第9話 移転と問題点

日曜日、ショッピングモールは賑わっていた

昨日買ったばかりの服を身につけた沙奈と愛理の後ろを俺はついていっていた、暖かい気候でありながら肌を晒すのが苦手な沙奈はフリル多めのティーンファッション。それに対して愛理は同じ感じでありながらも大学生感を出しており双子コーデと言うより姉妹コーデ的な物を感じる

「慎吾君も思ったより服がまともで驚いたよ」

「そうか?割と俺そこら辺は気を遣うタイプよ、円滑なコミュニケーションは身だしなみから始まる物だからな」

ジーンズとステンカラーコートを着た俺、目立ちはしないがそれなりに身だしなみは整っている。胸元のボディバッグはモバイルバッテリーとエコバッグと財布のみを入れて身軽にしている。

桜市はアミューズメント施設は水族館や遊園地、恐竜博物館に科学博物館など多種多様にあるがショッピングモールは少ない

このショッピングモールはかなり挑戦的な経営で学生向けの店が多かった、まあ小中高含めて6校あったので売上は途轍もなく高かったらしい

だがもうすぐここも閉店する、と言っても理由は新たな店舗に移すだけだ。おもちゃ売り場や家電量販店の入ったファミリーエリア、文房具や10代ファッションの入ったティーンエリア、フードコートや食料品店の入ったフードエリア、名の知れたブランド店が多く入ったブランドエリアの四つのビル型ショッピングセンターがもうすぐ開業するのだがこのショッピングモールの店舗の大半が移転する

そのため数店はもう休業している

「さきコスメ見に行こ」

「ああ、そうだな___


数時間前、バイトからの帰宅後

「売人に関してじゃが、販売元も分からん状態じゃ。スキルをもったユニークモンスターを倒したコチラの世界の者がスキルオーブを手に入れてそれを解析したか……ザアナから来たスキルオーブの技術を知っている者が何かしらの組織に属したか……そこの判断もつかん。黒リンゴやイワンコフの隊がこちらに来たなら相当厄介じゃ、ありえんとは思うが赤の魔導書がこっちに来て人に手を貸したのもあり得る……奴はそう言う奴じゃ」

黒リンゴ……ザアナで活動していた暗殺集団だ、『骨を刃に』を合言葉に暗殺が失敗すれば自身に禁術である死霊術を使い骨を外側に爆発させ自らの死と引き換えに対象を殺すと言う危険な存在だった。

それに対して赤の魔導書は言わば本だ、魔法が書かれた本が人格を持ち人間を滅ぼすために動き適当な人間に厄介な魔法を与えては暴走させており各地で俺とヴォルザで後始末をしていた

「どっちにしても厄介だな……死をも恐れない黒リンゴ、一手二手……いや百手先まで読む赤の魔導書……」

「いつも言っておるが常に最悪の状況を想定しておけ」

ヴォルザは俺の喉元を撫で低く唸った


「慎くん?どうしたの?」

「別にぃ、愛理最近流行ってるこのファンデってメイクのり良い?俺肌弱いからメンズのファンデ使えないんだよね」

ぼうっとしていたのがバレたのか沙奈が心配そうに覗いてきてた、俺はその場を誤魔化し目に付いた有名なファンデを手にとって愛理に見せた

「それ艶感は出るけど乗りは悪いから、こっちの方がお勧め。企業案件で紹介した奴だけど割と良くて使ってる」

「企業案件とかやっぱ受けてたんだ」

「うん、でも大半は動画とってからは使ってない微妙な奴ばっか」

事務所に所属してなかったのに自分でマネジメントやらをしてたの凄いなと思いつつお薦めのコスメを幾つか買ってから俺たちはベンチで休むことにした

「いやあ助かった、化粧品売り場って入りにくかったからさぁ……沙奈も叔母さんに見られたら不味かったから来れなかったんだよな。それに有名インフルエンサー様に選んで貰っていい買い物できたし」

「そんなに褒めないでよ~」

愛理は手慣れた手つきで自撮り棒にスマホを装着すると沙奈に抱きつく形で自撮りを撮った、俺を移さず匂わせを出さない所にプロ根性を感じながら俺は少し離れた

昼飯は何にしようか何て考えながらスマホをいじっているとイチスト太郎のアンチが流れてきた

まー何とも王道と言うかテンプレの流行物を叩く悪いオタクだ。ブロックでもしようかと思ったが相互フォロワーなので下手に手を出すのはやめとこう

自撮りを終えた愛理についていき俺たちは飲食店が並ぶエリアへ向かった

「何にする?」

「私、ラーメン食べたい」

愛理の提案で俺たちはラーメン屋に入った、チェーン店のラーメン屋でそこまでルールが厳しい店ではない

沙奈は塩ラーメン、愛理は醬油とチャーハン、俺は味噌と餃子を頼んだ。JKインフルエンサーがラーメンとか好きなんだと思いつつ商品が届くのを待つ

「何でラーメンにしたんだ?そこら辺に見た目が良いパンケーキとかあったけど」

「え、サブのブルーオーシャンのアカウントを始めようと思ってさ。好きでしょ、若い有名女性インフルエンサーが自分たちと同じラーメン食べてるの」

すげえ、コイツ……自分の価値とプラットフォームの需要を理解してやがる……

俺がよく使うSNSのブルーオーシャンの利用者は10代から30代の男性が多い、それ故に女性の飯系インフルエンサーは凄くバズる。

そして若い女性に人気なレッド・スカイ、ファッションやらスイーツ系が流行るこのSNSの有名インフルエンサーが裏の顔の様にラーメンを投稿すれば相当人気はでる

「お前マネジメント能力やばいな……」

なるべくしてなった存在と言うのを久しぶりに見た休日だった_____



ゆっくりと肌にぬめりとした感触が伝う、魔力が段々と沈殿していると直感したおれは周囲を見回す

ダンジョンに拒否された者達は地面に倒れていく、俺はソードマンの装備を取り出し構える

愛理も同様でいつの間にか会得していたアイテムボックスから無斬を取り出し構えた、慣れてきたと言うよりも何をすべきか理解している事に名に目線か成長したなと思いつつ沙奈の前に立つ

沙奈は地面に倒れてノイズに包まれた、俺の持っているダンジョンアイテムを渡せば魔力によってダンジョン内でも動く事ができるのだが武器もスキルもない彼女には危険すぎる

ダンジョン化を解決してから呼び戻すのが最も安全だ

「二手に別れよう、ヴォルザちゃんに修行つけてもらったから一人でも大丈夫だし!」

「……そうか、わかった。危なくなったら逃げろ、驕りが戦いで最も危ないからな」

ドラゴンはとても強力な種族だ、だが科学者として生きてきたからドラゴンの中では弱い部類に入る……あまり過信するのは良くない

俺達がいるのはちょうどショッピングモールの真ん中にある円形の休憩所、西と東に伸びた建物を俺は東に愛理は西に向かうことにした___





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