第9話引っ張る力

力がけん引していく。先へ、先へ、背中を守る気配。意志と忘却のはざま。力とは純粋に、振るわれてはいけない。必ず、法と支配のもとでなさられなければいけない。ただ、助けたいという感情は、そのままでは意味がない。振り返ることはしてもいい。しかし、助けるべき時、選択を誤れば、情に流される。そのまま、大きな力に押しつぶされて、砕かれる。無数の悲鳴がこだまする。それは、弱さを優しさと取り違えたから。進むべき道は、権力の陶酔ではない。伏せられた苦しみが、世に現れる時、虐げられる魂が、解き放たれる。勇気とは忍耐である、とボルヘスは言った。

自分自身の法、掟では、世界は回らない。世界を、そして、隣にいる人を守ることは、自分自身が世の法を守ること。それは当たり前のことだ。そして、情に流されたなら、死を招く。情熱はもってもいいけど、ただの情は弱さに過ぎない。

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