第14話「決死の脱出」
バドスの一撃必殺の攻撃でレイジもアベルも大ダメージを受けた。
バドスのアッパーにより顎を砕かれたアベルはその場で倒れる。
アベル……。
レイジは自分のダメージも残っているが、何とか立ち上がりアベルの元へ歩み寄る。
「アベル!?」
一般兵士と戦っていたジークもアベルの元へ駆け寄る。
「おい!アベル!しっかりしろ!!おい!!」
だが、アベルは気絶していた。
「アベルが気を失う程のダメージなんて……奴め只者じゃねぇな……」
「君、アベルと他の仲間達を連れてこの基地を脱出してくれ」
「え?でも……」
「君達の宇宙船もメンテナンス自体は終了してる。あのクルドって奴も後は点滴を打って安静にしていれば治る。だから早く」
「しかし……この状況で俺達が居なくなったらあんた達は……」
「大丈夫。ここに集まったのは宇宙の平和を願う勇敢な戦士達だ。そう簡単にやられはしないさっ、早く!」
「分かった……」
「おいおい……面倒くせぇから早くしてくれよ……次はどっちが死ぬんだ?」
ジークはアベルを背負う。
「奴は俺が引き付ける。アベルを頼んだぞ」
「ああ……」
そしてレイジは前に出る。
「おいテメェ!さっきはよくもやってくれたな!!だが、お前の技は見切った!次は喰らわねぇからな!!」
そう言ってレイジは再びバドスに挑む。
まだ先程のダメージは残ってる。
くっ……内臓が痛てぇ……長くは保たないな……。
ジークはアベルを背負ったままスペースドラゴン号のドックに向かって走り出す。
ペンデ基地のあちこちでまだ沢山の戦士達が戦闘を繰り広げている。
さっき会ったゴウラを始めまだ名前も知らない多くの戦士達……。
そんな彼らを置いて自分達だけ脱出するのは忍びなかった。
だが、ジークはアベルや仲間達を救う為、振り返らず一心不乱に走り続けた。
幸い他の戦士達の善戦のお陰でスペースドラゴン号があるドックの方にはまだ敵が居なかった。
スペースドラゴン号に乗る前にマルツーの充電コードを抜いてマルツーにも呼び掛けた。
「マルツー来い!ここを脱出するぞ!」
《了解》
マルツーはジークに付いて行く。
操縦室に入るとマルツーを操縦席に座らせスペースドラゴン号と接続させる。
「マルツー、お前は発進準備を急げ!俺はクルドとミッカを連れて来る!」
そう言いながらアベルを座席に座らせシートベルトで固定する。
《了解》
ジークは一度スペースドラゴン号を降りクルドとミッカを迎えに行く。
その頃、非戦闘員が避難しているシェルターでは……。
「外……随分騒がしくなって来たわね……」
ルルがそう呟く。
「アベル達も戦いに参加してるのかしら……」
「アイツらなら止めても戦うだろうぜ……」
目を覚ましたクルドが起き上がる。
「クルド!大丈夫?」
「ああ、お陰で随分楽になった」
「君、まだ安静にしてなきゃダメだよ……」
医者のケーシがクルドに声を駆ける。
「もう大丈夫さ。それより、戦いが始まったなら俺も行ってくるわ」
「ダメよ!まだ安静にしててって言われてるでしょ!!」
ミッカは必死にクルドを止める。
その頃ジークはシェルターに向かっていたがディザスターの兵士と遭遇。
「止まれ!」
兵士達はジークに銃を向ける。
「邪魔だ!どけぇ!!」
ジークは『黒竜』を抜き一瞬で兵士達を斬り倒す。
「ったく、こっちは急いでんだよ……」
「だからって人の部下を傷付けられちゃ困るなぁ……」
そう言って現れたのはディザスター第2戦闘部隊副隊長ゾラス。
ゾラスはジークの背後から現れた。
なっ……何だコイツ……気配を全く感じ無かった……。
ジークはこの気配を感じさせない相手に危機感を抱き急いで距離を取る。
「まったく……ウチの隊長は面倒くさがりだから後始末が大変だよ……こんなに強い奴を生かしとくなんて」
「へぇ、割と俺を評価してくれてるんだな」
「当然だよ。隊長が嫌いな雑務は全て私に回って来るんだ。君達の情報も頭に入ってるよ……ジーク君」
ゾラスは腰の剣を抜いた。
「私も一人の剣士として君と戦ってみたいと思ってたんだ。相手して貰うよ……」
「ったく……急いでるってのに……まぁ、剣士として敵に背は向けられないな」
ジークも『黒竜』を構える。
「ほぉ、それが宇宙名刀シリーズ:アビドス星産の名刀『黒竜』ですか」
