第3話 ヴォルザ
『なんじゃ、慎吾か?!』
「ああ、何でお前がこっちの世界に?!」
赤い鱗をまとったドラゴン、炎龍ヴォルザは魔力の振動を使いテレパシーのように俺の脳内に語り掛けてきた
『待て、何故お主から魔王の気配がするんじゃ?』
「どういう事だ……?何を感じてる!」
ヴォルザは光に包まれると人型へと変わっていった、ツノが後頭部から生え赤の髪を麻縄で適当に纏めた女
服は向こうの世界だと普通の服装だがコチラだと目立つ
ヴォルザは向こうのザアナのとある王国で兵器科学者をしており人間の姿で生きていた、ドラゴンであることを示すためにツノを出していたのでよく見た姿だ
炎龍と言う超高温の炎を吐ける存在故に大抵の金属を加工でき、俺の武器や防具を作ってくれていた
「ふむ……紋章か、お主の体内の魔力が魔王たちの血を吸収したのじゃろう……ほぉ、スキルとの融合……お主に渡しておった作業台はまだあるか?」
「ああ、アイテムボックスからアイテムは出してない」
「少しお主の家を借りるぞ」
俺たちは魔力を対外に纏い頂上から飛び降りた、俺は魔法使いの高度魔力操作を使い風魔法で体制を整えながら着地の衝撃を殺す
隣を見ると縮小させた翼を降下したヴォルザは辺りを見回して興味深そうにしている
取り敢えずは目立つから家に帰ることにした
「その人は……?」
「あ~同僚?協力者?……まあ仲間って感じの関係」
「ヴォルザじゃ」
沙奈に挨拶を済ませ俺は物置にしている部屋を適当にかたずけてアイテムボックスから二つの作業台を取り出した
「ふむ、腕がなるのぉ」
作業台に向かったヴォルザは様々な素材を使い何かを作り出した、集中し始めたヴォルザは何をやっても無視するので俺は沙奈を連れてリビングへ戻った
2時間程たった頃、晩飯を作ろうとしたところヴォルザが降りてきて俺の口に液体を流し込んだ
「ヴぇっ」
情けない声を漏らして俺は取り敢えず飲み込んだ、身体が痺れ段々と体が麻痺する
しかし少し経つと感覚は戻り両腕に3つ、両足に3つ、そして背中に1箇所に熱があつまっていく
すると体に六つの紋章が浮かび上がった、そして見てもらうと背中にも一つの紋章があるようだ
「なるほど……7つの魔王の血がお主の引継ぎのスキルと共鳴しておる、魔人の魔王を除く全ての魔王に変身できるようじゃな……力はスキル、変身は魔王の血……面白いのぉ……ふふふ……」
マッドな笑みを浮かべるヴォルザは背中に艶めかしく指を這わせる、沙奈はどさくさに紛れて二の腕とか腹筋を揉んでる
「セクハラ?」
「ち、違う……前よりも筋肉がついてて……ボディビルダーみたいにムッキムキじゃなくて中々わからなかった……」
「そりゃあ死地を超えまくった筋肉と魅せるための筋肉は違うからな」
俺は着やせするするタイプだから瘦せマッチョ的な筋肉はあまりに見えなかったようだ
「すご……」
「わかったから!ちょっと、あっ!そこから下は不味い!」
少しばかりいやらしい事が起きたのだった……
晩飯を食べながら俺はザアナの情報を聞いていた
ザアナでは俺がいなくなって1ヶ月ほどが経っていたようだ、魔王の配下は一部を除いて人類側に降伏しているようだ
共存を望むエルフの女王の尽力と俺が残しておいた手紙で人類側の最高権力者である王国の王も無下に扱う事はないようで一安心だ
魔人の魔王の力はとても強大だった、そして威圧的な態度や歯向かった部下を何の躊躇いもなしに殺す残虐性を持っており魔族達は渋々従っていた
大半の魔王はただ本能のまま動いていたため部下などはいなかった、オーキッドと炎狼の部下達は未だ反攻作戦としてゲリラ戦を仕掛けるほどの人数はいるようだ
「まあ流れる血は少ないほうが良い、イワンコフみたいな連中は忠義に生きてるから降伏することはないだろうが……教会騎士団なら何とかなるだろうしな」
オーキッドの右腕である大男、イワンコフ・ディルサム。大剣を使い氷で刃を巨大化させ城すらも一刀両断した怪力とほぼ回避不可能なまでの範囲攻撃を持った吸血鬼でオーキッドに尽くしていた
『この翼こそ我が主へ捧げる忠義の剣ぃ!!』
とてつもない咆哮の声と共に翼を氷で巨大化させ剣の様に振るったのは余りにも恐怖を覚えた
羽ばたく度に周囲の山や木々が倒れたのはさすがに化物すぎた
「ワシは魔人の国でお主が消えた原因を探っておった、お主最後に何をした?魔王城からの凄まじい魔力量に大半のモンスター共が怯えておったぞ」
「城の地下にあった世界樹の根っこから魔力を引き継いで七英雄のスキルを全部使った後にアイツの魔剣を奪って壊す前提で剣に魔力流し込んでぶった切った」
「お主も相当バケモンじゃのお!」
沙奈は話についていけない顔をしている
「えっと、どこらへんが化物なの?」
「世界樹はザアナの全ての物質の根源で、こっちの世界で言うならば発電所の電力を全部一つのトースターに注ぎ込んだ感じ。下手したら家電爆発するレベルなんだけど、アホみたいに火力が上がってパンを灰も残らないレベルで消し去る事ができたんだ」
「ええ……」
ヴォルザはハンバーグをフォークで食べながら頷いた
「世界樹の引継ぎも関係してそうじゃな」
魔王の強さは身に染みて俺がよく分かっている
「本当だとしてもこの世界じゃ宝の持ち腐れだよなぁ……」
「……そうでもない、ザアナからダンジョンと一部の生物が消えておる。ワシもそれに巻き込まれた、もしお主の帰還と関係があるとすれば。その力を振るう必要があるやもしれん」
ダンジョン、魔力が沈殿し建物や洞窟などの空間を捻じ曲げモンスターが生まれたり特殊な能力を持ったアイテムが生成される存在
洞窟の中でありながら太陽が出ていたり海があったりと法則やらをすべて無視した場所だ、ダンジョンから発掘されるアイテムをダンジョンアイテムとよび高値で取引されている
水を無限に入れられる水筒や生物を保存できる壺など便利なアイテムを求め俺も30個ほど潜った
「消えたダンジョンは全てお主が潜ったダンジョンだった、モンスターとダンジョン……これらがワシやお主の様にこの世界に来ていたら?」
「噓だろ……」
街角にある巨大な交差点、そこは異質な空気を放っていた
得体の知れない植物が生え奇妙な生物が姿を現す、車を踏み潰し自販機を破壊するその巨体を持った生物や緑色の肌をした子供ほどの小ささの生物が群れをなしていく____
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