第6話 わたくしと教団のお孫様
本日は教団のお孫様、トレント様との対談です。
もちろんアトリオ様もご一緒です。
王子の婚約者でよかったですわ。
面談が難しい方々ともお会いできる。
アトリオ様、推せるだけではなく王子ですし有能ですわ。
さすがはわたくしのアトリオ様!
トレント様は教団の施設から出ることが難しい身とのことで本日はドッキリ謎だらけ教団の施設にお邪魔させていただきました。
わたくしも異世界転生などという前世で流行っていた事案を身に受けた者。
神という存在は少なからず信じておりますわ。
ええ。こちらの世界の神とは違っても。
通された室内にて出されたお茶菓子と紅茶をパクパク摘まんではアトリオ様に適度にしておかないと行儀が悪いと注意されていた時でした。
トレント様がお越しになられました。
トレント様は聞き存じていた年齢より幼い印象をお受けになりました。
元からわたくし達よりも年下だからでしょうか?アルフォンソ様とはまた違った庇護欲を掻き立てられます。
年下キャラ。いいですわ!今までのメンバーに足りないポジションですわ!
これはぜひともわたくしのアイドルユニットへ参加していただかなくては!!
意気込みも新たにわたくしはアイドルについてのレポートと資料をトレント様にお渡ししました。
「トレント様!アイドル、やってみませんこと?」
「立場上僕も同席してますが、王家と全く関わりのないお話ですし、いやなら断っていただいて大丈夫ですよ」
アトリオ様がやんわりと辞退を促します。
くっ、敵が身内におりましたわ。
ですが、わたくしは推しには寛容なアイドルオタク。
パパラッチされても写真集に当時の彼女の名前をSpecial thanks!!と記載され暴露されても怨念を撒き散らす程度で攻撃的にはならず推しを憎みきれず、許してしまうタイプのオタクです。
アトリオ様のことももちろんこの程度で憎みはしません。
そもそもお嫌でしたら断っていただいていいのはわたくしにとっても本心ですし。
嫌々ながらアイドルをされてはこちらとしても困りますわ。
分厚いレポートと資料を読み終えたトレント様は一言仰いました。
「…洗脳?」
胡乱げな眼差しでトレント様に訊ねられますがアイドルとは洗脳ではありません。
「魂の救済ですわ!」
「怪しい教祖って大体そういうこと言うんだよね」
完全に怪しまれておりますわ!何故!
「大体この推しとは神のように崇められる存在って教団に喧嘩売ってきてるんですか?教団が認める神以外を神と呼べと?」
「それはちがいますわ、トレント様。推しとは存在自体がありがたく、拝みたくなるもの。決してこちらの教団の認める神とは存在が違いますわ」
「僕らの教団の神がありがたくなく、拝みたくなる訳じゃないと?」
「違います!違いますわ!そもそもの対象が違います!わたくしにとってのアイドルとは偶像、人間として存在しながらアイドルとして人々に夢や希望を与える存在なのです!」
「それなら僕らの神でも良いと思うのだけれど」
「こちらの神では歌って踊れませんわ」
「それは重要なのですか?」
「もちろんですわ!アイドルが歌い踊り、ファンはライブ会場で各々の推しを推して生まれるあの一体感!あれは感じた者にしか分からないものですので説明しづらいのですが、あれをこちらの世界の方々とも共有したく、わたくしはアイドルユニットを結成したいのです!そのためには浮世離れした天然系不思議ちゃん弟枠としてトレント様が必要なのですわ!」
アイドルユニットとして、数多くのタイプを揃えたいところですわ!
「なんだか貶されてるのかよく分からないけれど…」
「ロゼッタ嬢の奇行、本当に申し訳ありません。トレント様」
王家と教団は持ちつ持たれつの微妙な関係ですからアトリオ様も細心の注意を払われます。
それより奇行とはなんですか。まだそこまでおかしな言動をした覚えはありませんわ。
「まぁ、他教の教えを学ぶのも勉強のうちになるかもしれない。そのアイドルとやら、お祖父様に話をして許可が出たらやってみてもいい」
「ありがとうございます!トレント様!!」
90度きっちりお辞儀をしてトレント様にお礼を申し上げました。
アトリオ様は最後まで嫌なら断ってもいいと頑なに進言しておりましたが、リーダーが士気が下がるようなことはお止めになってほしいものですわ。
数日後、トレント様からお祖父様の許可が出たとお手紙をいただいた時は小躍りしてお母様からレディがはしたないと叱られてしまいましたわ。
ですが、これでわたくしのアイドルユニットも残すところあと一名。
完全完璧なアイドルユニットにするためにわたくしは持てる力をすべて使いましょう!
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