第12話 ストリーマー
あの後はダンジョンの核は愛理が名誉挽回とばかりに張り切って片付け俺はアイテムボックスに奴らの残していった武器や弾薬、機材類を収納し俺たちは家へ帰りヴォルザが全てを解析を始めた夜更け頃
「無斬を貸せ」
リビングの扉を叩くように開いたヴォルザは俺と愛理に言う、両方とも従わない意味もないので無斬を出すとそれを奪い取って2階に戻って言った
それ以外に特に目立った問題もなく月曜日の朝となり俺たちは学校へと向かう
はずだったのだが、俺たちはファイルを片手に桜市の高級住宅街に来ていた
愛理の同期のインフルエンサーにしてプロゲーマーであるxxxZen0xxxにあいさつと学校からのプリントを渡しに来ていた
「しかし俺らの高校ってインフルエンサー多いな」
「まあ、桜市って未成年が多いから自然とインフルエンサーとかの年齢も下がるし、割と都会じゃん。それも相まってるっぽい」
へえと返しながらレンガの街道を歩く、俺たちのすむ一般的な住宅街とは大きく変わり高級外車やらが道路を行き交い道を歩く人々の服装も金が掛かっている
「ここだね、えっと1、2、0、3っと」
愛理はスマホのメモを使いボタンを押して住人を呼び出した
『はい』
「あ、初めまして〜私、スイーツゾーン所属の市川愛理と申します〜こちら大神さんのお宅でお間違いないでしょうか?」
『…ええ、大神です。娘を呼びますのでお入りください』
返答したのは少ししゃがれた男の声、父親だろうか
オートロックの扉が開かれ俺たちは高貴な花の香りがするロビーを通り過ぎる、道中に高そうな小型犬を抱えた老婦人に挨拶された
エレベーターも最新式のもので数十秒で最上階の12階に到着した、1203号室の前にはシワの深いスーツの男が立っていた
「娘は、中にいます。私は仕事ですので後のことをお願いします」
「はあ…」
俺たちは入り部屋の二階の一室へ向かった、マンションに二階建ての部屋があるなんてと驚きつつ登っていき紫乃と書かれルームプレートの掛けられた部屋の前に立った
「こんにちわ〜同期のイチスト太郎です〜」
愛理がコンコンとノックした後に声を出した、すると中からくぐもった声が聞こえてきた
「どうもっす…えっとご足労ありがとうございます?…えっとプリントとか置いていただければ…」
「まあまあそう言わず軽くおしゃべりでも…」
愛理の仕事はゼノとの対話、俺はスマホでゼノの配信を軽く見てみたのだが俺もやっているゲームだった
会話に手こずっているようだし俺も少し助け舟を出すか
「ストライクガンナーやってるんすね、ランクが…ミレニアム!すげえ、武器の構成とかってどうなってるんすか?」
「え、えっと…とりあえずシュナイダーにイーグル持たせて弾薬系のアタッチメントとバフを乗せてヘッドラインと前線を意識すればゴールドくらいは…」
ストライクガンナーとはFPSゲームだ、プレイ人口多くミレニアムとはこのゲームで最も高いランク
「シュナイダーってスナイパー系と相性悪くないですか?他のストリーマーもショットガンとかブレード持たせて近接ビルドが多いですけど」
「シュナイダーには近接用のアビリティのエイムアシストがあるからスナイパーの横揺れとリコイルが軽減されるしメインの影潜りで狙撃ポイントに移れる強さがあるっすから」
相手はだんだんと熱くなっている、オタクを調子に乗らせるなら得意分野で褒めるのが最も楽だ
「でもスナイプって苦手なんすよね」
「えっと、見て見ます?ボクの手元」
ガチャリとドアが開き中からメガネをかけた少女が顔を出した、xxxZen0xxxもとい大神紫乃は部屋へと迎え入れた
部屋の中はなんともまあ汚い、エナジードリンクの缶がトロフィーのように並べられ段ボールにはカップラーメンやらもある
「すっげ、第二回のストライクガンナー世界大会優勝…あの大会ってダンデいましたよねレオ使いの」
「いたっすね、でも近寄らせなきゃボクでも勝てるっす」
「やば」
明らかに上機嫌な紫乃、ロビー画面から早速プレイを始めた
オープンワールドを駆け巡りNPCのモンスターを倒して武器やアイテムをゲットし時折プレイヤーとバトルするPVPVEスタイルのストライクガンナー
プレイヤー同士のフェアなバトル環境であるコロシアムでは五枚のステータスアップのカードを選び武器にアタッチメントを選んで戦うのだが紫乃さんは開始10秒で一キルを取った
このモードでは大抵の銃は10発程度当てなければ倒せないのだが今持っているイーグルと呼ばれるスナイパーライフルは胴体で2発という超高火力
だがその分銃声が大きく一撃打てば数秒間自分の位置が相手に知られてしまう、だだ今操作しているシュナイダーと言うキャラは俺の使うシャドウゲートと同じように安全地帯に入って移動できる能力を持っておりそこから高台へと移動し再度狙撃を始めた
「ワンキル、ツーキル、影潜って、背後からのワンキル…そして最後にサブでヘッドショット!えぐぅ!!ガチでえぐいって!やば、うわちょっとサイン欲しい」
「そ、そんなにっすか?よかったら…今度一緒にプレイしません?これボクのフレンドコードっす」
学校のプリントに適当に書かれたフレンドコードを受け取ると愛理の視線が刺さった
「えっと、本題なんですけど…引退ってどう言うことなんですか?」
「引退?!こんなにうまいのに?!もうすぐウイングの公式大会もあるのに…」
ウイングとはエナドリの会社だ、ストライクガンナーの運営のスポンサーでよくコラボしている
「えっと、お父さんが…結果を出せなきゃゲームを止めろって言って…大会とかに優勝してからスイーツゾーンのプロゲーマーチームに雇われたはいいっすけど配信もするのが条件だったんす…それでこの部屋に防音設備をつけて欲しいと言っても無駄で、多分っすけど結果を出してるから止めろと言えずこれ幸いにと結果を出せないようにして」
「なるほどねぇ…」
まあプロゲーマーは稼げる時間が短いと言うのはある
「ちなみに賞金はいくらあるんで?」
「7億程度は」
「一生遊んで暮らせるじゃないですか!一人暮らしとかすれば……あっそうか親の許可がないとだめか……なんともダブスタな…じゃあ俺の家に住みます?」
「いや、知らない人とルームシェアは……」
紫乃の反応は当然だ、愛理がおかしいのだ…というかこの女なんで当たり前のように戦闘に参加してるんだよ
「まあ今度一緒プレイしましょうや、ほんとフレコありがとうございます」
俺は紫乃と握手を交わそうと手を触れた瞬間、また光った。愛理の時と同じように
紫乃の腕にゆっくりと光がまとわりついた後思うと一つの弓を彼女は握りしめていた______
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