異世界から帰ってきたらスキルのせいで倒した魔王の力引き継いでました

@Karasienadori

第一部 帰還

第1話 帰還

異世界にいた

俺の人生で一番の事件として語り継げる事件だ

異世界ザアナ、七人の英雄と八人の魔王が戦いを繰り広げていた世界だ

魔法とスキルが存在し竜やゴブリン、ゴーストに獣人などのゲームによくあるファンタジーな世界だった。そこに俺、新崎慎吾は召喚された

理由は簡単だ、七人の英雄全員が殺されたから

英雄たちはそれぞれの魔王への対抗策を考案したのだが魔人の魔王の手によりやられた、魔人の魔王はスキルが使用できる種族の人間と魔力が膨大な魔族のハーフであるため他の魔王たちよりも強力だった

ただの一高校生の俺が太刀打ちできるか心配だったのだが俺は特殊なスキル、引き継ぎというスキルにより英雄の生み出した対抗策をスキルとして会得し七人の魔王を倒した

最後の魔人の魔王との決戦で俺は勝利を掴んだ

だが崩壊する魔王城から脱出することは叶わず瓦礫に潰されたはずだった


しかし目が覚めると俺は家の前に立っていた、震える手で鍵を回し俺は帰宅した_____


家の中は特に変わった様子は無い、両親は海外におり俺は一人暮らしだ

捨てるのを忘れたゴミ袋だとかトイレットペーパーを買えと書かれたメモなどが貼られている、なんか疲れた

今日はもう寝よう、鍵を閉めた俺は二階の自室に入ろうとした瞬間だった

誰かいる

七英雄の一人であるアサシンから引き継いだスキル気配察知により誰かがいることがわかった、俺は腰にかけた剣に手をかけてドアノブを捻った

剣には特殊な細工がされている、剣の柄には魔力を通しやすい木材を使っており剣に魔法を宿すことも鞘に収めた状態ならば魔法の杖として使える

そして入ると

「…お帰り」

「た、ただいま…紗奈」

幼馴染の少女、白い長髪を靡かせた呉島紗奈が俺のベッドを占領していた

俺はそれと同時に気を失った、多分久しぶりに安心できたからだろう


「起きた?」

「うん…なんで俺に抱きついてるんですかね」

目が覚めた、床に転がった俺の頭には枕が置かれており布団もかけられている。紗奈が俺をベッドに運ぼうとしたのだろう、だが180センチ65キロの俺を持つことは不可能だったようで妥協案としてこの状態を作ったのだろう

そして俺の両腕の間に挟まる紗奈

「またいなくなったら嫌だから…」

「そっか……あーあ腹へったー飯食べるか。今何時?」

なんかしんみりした空気になったので俺は話題を変えようとスマホの時計を見た、もう10時を回っておりコンビニかチェーン店しか空いていない

「ハンバーガーかコンビニ弁当か…」

ジャンキーな食べ物を思い出すと腹の虫が鳴る、異世界だといっつも精進料理みたいのか虫ばっか食べてたから頭悪いくらいのジャンキー具合で俺の体を労ってやらねば

「バーガーだな、紗奈も食うか?」

「食べたい、でも大丈夫?最近ここの治安悪いけど…」

「あー大丈夫じゃね?」

流石に8人も魔王を倒した身としては不審者の退治なぞ朝飯前だ

お気に入りのピアスをつけて俺はシャワーを浴びてからジーパンとお気に入りのジャンパーを羽織った

俺が異世界で過ごした2年はこちらの世界だと二ヶ月程度だった、俺の両親は学校の進級手続きなどをやっていたおかげで学校には在籍できている。後で怒られるの確定だが電話で感謝せねば

あと問題があるとしたらバイト先だ、二ヶ月もバックれたとなればクビが飛ぶだろう

「いや、でも一応は行方不明扱いだしそこら辺は大丈夫か?聞いてみるしか無いなー」

シャワーから出た俺は鏡に向かった、異世界の仲間から自然薯やら骸骨みたいと言われた細身の長身の俺の体。異世界で筋肉やらもついたがそれでも細身は変わらない

他の人よりも消化と吸収が早い上に少食だったためだ

服を着て俺たちは外に出た、今は4月23日でまだ冷える。星が頭上で輝き隣の家などから様々な料理の匂いが届いてくる

「ありがとな、俺の家庭菜園とか水やっててくれて」

「うん…でもごめんね、病気とか虫とかわかんなくて大半が…」

「しゃーないしゃーない、三割は無事だしただの趣味だから」

庭の煉瓦で囲われた畑ではトマトなどがなっている、だが大半は葉が変色していたりする

「ま、店で食って何があったか説明するわ」

二つの足音が進んでいくと4つの足音が増えた、俺は沙奈の腰に手を回し警戒を強める

この街の治安は俺が異世界にいく前は良かったのだが本当に悪くなっているようだ、グラフィティなどが塀に書かれていたりして飛び出しの注意書きはべこべこに蹴られたのか凹んでいる

