第16話 バンジージャンプ

二振りの無斬の復活によって状況は一転した、いや原因はそれだけではない

紫乃の援護狙撃により俺と愛理は思う存分暴れることができる

アーチャーは弓自体に100キロ先まで狙いをつけることができる魔術の術式が組み込まれているのだが、アーチャー自体には千里眼と矢を作り出すスキルを持っている

この矢を作り出すスキルというのは最も有用だ、どれだけ狙いが正確でも戦線で常に矢の供給が来るわけではない

それにアーチャーはアイテムボックスを持たないので、弓一つで戦場を支配できるのも強みだ

愛理のもつ鞘型の補助アイテムはいくつかの機構を持っている、無斬で切るほど鞘内部のバッテリーにワイヤレス充電器をもとに開発された無斬からの空間エネルギーを変換装置により発電することができる

発電したエネルギーは鞘のもう一つの機能である小型レールガンに使用できる、サムライのスキルである自分の刀によって怪我をしなくなる心刃を活かし無斬をレールガンの原理で高速の居合切りを放つ事もできるし、カッターの替え刃を鋭利な弾丸として放つ事もできるのだ__そして使うかわからないがUSBソケットが4つあるのでスマホの充電もできる__

無斬と高速居合切りによって俺たちはラヴェンナへと近づいてく、そしてようやく合間みえた

「ふぅん……まあ時間もいい頃ですし、そろそろお暇しましょうか」

奴はそういうと何やらカプセルのようなものを取り出して天井に放り投げた、俺はそれを視線で追う

「な?!」

触手が貼り付けられた天井には穴があった、だがそこに空はなく肉の塊……いや卵があった

そのカプセルを吸収した卵は大きく暴れると巨大な竜が現れた

「キメラドラゴン、とでも言いましょうか。それなりの資金提供で共同開発しましたがいい成果が出ましたね」

竜の鱗は歪んだ虹のようにさまざまな色の鱗でできていた、触手に取り込まれたスライムのように住む環境によってモンスターは一世代で大きな進化を迎える

ドラゴンなどはそれが顕著で、火山に住めば火のブレスを吐き雪山に住めば雪のブレス、砂漠に住めば飛行能力が衰えるが地中に潜ることができるなどの偏った進化が起きる、この進化を極限進化というのだがキメラドラゴンにはさまざまな竜が取り込まれている

