第6話呼吸

 信号が赤に変わり、進んでいく、街の空には、紺碧の青空が、黄色い、バイク。それから、囁き合う、恋人同士の交流。地面に寝そべり、愛を語り合う、走り抜ける少女の鼓動。運命を受け入れた、白き使者は、躍動する、心音の、琥珀色の土。それを仕上げる、ボールの音。野球をしていた。子供たちの快音を響かせる、バットとボールの触れ合う音、カツリと鳴る、音。そして、重なり合う二つの影。残照、風の音、黄金色に光る、燃え立つような、新緑の陰り。そこから、発する、光のスパーク。七色に飛び散る、七色の逆流。そして、音ははじけて、子供の声になる。生まれたばかりの赤子を抱く、アルルカン、その瞳には涙が浮かび、慈悲の心で、街を行く。しかし、遠すぎる、日向ぼっこをする、ラッコのような赤ん坊。すると、泉水の影に、一体の精神を宿した、波が現れた。それが一気に加速して、風鈴の音を鳴らす、夜風の、夜霧を導く、行進。パレード、天国的な長さの歌が、様々な所から、一斉に矢となり襲ってくる。それはハートマークのついた愛の矢。刺されば狂おしい悶絶か、あるいは偽りの救いか。答えは出ない。永久に。しかし、それを探すのが、真のメシア。怒り唸り、飛び散るheartの雨の先、降り続ける悲しみに震えた少女が、彼にこう言った。「君は、誰?」虚空の散開は、出会いの三回、それは死者の悼む心。誰も理解はできない言葉。先の先にある、トンネルの、出口。夢想家が言った。「愛などというものはない」現実主義者はこう言った。「君は何かを取り違えている」

 すなわち、「愛」などというものを口にしたときから、「愛」は終わっていた。人間のみじめさ、愚かさ、そして、優しさ、清らかさ、根底にはエゴイズム、そしてナショナリズム。なおかつリズムに乗った、リアリズム。そして、何もない。愛、それから、行為。行為は、誰も幸せにはできない。思いはそれだけ、重くなるほど、重くはなく、むしろ背負いやすい、十字架。ただ、信じていればいい。ハートを犠牲になった、人々の苦しみを、遠くで鳴る砲撃の痛みを、君は偽善者か? 愚かな夢想家よ、君は、何者? そう人類の破壊者、いな、メシア、はたまた、ただの詩人か音楽家。写真に残せない、偽善の欲望は、真の愛かそれとも、偽りの笑顔か。君ならどういう、イエスの墓よ。十字を切って、空を見上げれば、軽い魂の、鳥の群れ、そしてこういう、すなわち、痛み。理解するとは歌うようなもの。歌うとは、絞り出すようなもの、それは喉が避けるほど、積み重ねた、苦しみの言葉たち。君はどう言う? 偽善。すなわち愚かな絶望。あるいは、エゴイズム。人間のうちにある、浅はかで、揺れるようなリズムの混在が、月下に揺れる本能に情熱の火を灯す。それから、どこへ行く、地の底、天の先、あるいは霧散した、清らかな命たちのもとへ? 違う、という。君は君の道、僕たちの、神話、冒険に出かけた少年の、火が消えて、夜明けになれば、ただの日常が待っている。君は、ドラマの主人公、違う、本当の下に隠れた本当の心は、きっと清い。しかし、裏腹で傷みやすい。繊細なガラスのような破裂。そのまま、失われていく、子供たちの女性たちの命。尊い。世界は、果てしなくエゴと殺略に満ちているが、歌わねばならない。そう、君の歌は、君の歌。

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