「なぁーそこのお兄さん、ちょっとさぁお話ししようよ〜」

「ンすか」

話しかけてきたのは金髪の男だった、ピアスをジャラジャラとつけており瞼や舌にもピアスがついている。後ろの連中も電子タバコを蒸したりパーカーで目元を隠しているが鉄パイプを持っていたりする

「いやぁ、俺たちちょっとお金に困っててさ。恵んでくれねぇ?」

「お断りします〜いくぞ、沙奈」

沙奈を抱き寄せて足速に去ろうとしたのだが肩を掴まれ頬を殴られた、本当に日本かここ?

「っつう。んだコイツ!固すぎだろ!」

殴った側の男が痛みで音を上げる、七英雄の一人であるガーディアンのスキルである防御力上昇のおかげで生身でも鉄と同等の硬さを得ていたためだ。最も魔王たちは鉄なんて軽く真っ二つにできるため気休めだったが

俺は金髪の男の顔面にアッパーを食らわせて塀に押し付けた、異世界の酒場でよくやっていた冒険者同士の殴り合いで学んだ技だ

殴り合いのルールは二つ、殺さない事とスキルは使わない事だ

防御力上昇はなかった事にしよう

「クソっ、コイツ!!」

鉄パイプを持った男に向けて金髪を投げて視線を誘導してから背後に回り背骨と横腹の間を殴る、筋肉の筋がずれるのと殴られる痛みのダブルパンチで初めて受けた時はガチで痛くて死にかけた

「グア!」

「で、残りのお二人さんはどうする?」

死屍累々の二人を見て残りは逃げていった、俺はそれを見て沙奈の元に向かった

「なんか…強い…」

「これも説明するよ」


仕事帰りのサラリーマン二人とカップル1組だけがいる大手チェーンのバーガーショップで俺と沙奈は席に腰かけて話していた

空になった紙コップとバーガーの包み紙がテーブルの上に転がる

「てなわけ、楽しい楽しい異世界から戻ってきましたー」

「本当なの…?」

「マジマジ、ほら」

空になったコップに俺は水魔法で水を注いでいく

「じゃあ魔王との戦いって?」

「あーそこかぁ」

魔人の魔王を除いた7人の魔王

炎牙帝と呼ばれ全てを焼き尽くそうとした狼、炎狼

全てを飲み込む巨大な水でできたタコ、ゴーストクラーケン

全てを置き去りにするほどの速さを持つワイバーン、カイザーワイバーン

千年鉱床にすみ自律し魔法を無効化する宝石の体を持ったゴーレム、クリスタルゴーレム

吹雪や雪崩と評される数々の剣技を持った吸血鬼の王、オーキッド

竜骨山に住み竜の骨に取り憑いて暴れた最古のスライム、エンシェントスライム

無限を生み出し世界に雷を与えたドラゴン、ウロボロス

「どれも大変だった…」

しみじみと思い出す、炎狼は全身火だるまになりかけて、ゴーストクラーケンは津波に巻き込まれて、ワイバーンは大気圏近くまで連れて行かれて、クリスタルゴーレムは魔法が効かなくて、オーキッドは力強い大剣と蓮撃の双剣の切り替えが早くて、エンシェントスライムは足場が悪いのに相手は強い竜とかを復活させて空から攻撃してきて、ウロボロスは遠くから雷で攻撃してきて近づけば電磁石で武器が取られて…

「よく生きてたな、俺…」

七英雄が遺したのは対抗策だけではなく、武器や防具…そして責任だ

英雄達は自らの名を捨て、ソードマン、アーチャー、ガーディアン、エンチャンター、メイジ、アサシン、サムライと名乗った

7属性全てを纏わせれる剣、半径100キロ内なら必中の弓、城壁と同等の防御力を持つ盾、バフやデバフに特化した杖、防御魔法や攻撃魔法に特化した長い杖、毒を無限に生成できるナイフ、時間と空間おも切り捨てる刀

この7つの武器とスキル、そして異世界に点在するダンジョンで得た特殊な能力を持つアイテムを使い俺は魔王と戦っていた

同じ轍は踏まないというが俺の場合他の英雄の力で轍を踏み潰していたが

「ご馳走様、さってと明日からどうするかねぇ」

俺はチーズバーガーを食べ終え包み紙を丸めた

「とりあえず、警察行くのが一番じゃない?」

「だなぁ、そしたら学校に説明して…バイト先にも連絡して…そっから2日くらい休みもらって久しぶりの世界を遊ぶか」

「私も一緒にいて良い?」

沙奈はバニラシェイクを飲みながら質問してきた

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