弁当箱を渡してついていった学校の敷地の中心部には俺たちの教室がある新校舎、そしてかつては教室が入っていたが今は理科室や音楽室が入った旧校舎がある

今や桜河高校は全学年合わせて34クラスあり、理科室の利用が3クラス被ることがありその対策として旧校舎がこのような形になっている

職員室や生徒会室も旧校舎に入っている、褐色は俺の前を歩き五分ほどで生徒会室にたどり着いた

「入れ」

「はいはい」

なんとも威圧的だなと思いつつ俺は重苦しい扉を開いた、左側にはかつての卒業アルバムが全て入った巨大な本棚があり客人用のテーブルと椅子が用意されており、右側には野球部やらが取った大会のトロフィーなどが飾られている

「やあ、新崎くん。すまないね急に呼び出して、座ってくれ」

生徒会長は執務机に座り俺をその前に置かれたパイプ椅子に座れと指差した、言われるがままに座る

「さて、君にはいくつか聞きたい点がある。バンディットを名乗る不良連中と手を組み…そして武器を提供したそうだね」

「…ああ、その通りだ」

「なぜだい?」

奴の顔は笑みを浮かべているが、その奥は見えない。それはまるで飴玉の包み紙の様で

「奴らの理念に共感したからだ」

バンディットが自警団として動いているのは他の連中が他者に危害を加えているからだ、奴らにそんな義理はない。俺がザアナで戦ったのはそれしか道がなかっただけだ

だが奴らは他に道があるにもかかわらず人を守る為に戦っている、せめて俺はその手伝いがしたい

「そうか…いや、すまないね。行方不明だった君が急にバンディットに参加したと聞いて心配だったんだ。気分を害すつもりはなかったんだ、時間をありがとう」

会長は立ち上がり俺に握手を求めてきた、それに応えて握手を交わすとまたもや光に包まれた

「またかよ!」

この光は見たことがある、そしてその光から現れたのはガーディアンの武装である久遠の盾だった

俺は四度目のザアナのことを済ませた、生徒会長は盾を見て呟く

「なるほど……二ヶ月にそんなことが…」

「で、だ。その力を迂闊に使われたくない、俺の監視下に入って欲しいんだが…」

「断る、しかし君の情報の対価としてこちらの情報も開示しよう」

会長はタブレットを取り出すと何やらデータを見せてきた、それは生徒会員約40名により構成された部隊だった

「我々生徒会もパトロンからの武器やスキル、魔法の支援により部隊は万全な状態だ。もしバンディットを脱退し私たちの側につくならばその力を認め部隊長として相応の立場を用意する」

「正気かよ、そのパトロンの名前は…?」

「パノプティコン」



最悪の状況の中、俺と玲そして四人のバンディットのメンバーでアナーキーたちが占領している廃工場の奪取を狙い攻撃を仕掛けていた

俺はキャットウォークの上で盾と蹴りによるアクロバットな動きで鉄パイプによる攻撃を防いだ隙に蹴りを入れる戦法で二十代前半の連中を気絶させていく

桜市は子供の育成に力を入れているためか子供のいない連中に回される金が少なく就職支援や老人ホームの設立などが少ない、一度失敗したら二度とこの市で就職は難しく20代から30代後半の自殺者が日本トップで特殊清掃の出勤も多い

だがそれでも人が多いのは自分達の子供は失敗しないと思っている親が多いからだ

「おらあ!」

亮太は片手剣を使い下で数人を相手にしている、バンディットに提供した武器には不殺の呪いをかけており武器で人を殺すことはできないため相手を気絶させるのに向いている

下を見ていた俺の不意をついたつもりの男が鉄パイプを振り下ろすが俺の回し蹴りに吹っ飛びドロップキックで顔面に追撃を入れた

そして俺は二階の事務所にたどり着くと玲と出会い一緒にドアを蹴破り突入

「サンダーボルト!」

詠唱を短縮した雷属性の発、サンダーボルトにより拳銃を構えていた二人を気絶させ玲は双剣を使い近くにいた二人の鉄パイプをを防ぎスルリと抜ける用に両方の腹に剣を当て気絶させた

「結局ここはなんなんだ?」

「多分だが、ブレインズやアナーキーに盗んだバイクを下ろすための工場だろう。ここで鍵を外して別のバイクにパーツをつけたりして機能を上げてるんだ」

玲の問いに俺は応えながら資料を探す、そしてようやく目的の帳簿を見つけた

「あった、パパさんのバイクは……アナーキーの荒立のチーム…巣庫一火音スコーピオンに回されたか」

帳簿には単車の名前と所有者の名前、そしてチームと修理にきた日付なども載っている、バイクの名前でパパさんのバイクを探したのだが共通点として三つとも同じチームに回され3日に一度の頻度で同時にこちらにきている

「なぜ修理の頻度が高い?」

「スコーピオンは聞いたことがある、桜港の第三倉庫の近くのコンテナでレースをして浮浪者たちからバイクを奪ったり賞金を稼いでるってな」

「そうか、ブレインズの元でバイクを盗んだりして金を稼いでその金でバイクを購入し賞金を稼ごうとしてるんだ!」

ブレインズのマーケットはたった三ヶ月ほどでこのレベルの経済を形成した、就職難でありながら学生時代の楽しみを忘れられない若い浮浪者たちを使い犯罪をさせていたのだ

「奴らからバイクを盗もうと思ったが、こんだけ傷つけられたんだ…レースで奴らの鼻っ柱折ってやる」

俺はアイテムボックスに資料を収めて皆の集合場所へと向かった


奴らの経済圏は相当高レベルな物だ、しかし所詮はガキの遊びだ…いずれはほころびて大きな問題が起きる。その経済圏を支えてるのが前も後ろも向けない連中だ、このバブルが弾ければ犯罪が急増するだろう

そして集合場所に集まった瞬間に何かがことがってきた、穴の空いたアルミ缶のような物

「まずい___」

キィィィンと凄まじい高音と光に俺たちは包まれた、大半は耳を多い地面に倒れたが数人は備えたことで武器を構えるも周囲を覆った連中を前に戦意を喪失した

パノプティコンが持っているライフルを構えた12人ほどの軍服をきた連中に囲まれていた

「さて、ニイザキ君…答えを聞こうか」

久遠の盾を携えた生徒会長の大神涼子が歩んできた______

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