第25話 語られた未来
ガラスが割れた。
いつも母さんがきれいに磨いていたショーウィンドウが右から左へと音を立てて粉々に。
『ボヌール・ココン』の看板が勢いよく落ちる。
ところどころの建物がけたたましい音を出し、沈んでいく。
闇に侵略されていく様子をただ息をのんで見ているしかできない。
逃げろ、逃げろ、とあちらこちらから金切り声が上がる。
悲鳴が上がり、響き渡る泣き声が地獄の絵図を物語っていた。
その生き物たちはなにがそんなに面白いのか、奇妙な声を上げ続け、慣れ親しんだ街を危機として崩壊し続けていた。
(やめて……)
黒い影達は笑っている。
姿は人間なのに、どこまでも開く口角を上げて。ゲラゲラと笑う。
(やめて……やめてやめて……)
わたしたちの街のシンボルだった時計台が崩れ落ち、絶望の色とともに少しずつ少しずつ砂埃が辺り一面を染めていく。
世界の色が失われていくのが目に入った。
嫌な色がこちらに迫っていた。
『………』
声にしたくても、声が出ない。
わたしは、ここにいないキャラクターだから?
わ、わたしは……
『我が名は美琴。神に仕えし巫女である。大地の神よ、我に力を与えよ』
突然、頭上から澄んだ声が聞こえた。
凛としていて、まっすぐその声は響いていた。
『闇を祓え、雲を祓え、悪しきものを葬れ! シャイニング・バリア!!』
濁った空にまばゆい光が走る。
そこからシュッと音を立てるようにして、霧が晴れ、空の色を青く染めていく。
それは、希望の色だった。
(ああ、あなたが……)
踏ん張れなくなって足から崩れ落ちる。
(待っていた)
目の前に立ちはだかり、素敵に笑った少女を見て、ぐっと拳を握ったら涙がこぼれた。
(ずっと、待っていたの……)
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「来たぁぁぁぁあ〜っ! 美琴ぉぉぉお!!」
ぼんやり残る記憶の中で、同じように愛理がガッツポーズをして盛大に喜んでいる姿が浮かんだ。
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