第11話 混戦で断線、氷点下の因縁

ランデブーポイントとは西に置かれたイベント用の広場だった。シャドウゲートに似た亀裂が空間に現れそれを設置型の盾や機関銃で守りコンテナを幾つか設置し長期戦にも対応できるようにしている

愛理は柱に鎖の様な物で括り付けられており数人の兵士が何やらカメラの様な物で認識阻害の魔法を解除しようとしている

「ライフル持ちは一般兵って感じかスキルオーブで剣を扱えるようになったエリート兵、問題はアレだな」

俺の視線の先には機関銃を手に持ちバックパックから弾帯を接続した重装備兵、そしてその隣で二本の剣をもった兵士

重装備の持つ機関銃がライフルと同じ絶縁弾だったら多少のダメージを受け入れるしかない、そして双剣は身軽そうな装備に対して体の至る所に武器を隠している

「無斬は……あのテントか」

英雄の装備や武器は独特な匂いと言うかオーラの様なものがあり無斬は枯山水とか茶室の様なわびさびを感じる

テントの外には支柱で括り付けられたアンテナがあり通信が可能なようだ

「手早く終わらせる」

聖剣とライフルを取り出し二階の陰から俺は飛び降りライフルで牽制しながら着地し近くにいた一人を切り伏せる

「もう一人か……野郎ども追加報酬で今日は祝杯だ!!カタストロフィ!」

双剣が俺の背後に迫り俺は聖剣で魔法の剣を形成し相手をさせる、四本の剣が2つの剣を防ぎ連撃と向かい合う

「ちい、お前もレベル3のスキル持ちか!!」

重装備が持つ機関銃から大量の鉄の雨が横に降ってくる、俺は八本の剣を再度形成し舵輪のように動かし傘を紡ぐ

魔法の剣は魔力で構成されているがスキルで属性を与えているので絶縁弾で無効化できない。前と後ろに気を取られていると思った一般兵が銃弾を向けてくるが全てを剣で防ぎお返しにライフルで的確に倒していく

「おい、てめえ!こっち見ろ!!」

声の主の方を見ると愛理の頭に銃を当てる男がいた、サムライは防御系のスキルを持っておらず魔力による防御しかない。絶縁弾で撃ち抜かれれば死ぬ

「今だっ!!」

俺が振り返る前に背後で巨大な爆発が起き、俺は吹き飛ばされた____


重装備の男は機関銃を持って念の為に愛理の元へと向かった、もし生きていたら切り札としてだ

だがある事に気が付いた男は迫る五本の刃に反応が遅れた

2本の風の剣と二本の火の剣が愛理を拘束する鎖を断ち切り、そしてもう一振りの無斬が愛理の横を通り過ぎると鎖が落ちるよりも先に腕がそれを掴んだ

そして四本の剣頭上で交差し爆風が巻き起こる、それを無斬にのせサイドにたつ兵士を吹き飛ばす

「ぐぅ!?貴様いつから!?」

「あんな爆音、お昼寝から起きるには充分だよ」

「小癪なぁ!!」

男は機関銃のバレルを回転させると散弾を発射したが一発の鉄球を正確に無斬で打ち返すとピンボールの様に跳ね返り全ての散弾を打ち返した、そして男のバックパックから伸びる弾帯を引きちぎると弾を奪うそれの落下エネルギーを奪い一瞬停止した隙をつかい衝撃を釘のようにしてリムを押し射出、奴の持っていた弾薬は今愛理が文字通り握っている

「畜生、カタストロフィ!!何してる、こっちを……!!」

「馬鹿言うな!!こっちはクソッ!!バケモンかよっ!!」

カタストロフィは俺を相手に必死に剣を振るう、だが俺の聖剣によってはじかれる

隙を作らずブーツの下に収められたナイフを蹴るように投げつけ、それに乗じて肘に隠したナイフを両手に握り俺に投げつけ距離をとった

「エディフィス、ワン公使うぞ!新兵共はとっとと下がれ!!」

コンテナの金具を握って設置式機関銃を連射する、エディフィスと呼ばれた男は装備の装甲部やバックパックをパージすると想像以上の身軽さで無斬の射程圏内から離れたゲートの中に入った

「時間切れだ新兵共っ!地獄でママのおっぱいでも吸いやがれ!!」

カタストロフィが金具を外すとコンテナから何かが飛び出し兵士たちを襲う。

神の血が凍り付いた赤き雪山に住んでいる瘦せこけた魔獣……飢餓が兵士たちを食っていた

「余計なモン連れてきやがって!死体に近づくな!!」

「わかった!」

愛理は俺の警告に従ったが他の兵はそうではない、ゲートに向かって走るが足元に転がる死体に近寄ってしまい中から生えてきた鋭利な肉と骨の槍に貫かれた、これが飢餓だ

オーキッドから牙に不食の呪いをかけられ狩った獲物の肉や骨が意識を持って生物を襲う様になり吸血鬼の軍で敵味方関係なしに殺戮する最終兵器として置かれていた

「……下がってろ、アレで仕留める」

愛理は二階に登り余裕そうに手摺に肘をかけてひらひらとてを振った、オーキッドの呪いは大量の氷属性の魔力で構成されている

「あの時のワイン、美味かったな……」

周囲の魔力を吸収し肉体を構成していく、肉体年齢がドンドンと増していき外見は80前後の爺さんになった

だが顔こそ老けているがにくたいは230㎝で引き締まった体、そして巨大なコウモリの翼が背中から現れた

かつて氷の国から一夜にして朝を奪った吸血鬼の魔王、オーキッドがその姿を現した

「来い、リオート」

深く落ち着いた声音がその場を支配した、飢餓達はその最も恐れるべき存在を前にし、兵士たちは凍りついたように動きを止めた

周囲の魔力が段々と氷へと代わり剣を形成する。一滴も溶けることのない氷点下の氷の剣、リオートがその姿を現した

正確に周囲に浮かぶ魔力を線のように繋ぎ氷のドームを形成、-230°によって飢餓達は動きを止める

赤き雪山の最低気温は-100°二倍も下がれば大抵は死ぬ、普通の人間ならば尚更だ

「朽ちろ、駄犬」

リオートの一振りによって空気中の窒素を魔力と結合させ振動と合わせて体内の血液を凍らせ氷の刃を作り出し高速振動させる

目に見えない氷のチェンソーによって外側には傷を付けず肉塊をバラバラと崩れさせる、相変わらず恐ろしい技だ、コレは実質的に窒素を凍らせれば射程が無限になり見えない、当たれば肉体が内側からボロボロになるため当たれば即死のクソ技だ

尖った肉が蠢く死体の呪いを解除し剣に魔力を集中させる、氷の竜巻が剣に纏いつく

ゲートに向けて俺は剣を振り下ろし構成する術式を乱し破壊する、厄介なエディフィスとカタストロフィそしてイワンコフの因縁が氷の中から溶け出した______



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