「炎龍、水竜、地底竜、旋風竜……クソっ!」

俺がキメラドラゴンを解析しているうちにこっそりとラヴェンナは逃げていた

「慎吾くん、こっちは私たちに任せて。あっちはお願い!」

「わかった、頼む」

レストランから展望台におり俺たちは廊下を走り抜ける、ところどころに仕掛けられていた触手による不意打ちに多少足を取られたもののラヴェンナをなんとか俺は追い詰めた

本来ならばバンジージャンプが行われる場所、展望台で唯一飛び降りられる場所だ

ラヴェンナの剣と俺の聖剣が交差する、激しい剣戟により周囲のガラスが割れ俺たちはもつれ込むようにバンジージャンプの台の近くにきた

相手の剣をスライディングで回避した俺はバンジージャンプの紐を掴みラヴェンナを拘束し逃さないように抱きついて飛び降りた

「射てっ!紫乃!!」

バンジージャンプの紐が矢によって切断され俺とラヴェンナは落下していく

奴は風魔法を構築しようとしているがそれは叶わない

「なぜ、なぜ魔法使えない…?」

「悪いね、ソレ借りるぜ!」

奴が構築した魔法を全て俺が吸収する、風魔法で衝撃を吸収するのは定石だ

それを見越して俺はカイザーワイバーンへと変身しようとしていた

地面にぶつかる瞬間、俺の両手が大きく湾曲し緑色の鋭利な鱗に変わり俺の顔はドラゴンへと変わり飛び去る

空を統べた風の魔王、カイザーワイバーンへと変身した

「ぎゃあおおおお!!」

キメラドラゴンは俺に向かって甲高く鳴き声を上げ炎のブレスを吐くだが俺の鱗に焦げの一つもつけずにその火球は潰えた

俺は両足の爪を覆うように鱗を逆立てた、足はまるで戦闘機のアフターバーナーのように鱗で覆われ風魔法による超高速移動を可能にしている

展望台の上に陣取るキメラドラゴンの顔面にアッパーカットのように両翼の刃のように鋭利な鱗をぶつけた、そして体制を翻し爪を出して展望台の天井で威力を殺して着地した

二つの竜が睨み合う、その沈黙を破ったのは三匹目の竜だった

ヴォルザはキメラドラゴンに向けて体当たりを仕掛けた、それの反応に遅れたキメラは大きくのけぞる。その隙を逃さず俺は尻尾でビンタし飛翔

そして顔を爪で切り裂く、ヴォルザが火球を放つと俺は両翼を素早く動かし竜巻で炎を包み込むと炎が拡散しキメラドラゴンを焼き尽くす

だが奴は炎龍の右前足と翼でその火球を防ぎ水竜の左前足を使いヴォルザの頭を床に叩きつけ空へと飛んでいく、体は傷だらけで空を飛ぶ姿に力強さは感じない

俺もそれに合わせて飛び立とうとしたのだが紫乃が俺の鱗を掴んだ

降りろと顎を使って示したのだが鱗をがっちりと掴み弓を構える彼女に仕方がなく俺は紫乃を連れて飛び去った

奴は後ろ足で魔法を放ち俺を迎撃する、紫乃にできるだけ負担がかからないように避けながら奴をおう

そしてテレビパークの芝が広がる広場に入る直前に奴は俺たちに向けてヴォルザを投げた、竜の巨体が俺たちに迫るが不思議と焦る気持ちはなかった

紫乃は弦を引き、呼吸を整え狙いを定める

俺は体を一回転させ紫乃の狙いをできるだけずらさないようにしヴォルザをさけた

「スレイアロー!」

放たれた矢はキメラドラゴンの巨体を一撃で倒した、これはアーチャーのスキルで弱っている相手に矢が刺さると一撃で倒すことのできる強力なスキルだ

地面に落下したキメラドラゴンは泥のように溶けていき後かたもなく消え去った、展望台の方を見ると触手たちも同様に溶けていきキメラと化した人々も人の姿に戻っていっている

俺は展望台に戻り警察が来る前に退散したのだった____



あの後、何台ものパトカーがテレビパークへと向かっていった

俺たちはそそくさと逃げ帰り紫乃はマンションへ、愛理とヴォルザは自宅へ、俺はバイトへと向かうことにした

「大丈夫なの?戦ったばかりで相当きつそうだけど……」

「まあ大丈夫、今日あんまり人が来ないでしょ」

こんな事件があった後に外食するものは少ないだろう、ヴォルザは体力を回復するために安売りされていた牛肉のパックを生で食べていく

口内で熱をためて1秒とたたずに焼肉にできるのは便利だなと思いつつY字路で別れ俺はレストランへと到着した

バイトが始まったのだが……ふらふらと俺は立ちくらみで冷蔵庫にもたれかかった

「大丈夫ですか新崎君!」

「アッ、店長…すいませんテレビタワーの事件に巻き込まれちゃって……」

「ええ、あの事件に?!大変でしょう……もう今日は上がって大丈夫ですよ、一人で帰れます?」

店の中には誰もいない、俺は私服に着替えて10分もたたずにバイトが終わった

カランカランとドアが開き俺はそれに視線を移すと久しぶりのバイトの時に来たヤンキーが来た

「あ!カシラ、あいつっす!」

ヤンキーの後ろには175センチほどの男、威圧感がありカシラという名前からどこかの不良チームのリーダーだろう

「アンタが前に俺のチームをボコした奴か、俺はバンディットのリーダーの新垣玲だ」

犯罪ばかり起こすアナーキー、そして沙奈のパパさんのバイクを売るブレインズ、そして自警団的な動きをするバンディット

この中で一番まともそうなリーダーが俺に会いに来たのだ_____

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