第13話 間違いと間違いじゃない選択肢

「なるほど…新崎さんのその異世界で手に入れた力がボクに…」

「ああ、その力は100キロ先のリンゴを撃ち抜いたアーチャーの力だ」

あまりザアナのことは周りには言わないほうがいい、だが英雄の力を受け継いだとなれば話は別だ

「でもボクは…戦うなんて無理っす」

「それが当然だな…」

俺も最初の頃はそうだった、だが戦わなければ死ぬ状況だったから戦った。この環境なら戦わなくても死なない

力があるからと言って戦場に送り込んでいいものでは無いとは身に染みてわかっている、

「ま、そういう戦いたくない奴のために俺は異世界で色々と学んだわけだしな、でも監視的な物も…」

「か、監視っすか」

「英雄の強さは俺がよくわかっている、だからこそその強さが敵に回るとなれば殺す」

ヒッと紫乃が声を漏らす、できるだけそう言うのはよしたいのは俺の本音だ

「一応どうしたいか決まったら教えてくれ、正解なんて答えは戦いの場にはないからな」


今日は金曜日なのだが桜祭りが土曜日にあるために振替休日として学校は休みだ、あの後は取り敢えず紫乃の家をお暇し三人で近くのカフェに来ていた

なんとも高価な家具が置かれた木組みのカフェには服を着せた小型犬を侍らせたマダムなどが優雅にコーヒーを飲んでいる

「しかしどうした物か」

俺はその言葉をラズベリージャムが乗ったパンケーキと共に飲み込む

「まずイワンコフの私兵部隊についてだが武器はサーバーで管理されていたから情報は得られた、だがパノプティコンと言う部隊については何一つ鑑定ではわからなかった。まあ鑑定のスキル対策を知っていれば先ず電子機器には残さないからな、その点を踏まえて俺は……この武器は俺たち、もしくはスキル持ちに対しての牽制じゃないかと推測している」

「というと」

愛理はカプチーノを飲みながら相槌を打つ

「スキルの販売元がカテドラル、大手製薬会社であると言う後ろ盾と資金源の提示。武器についても複数の種類、全ての兵士に配備できるとも示す。そして鑑定のスキルオーブを販売しなければザアナからやってきた人間しかそれを知ることはない、もしくは予め俺がこの町に住んでいると知っていたからか……」

カテドラルについてだが日本で第二位の薬品シェアを誇り、この桜市に本社を構えている

「そしてスキルを購入した不良グループについてだが……」

「ああ、それならこれ」

小さめのバッグからホッチキスで纏めた紙束を取り出した

「学校の情報網やらを使って集めたウチの学校の不良グループ、人数はあくまで推測だしリーダーのスキルについてはまだつかめてない」

俺はそれを受け取りペラペラと捲る、沙奈は隣で同じ様に見ている

「三つの不良グループがこの学校で争ってる。一つは野球部員全員が入っててカツアゲやらバイクで暴走行為をしてるアナーキー、二つ目は桜駅の高架下で独自の流通ルートで薬やら盗難品のバイクを販売してるマーケットを開いたブレインズ、そしてそれらの末端グループの暴走を止めるバンディット」

うちの学校の在校生が45人であり他校やチンピラ崩れを集め100人と言う大人数を抱えるアナーキーは暴行による逮捕者が既に5人、メンバー数12人と言う少なさのブレインズは薬物乱用で病院に送られたのが10人、だがバンディットと言うチームは数は60人で全員が在校生と他より多いのだが怪我人や逮捕者は出ていない

「ふむ……先ずはマーケットの調査だな、薬物をどこから手に入れているか調べる必要がある。と言うかホントに日本ここ?どっかのスラム街が日本の町に見えてるとかじゃないの?」

「残念ながら日本」

愛理の何とも言えない顔に苦笑交じりに俺は販売されてる物を観ていく

「これっ!!」

「え?ああ!!」

写真を見ていた沙奈は声を上げた、指先に示されたのは三台のバイク

「これ……沙奈のパパさんのコレクションだよな」

「お、おじさんが、売ったって言ってた……」

黒のボディに緑色のラインが入るスーパースポーツ、赤いタンクに狼のステッカーの張られたネイキッド、青のボディに白が入ったアドベンチャー

どれも思い出深い物だ、250ccだから高校生になったらくれるなんて言っていた

「……」

「えーっと……」

沙奈の手が触れる、愛理はどうしたものかと悩んでいる

「今から行く、お前らは家に帰ってろ」

俺は財布を取り出し会計を済ませた、受け取ったレシートを俺はポケットの中でくしゃっと握り潰し_______



高架下には幾つものパイプでブルーシートや布で作られた簡素なテントや自作のテーブルが道に並んでいる、西には駅によってつくられた壁があり南には川があるため一直線にテントなどが並んでいる状況だ

東側の唯一の出入り口から入って行く

怒りが収まったわけではない、だが感情的になって強くなるわけではない。目的のために感情はできるだけ抑えるのは基本だ

段ボールで区切られた簡易的なネットカフェ、パソコンと言ってもどこからか盗んできたであろう機種が違うノートパソコンが3つあるだけだが

キャンプ用のクッカーで焼かれるコンビーフやらを提供するレストランや鉄パイプをとがらせた武器を売る店、簡易的なギャンブル場もありかなり賑わっている

客の年齢層は10代後半だけ、他の成人済みの連中はいなさそうだ

ゴミ袋の中には中身を全て使い切った頭痛薬や風邪薬、カラフルなエナジードリンクなどが入っている

そしてようやく見つけたバイクの販売店、店頭に並ぶのはどれも原付やスクーターばかりで沙奈のパパさんのものは見つからない

俺は少しな離れたところでアサシン装備を身につけテントの内部に入った、四方をベニヤ板の壁で覆った大きめのテントには一つしか入口がなく店頭で商売をしている店主であろう男子生徒の後ろを通り抜けた

テントの内部は油の匂いが立ち込めている解体の最中であろうバイクがあった、幸いにして店主の男子生徒はノートに1日の売上と購入者の情報、バイクの行方を書いていた

「パパさんのバイクは……アナーキーの幹部に回したか……ま、いいバイクだから仕方ないか……いや仕方なくねえわ、そもそも盗むな」

俺はスマホを使い写真を撮ってその場を後にした___

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