第5話 居候の増える日

ダンジョン化はモンスターと空間が消えたことで終わりを告げた、人々も目覚めていく

「どうだ?」

ヴォルザと共に俺は愛理を連れて家に帰ってきた、物置部屋でヴォルザは愛理の検査をしていたのだが20分ほどで終わった

「お主のスキルからこやつにサムライのショートカットができておる」

「というと?」

「本来引継ぎはパソコンで言うとエクスプローラーじゃ、ファイルの解凍やコピーなんかができてプログラムの実行ができる。それに対してこやつはデスクトップにサムライへのショートカットがあってそこからもう一つの武具の生成や身体能力ができておる、つまりお主が英雄の力を無くさん限りはこやつはサムライの力を使う事ができるってことじゃ」

愛理のその力に俺はうーんと唸る、愛理はオレンジジュースを飲みながら少し申し訳なさそうな顔をしていた

「えっと……私はどうすればいいのかな?」

「どうするか……余りその力は使ってほしくないし……でも毎日監視ってのも……」

俺にも彼女にもプライベートってものがある、どうしたものかと首をかしげているとテレビを見ていた沙奈が近寄ってきた

「これ、本当なら慎くんの家に住めば?」

手にしたスマホにはSNSの書き込みが映っていた、アカウント名はイチスト太郎なので愛理の投稿だ

『最近ストーカー行為がありました、近いうちに引っ越さなきゃ』

「ストーカー被害……いやまあ生活費は問題ないし俺はいいけど、流石に出会ってすぐの男と一つ屋根の下ってのは……」

「いいね、私は君と一緒に住みたい」

インフルエンサーと言うのは他の人と違うってのは本当のようだった___



「パソコンはこれとこれ使ってくれ、充電器はこれ。明日の夕方にスマホの契約とかしにいく」

「了解した、すまんなワシも厄介になって」

愛理を自宅までエスコートし時刻はもう11時を回っていた、物置部屋に布団を持っていき自室のもう使っていないデスクトップパソコンとノートパソコンと周辺機器を渡した

ヴォルザはとある王国で兵器科学者として働いていた、作った兵器は強力で魔力を吸収し爆発させる手榴弾などがあった

そして適応性の高さも相まってその地域でしか使われない特殊な罠の解除なども担当しておりその力を現代でも発揮していた

「モデリングソフトとやらは使えるのか?」

「ああ、元々は俺がゲームに使ってた奴だから性能は高いし容量も4TBくらいある」

昔見たドラマか何かで侍が現代にタイムスリップして技術に驚くと言うのはよく見たしラノベで異世界からの住人がこの世界に驚く描写もよくあったがコイツは科学者としての好奇心の方が強く驚きはあまりないようだ

明日はバイト先と学校に手続きやらを行うため今日は寝ることにした

次の日、バイト先のレストランは両親が連絡してくれていたお陰で自然退職の形になってはいたが店長が再雇用と言う形で雇ってくれた

「受け取り損ねた給料ももらったしどうしよっかなぁ」

封筒にはいった明細をスマホで読み取らせ家計簿にデータを繫栄し六万三千円の給料を財布に収めた

レストランが開く一時間前に店長が時間を空けてくれたので来週から俺は復帰する予定だ、そう言えばと俺はアイテムボックスに収めたザアナの通貨を思い出した

「金貨3万枚、銀貨4千枚、銅貨1万枚……持ってても宝の持ち腐れか。いや金属として売れば……」

『ルール違反はダメだよ』

突如俺の脳内に聞こえてきた声、ザアナでよくお世話になった神様のマアナだ

ルールの神であり到着した国の法律や魔法の条件などのルールを教えてくれていた

「お久しぶりです、でもこの通貨はこっちじゃ使えないし」

『一応こっちでそこら辺の優遇はするよ、君はザアナで指折りの資産を持つから経済にかなりダメージがくるのもあるしお礼もある』

「どうするんですか?神様パワーでこれを日本円に変えるとか?」

『いや、世界のバランスに関わる事はさすがにダメだからね。その通貨を私が落としたこっちの世界のルールから外れた金と交換する』

「それは普通に警察に言った方がいいんじゃ?」

『残念だけど私はルールの神、ルールから外れた物は口出ししないんだ」

神様と言うのはかなりの変わり者だ、マアナの場合はルール違反には厳しい。俺が以前作戦のために犯罪に手を出すと無視をした

だが別の国に着くとその国ではルール違反はしてないからと普通に話しかけてきた

『それと今回で話せるのは最後かも、元々私はザアナの神だからこっちの世界には余り来ちゃダメなんだ』

「あーわかりました、全部一気にってのも無理そうですかね?」

『うん、一応アイテムボックスから出しておけばこっちで回収できるから毎月……この枚数なら30万くらいなら問題ないかな2年後に終わりだけど』

そう言えば年間33億円が道に落ちると聞いたことがある、それならば合計1440万の金が流れてきても大丈夫だろう

「ありがとうございました、本当……色々と」

『私からもありがとう』

また一つ、あの世界との繋がりが途絶えた瞬間であった___


「えー新崎君ね、えー親御さんから色々と聞いたけど君ねえ……」

教頭の百目鬼久助が書類をよだれをつけた指でめくりグチグチと嫌味を言ってくる

カビの生えた古い価値観の男だ、不登校の生徒を無理矢理集め剣道部の部室で何時間も根性論を垂れてよけいに不登校生徒はひきこもるようになったりと絶望的なまでにこの令和に向いていない存在だ

校長先生はとても穏やかで好かれているのでよけいに嫌われている

「えー君の教科書とかそこにあるから全部持って帰りなさい」

応接室の床に置かれた教科書の入った段ボールと新しい体操服だったりが入っている袋を教頭は指さした

そう言った荷物があるって聞いていなかったので袋の類は持ってきていない、こう言う事を指摘するとキレるので俺は何も言わずに手に持って出て行った

4キロほどだろうがスキルによって片手で軽く持ち上げる事ができた、外に出たらアイテムボックスにしまうことにしようと思いつつ廊下を歩いて行く

現在時刻は12時2分、もうすぐ昼食時だ

チャイムがなり生徒達がぞろぞろと出てくる、なんとも視線が痛い

「ねえあの人って……」

「うん、行方不明だった……」

二ヶ月もあれば噂が学校全体に知れ渡るのは当然だろう、そそくさと俺は去ろうとしたのだが見慣れたピンクのエクステをつけた少女。愛理が教室から顔を出していた

同じクラスだったからこの教室が俺のクラスかと思い窓から少し教室を横目で見る

「2の3か……」

軽く会釈して俺は帰っていく、軽く見たが一年の頃の友人は数人いたのが幸いだ

帰り道にふと気配を感じて路地に目線を向けるとメンズファッションで着飾ったヴォルザが待っていた

「それ俺の服……」

「ワシの衣服だと目立つじゃろ。あとネットショップで色々と注文させてもらった、金は金貨で払う」

俺は急いでスマホを開きメールを開くと決済の連絡がきていた、総額12万

「白衣、3Dプリンター……おぅ……俺のバイト代……」

30万貰えるのはわかっているがそれはそれとして自分の苦労が湯水のように溶けると言うのは……

ヴォルザの靴を軽く蹴って不満を現しつつ俺たちは家へと帰って行った___







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