第2話 炎龍との再開

「つまり、記憶はないと…わかりました新崎さん。本日は長時間ありがとうございました、もし何か思い出したらお電話ください」

「はい、すいません何も覚えてなくて」

警察署の取り調べ室で俺は話を聞かれていた、本来ならば会議室が空いてるらしいのだが治安の悪化で毎日用に取り調べ室が満室で会議室まで使われて唯一開いたのがこの取調室だけだった

とりあえず俺は何も知らない覚えてないで突き通した、失踪した当日は学校に行く途中で意識を失い気がついたら2ヶ月が経過、そして家の間にいたという設定だ。実際この世界で起きた事だ

「ありがとうございました」

警察達に見送られながら俺は警察署の受付で待っていた沙奈の元に向かった、二時間ほど待たせてしまい申し訳ないと謝罪して俺達は近くのスーパーで買い物をすることにした

住んでいる県に4つ程しかないチェーンのスーパー、安さとしては微妙だが近いためよく利用している

「通貨ってよくできてたんだな……あんな重い金貨やらを何枚ももたずに済むなんてな……」

千円札や一万円札などの紙切れで支払いできるのも良い

「やっぱ人間って金が一番心にくるんだなぁ……」

カートに昼飯の弁当とひき肉や玉ねぎ、卵などの晩飯のハンバーグの材料を入れていく。お菓子売り場を通りがかった時俺はふと今日は金曜、ムービーフライデーという映画がテレビで流れる日である

「今日のムービーフライデー何だっけ」

「なんか邦画の警察映画だったはず」

ポップコーンとノリ塩のポテチ、そして適当なグミやら飴を入れる

「グレープソーダとコーラ、あとオレンジジュースにすっか」

映画は好きだ、特にテレビで映画を適当に流しながらスマホをいじるのがとても好きだ

耳に入る適当な言葉、特に脳みそを使うまでもないストーリーを脳の片隅で理解しながらSNS見たりソシャゲを周回するのがとても好きだ

映画館でみるのも好きだ、爆音と大画面で流れるアクションとか凄く楽しい

2リットルのジュースをカートに入れて俺はレジに並び会計を済ませカードで支払う、両親から渡されたプリペイドとクレジットの二つが使えるカードでクレジットの方で食費に加えてガス代や水道代などを払っており小遣いはプリペイドに両親がチャージしてくれている

エコバッグに荷物を詰めて沙奈が待っている休憩室に俺は向かった、自販機と壁にかけられたテレビとテーブル、そして椅子があるだけの小さい休憩室だ

『さて今回のネットニュースは、今話題の女子高生を中心に大人気のインフルエンサー!イチスト太郎さんです!』

正午を少し過ぎた12時23分、ニュース番組はインフルエンサーを呼んで一週間くらい前に流行った物をまるで今流行りのように紹介するコーナーへと移った

先日撮影したであろう映像にはウルフカットの黒髪にピンクのエクステをつけた少女が現れる、口はマスクで覆っているが隠せない美少女オーラと言うのだろうかそれが溢れている

『今日私が紹介するのはコチラ!市川堂さんのイチゴ大福です!!』

どこかの大福屋を紹介する少女を見ていた沙奈に声をかけた

「この娘、慎くんのクラスメイトだよ」

「まじ?」

唐突な情報に驚いたが一度反応したらそこまで驚くことではないなと思った、クラスメイトがインフルエンサーとしても学生インフルエンサーなんて1年もしないうちに消えるというのはよく聞く話だ

下手に調子に乗って黒歴史を残していないといいのだが……

両手にエコバッグを持って俺と沙奈は外に出た、するとドンッと左肩に何かぶつかった

「あ、すいません」

「いえっ……こっちこそ……すいません……」

細身の少女にぶつかった事を詫びて俺と沙奈は帰路についた、エコバッグを俺はスキルの一つであるアイテムボックスに収納し帰路へとついた



「はい……マジで何も知らないんだよ、うん……ごめん、心配させて。一応今から学校に電話するつもりだった」

久しぶりにカードを使ったからカード会社から両親に電話が行ったようで昼飯を食べている最中に電話がかかってきた

「警察の方から電話行ってなかったんだ……」

何か警察でごたごたがあったのだろうか、久しぶりの両親との通話が終わり俺はテレビの電源をつけた

住んでいる県のローカル番組が最初に映った、俺たちの住む桜市は桜が多く生えている山が観光地として有名だ

『さぁ4月31日は皆さんお馴染みの桜祭りです!!葉桜テレビタワーで恒例のバンジージャンプを開催します!!きゃっ……』

桜祭りのバンジージャンプの優先チケットのプレゼントキャンペーンを説明しようとした女子アナが突風で吹き飛ばされそうになる

「ドラゴン……!」

一瞬だった、一瞬だけテレビに映った空を飛ぶ物体が見えた

ザアナでよく戦ったモンスターの中でも最も記憶に残っている一種、ドラゴン

住んでいる地域によって習性や見た目を大きく変えるドラゴンは一匹で国を動かすレベルだ

「クソッ、悪い沙奈。少し出かける」

「大丈夫なの……?」

立ち上がった俺の服の裾を掴む沙奈、そっとその手を握って俺は離させた

「ああ、大丈夫だ」

アイテムボックスからアサシンの装備を装備する、一瞬にして黒の戦闘服に着替えた

「シャドウゲート」

手にしたナイフを壁に向かって切りつけると空間が切断され裂け目が現れ俺はそこに飛び込んだ

陰に生まれ陰に生きたアサシンの生み出したこのスキルは死を察したモンスター達が骨を埋めるため集まる竜骨山を走り抜ける為に作られたスキルだ

空間を歪めて影の世界に入り込み障害物を無視して入りこめれるシャドウゲート、足場や壁となる骨を影の世界でくぐり抜けたりして背後から攻撃したりした

影の世界を走り抜け10分もたたずに目的のテレビタワーに到着した、鉄骨の下の自販機の影で誰もいないことを確認してから俺は気配察知でドラゴンの気配を感じ取る

「気配遮断が使えるのか……だがドラゴンみたいな強大な力だったらアサシンのスキルだったらみつけれるぜ」

魔力を周囲と同化させて肉体をカメレオンのように変色させる一部のドラゴンが使えるスキル

「気配遮断、脚力強化、シャドウゲート!」

同じ気配遮断を使用して俺は大きく跳躍し鉄骨に登っていく、シャドウゲートで鉄骨と鉄骨の陰にゲートを作り素早く駆け上がり頂上にたどり着いた

酷く冷たい空気が喉元を通り過ぎ、眼前に巨大で赤い鱗をまとったドラゴンがいた

「ヴォルザ!?」

そのドラゴンは、異世界で共に旅をした仲間の一人

炎龍の兵器科学者、ヴォルザの姿だった




















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