第二部 アクセル
第17話 バンディット・イン・ザ・セイント
「俺たちバンディットは桜河高校の自警団として動いている、先日の店内での暴行は謝罪する」
「さーせんした!」
「あ、ああ」
俺は店長にお願いし休むため、そしてバンディットの話を聞くためにファミリー席に座ると真っ先にヤンキーとリーダーが謝罪してきた
「お前の強さは聞いている、単刀直入にいうと仲間にならないか?二つの組織を潰して事態を沈静化すればある程度の……学生としての範囲内での謝礼は支払おう」
「じゃあ、奴らに渡った盗品のバイクを奪い返すことは?」
「パーツがわかるなら奴らを倒して奪い返せるだろう」
「わかった、参加しよう」
正直な事言うと、他の組織に潜入する方法もあったのだが一応は正義側のこのチームに身を置けたのはラッキーだ
「これを」
玲はスマホに映る三枚の写真を見せてきた
「この二人、黒島優香と荒立亮介はアナーキーのリーダーだ。こっちのブレインズのリーダーの林優香はスキルと魔法を購入したようで俺たちじゃ手がつけられない」
スキルとかの説明はいるか?と聞いてきたが必要ないと返す
「コイツ超スキル持ってるんすよ!」
水を飲むヤンキーは俺を指差していった
「まあスキルは50は軽く超えてるな、魔法もある程度使える」
「ご、50?!」
「魔法も!?」
二人は驚愕し驚いた様子だ、そこまでスキルや魔法の販売価格は相当高いのだろうか
「そう言えば、挨拶がまだだったな。新崎慎吾だ、二ヶ月行方不明になってた噂くらいは知ってるか?」
二人は続いて驚いた
「新崎って、あの氷の姫とイチスト太郎のハーレムのか!」
「なんだそれ」
イチスト太郎は愛理のインフルエンサーとしての名前だったが氷の姫なんて聞いたことがないな、ザアナだと氷の女王とは出会ったが……
「知らないんすか!?透き通るような白髪のクール系美少女、氷の姫君こと呉島沙奈と有名インフルエンサーの市川愛理に挟まれて登校してるアンタは今学校で話題の人っすよ!」
沙奈にそんな異名ついてたのか……まあ確かに彼女はアルビノで白髪が綺麗だ、それに少しばかりコミュ障だからクールに見えるのか
「まあ同居してるから登校時間は被るからな」
「ど、同居……?二人と……?」
ヤンキーの方はフリーズし玲は飲んでいた水をごほっごほとせき込んでいる
「節操無し……ごほっ!」
「なんもしてねーよ、ただ俺の家に住むのが都合が良いから住んでるだけだ」
玲ははあとため息をついてスマホを取り出した
「ま、まあそれはそれとして、一応今度のバンディットの集会の時に呼ぶ。メッセージを交換しておいてくれ」
俺は言われた通りにメッセージを交換しその日はお開きとなった
「進歩したな……よし、先ずはブレインズとアナーキーを潰す。イワンコフとかはその後だ」
取り敢えずの目的が決まった俺は小腹を満たすためコンビニに立ち寄ろうとした、だがふと駐車場の隣に一人の少女が見えた
「紫乃?どうしたこんな時間に」
「えっ!あ、慎吾さん……ちょっと……」
青いキャップとブカブカの黒いパーカーそしてゲームグッズのリュックサックを背負う紫乃がそこにいた
「引きこもりが一人旅って訳でもなさそうだが……何かあったか?」
「家出と言うか……独り立ちっす……ボクはやっぱお父さんと合わないみたいっすから……」
何か諦めたような、いや新たな道を歩き出した様な目だ
「お金はあるんすけど、スマホで調べても住める家が無いんすよね……」
「もしよかったらさ、ウチ来るか?」
あの時と同じ問いかけを飛ばした
「そうっすね、お邪魔じゃなければお願いします!」
だがあの時とは違い彼女はこの問いに対して好意的な言葉を出し新たな同居人を迎えた我が家、部屋はヴォルザと同じ物置だ
「まあここが一番家の中で回線がいいし、二人共徹夜で起きてるし台パンとかしなきゃいいよ」
