第2話 出会い①
「もう私...水樹くんのことわからないよ...」
学生時代から付き合っていた彼女に言われた。
彼女と別れて1年と5ヵ月経つが、過ごした日々は昨日のことのように思い出せる。
自分でも嫌になるくらいおれは最低だった。
彼女がおれを大事にしてくれていることに甘え、何度も、何度も......
気づかないうちに彼女を傷つけていた。
居て当たり前の存在になっていたのだ。
大事に思っていた。
大切に思っていた。
「思っていた」だけだった。
おれはきっと人と結ばれては駄目なのだろう。
エントランスの入り口が開き、外から女性が中へと入ってきた。
「あの子じゃないか?今日から越してくる子って」
出射さんはそう言い、首元のネクタイを整えながら彼女の元へ歩み寄る。
おれも挨拶しに行こうと出射さんの後を追う。
「あの、ここの住人の方たちですか?
今日から越してきました。吉村です。よろしくお願いします。」
「...あ..」
言葉に詰まってしまった。
少し幼い顔で茶髪のミディアムヘアー。元気で活発そうな印象であるが、仕草は非常に上品で話し方もおとなしい。化粧は薄め、服装も春をイメージしたのか薄ピンクのロングスカートに白黒のボーダーのロングシャツ。デニム素材の上着を羽織っている。
彼女の外見と服装を長々と綴ってしまったが、一言でいうとすごく可愛い。
「よろしくね。ぼくはここの住人、203号室に住んでいる出射です。...で、こちらの少し冴えない青年は管理人の小野谷くん。実は彼も一昨日来たばかりなんだ。」
おい出射。気を付けて発言をするんだな。おれの左ストレートが火を噴くぞ。
と心の中で出射さんに言う。
「はじめまして。管理人の小野谷です。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「ここのマンションは共有部分が多く、少し大家が小うるさい方ですので入居された方には改めて施設の説明をしていたのですが、荷造りなど落ち着きましたら102号室まで来ていただいてもよろしいですか?もちろん今日じゃなくても結構ですよ」
「え?いきなり部屋にはちょっと...(照)」
「出射さんには聞いてません。それに部屋には入りませんよ。説明は共有部分で行いますから」
「わかりました。ありがとうございます。」
「そうそう。さっきね、小野谷くんと吉村さんの歓迎会を開こうかと話していたんだよ。吉村さんはどうかな?ほかの住人と仲良くなれるきっかけになると思うんだけど」
ん?まさかおれはすでに行くことが決まっているのではあるまいな。
「わざわざありがとうございます。ご迷惑じゃなければ参加させてください。」
「ノープロブレムさ。日時だけどいつ頃空いてそう?小野谷くんやほかの人の都合にも聞くけど」
決まっていたのね。2人が日時の話をしている中、おれの脳内にはエヴァンゲリオン、ヤマト作戦時のBGMが流れていた。
今日初めて会った2人。
ピュアシャイボーイとして名を馳せたおれは、この会に参加してはならない。
面倒くさいことは避けるのは人の常だろう。
しかし出射さんの手により歓迎会を開く流れとなってしまっている。
志保も恐らくこういった会には積極的のはずだ。
ここをどう切り抜けるか.....
エトワール 莉理多 @ryrbeyta
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