紫乃がヴォルザと出会ったのは家を出てすぐのことだった、元々ヴォルザはアーチャーと交流があったため魔力の波長に覚えがありそこに向かったそうだ
ドラゴンであると明かしたヴォルザに紫乃は俺たちの下に送ってくれと頼んで展望台までやってきたらしい
「よろしくな、紫乃」
「はいっす!」
次の日
俺のスクールバッグの後ろに隠れるように紫乃がついてくる
「そんなビビるなら来なくてもいいのに……」
「い、いやでも……友達と登校するのが夢だったりして……」
今やキッズたちの夢であるプロゲーマーの夢が友達が欲しいと言うのは少しばかり皮肉めいた物を感じるが俺は取り敢えず歩む
「視線が想像以上に多い……」
「そりゃあ学園の美人二人組が隣にいるからな」
昨日のヤンキーの受け売りを俺は言って見せる、沙奈はこくびをかしげて愛理はイエーイとピースをした
「つか、二人共の事務所って何してんの?インフルエンサーって言っても、プロゲーマーとコスメ系インフルエンサーって違うし」
「好きな様にやるだけだよ、事務所は何かしらの企業との連絡手段だったり税理関係の手伝いとかがあったり。あとはスタジオの準備位?」
聞いといてなんだがそこまで面白い話ではなかったなと思いつつ俺達は校門をくぐった
「おはよう、諸君」
俺らを迎えたのは黒い髪をポニーテールにし整った顔立ちの少女、愛理が現代的な可愛いと言う意味の美少女とならばこの少女は和と言うか大和撫子的な美術品的な”美”の美少女だ。
「おはようございます、生徒会長」
愛理と沙奈は軽く会釈した、なるほどこの人は生徒会長か
確かに後ろにビシッと直立不動の五人の生徒会のバッジを付けている生徒がいる、この学校での生徒会と言うのは立場は相当高い
基本的には学校の行事などを定めるだけだが時折新たな施設を立てたりする案を提出している、これも桜市の子育てに重きを置いた故だろう
「会長、そろそろ警察署への警備会議についてのお時間です」
生徒会長の後ろにいた褐色で銀髪のこれまた美少女がスマホで時間を確認すると声を出した
「うむ、では行こう。あとの警備を頼むよ」
「「「「はっ!」」」」
四人の生徒会役員は軍隊を思わせるような声で敬礼した、よく見ると彼らの後ろには機動隊が持つようなライオットシールドが二つあり役員たちにはそれぞれ警棒と催涙スプレーが腰部のベルトに止められていた
「警備って……」
「ああ、新崎君は知らないか。君がいない間に我が校の生徒達は犯罪行為に手を出すようになった。登校中の生徒達に暴行を働く事もあり我々生徒会はこの様な警備体制を取るようにしたんだ」
「えっと……俺を知ってるんですか?」
生徒会長は俺を見ると手短に説明した
「ああ、二ヶ月間の行方不明で私も警察に協力をしていたからね君の顔は写真でよく見たよ。私は生徒会長の幸谷涼子だ、よろしく」
生徒会長、基涼子は握手を求め握り返す。まあ転移が不可抗力にしても迷惑をかけた事に謝罪し俺たちは校舎に入っていった
「なあ、おい……新崎の奴、氷の姫君とイチスト太郎だけじゃなくて新しい女を連れてるぜ?」
「くっそー、俺には彼女もいないのに……」
コソコソと教室ないでそんな声がきこえる、ようやくこの生活に慣れてきたからか他の噂話もよく聞こえる
ザアナじゃ有名人として羨望の眼差しを受けたり犯罪者として公開拷問の時に侮蔑の目を向けられたりしたからこう言った噂話には慣れている
悲しい事に俺の元友人たちは数か月離れた事で新たな交友関係を築いていたため話しかけるタイミングがつかめなかった、俺は気だるげにシャーペンを回しながら適当に時間を潰していた
だが、唐突に俺の机に一人の男が座った
赤髪の入った男、王坂健司だ
コイツは野球部で元から不良だった、正直関わりたくないのだが……
「おい、新崎。ツラ貸せ」
そうもいかないようだ
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