「へぇ、詳しいな」
「私も剣士として刀には興味がありましてね。私が勝ったらその黒竜は私が貰い受けますよ?」
「悪いがコイツは俺の大事な刀だ。誰にもやれねぇよ!!」
そう言うとジークはゾラスに斬り掛かる。
ゾラスはジークの攻撃を受け止める。
「流石……中々良い太刀筋だ……だが、私の方が格は上です!」
ゾラスはジークの攻撃を弾き返した。
「ぐあっ!?」
そしてゾラスはジークに剣を向ける。
「私の愛刀、宇宙名刀シリーズナンバー17鮫牙(さめきば)の錆にしてあげますよ」
「宇宙名刀シリーズナンバー17だと!?」
「そう、宇宙名刀シリーズの中でも1から100までのナンバリングがされている希少な名刀……その1つがこの鮫牙です」
「確かナンバリングされてる宇宙名刀シリーズは数字が小さい程強力なんだよな?」
「ええ、良くご存知ですね」
「なら……んな中途半端な数字でイキってんじゃねぇ!!」
ジークはゾラスに再び斬り掛かる。
2人の剣がぶつかり合い火花を散らす。
激しい攻防を繰り広げる2人……。
だが……。
「くっ……刃毀(はこぼ)れがすげぇ……」
「お互い良い勝負が出来てると言う事ですよ。だが……」
ゾラスの鮫牙はボロボロになった刃を削ぎ落とし新たな刃に代わった。
「何っ!?その剣自分で刃毀れを直せるのか!?」
「ええ、鮫牙はその名の通り鮫の牙の如く何度でも刃が生え代わる……そして……常に万全の状態で相手を斬り裂くのです……」
そう言ってゾラスはまた気配を感じさせずにジークの間合いに入った。
「しまっ……」
そしてゾラスはジークを斬り裂いた。
「ぐわぁぁぁぁっ!?」
「名刀黒竜の使い手もこんなもんですか……その程度では折角の名刀の名が泣きますよ……」
だが、ジークはフラつきながらも立ち上がった。
「何っ!?」
「テメェ……言いたい事言いやがって……」
「馬鹿な!?鮫牙の一撃をモロに食らって立っていられる訳が!?」
「お前は強い……だからまた戦いてぇ……だから……今ここで死ぬ訳には行かねぇんだよ……だが今は……仲間の元に行くのが先だ……邪魔すんな!!」
「!?……フッ……なるほど、見事な剣士だ。良いでしょう。次に会った時はその命と黒竜を貰いますよ……」
そう言ってゾラスは去って行った。
だが、ゾラスは一度足を止める。
「あっ、そうそう。今回は見逃しますが、あなた達の行動は報告させて頂きます。これからあはた達を潰す為にディザスターは本格的に動くでしょう。せいぜい次に会う時までしなないで下さいね……」
そう言って再び歩き始めゾラスは去って行く。
「……ミッカ、クルド……」
ジークはフラつきながらもシェルターに向かって歩みを進める。
そして、ようやくシェルターに辿り着く。
そしてシェルターの扉を叩く。
「ミッカ!クルド!居るか?」
「ジーク!」
「あなた達の仲間ね……今開けるわ」
そう言ってルルがシェルターの扉を開ける。
「ハァ……ハァ……ミッカ……クルド……直ぐに脱出するぞ……」
「ジーク!?その怪我どうしたの?」
「直ぐに手当てをしましょ!」
とルルは勧めるが……。
「そんな時間はねぇ……アベルとマルツーはもうスペースドラゴン号に乗せてる。後はお前らだけだ……直ぐに出発するぞ」
「え?」
奥からクルドが出てくる。
「もう、行くんだな」
「ああ……急げ」
「分かった、行こう」
ミッカ、クルド、ジークはスペースドラゴン号のあるドックへ向かう。
怪我をしたジークに今度は肩を貸すクルド。
「悪いな……」
「なーに、お互い様さ」
順調にドックへ近付いて行くジーク達……。
「おかしい……敵が全然居ねぇ……」
「もう、皆倒しちゃったんじゃない?」
「だと良いが……」
その途中、倒れているレイジに発見。
「アイツは……レイジ!レイジ!」
ジークはレイジに駆け寄り声を掛ける。
「き……君か……仲間と……合流出来たんだな……」
「ああ、あんたは大丈夫か?」
「流石にヤバいかもな……バドスはこの基地に爆弾を仕掛け兵士達と共に脱出した。君達も早く脱出しろ」
「あんた達はどうするんだ?」
「もう動ける奴も殆ど居ないだろう……悔しいが俺達はここまでだ……」
「そんな……」
「レイジさん!しっかりして!私達と一緒に……」
「俺はこの基地の仲間を見捨てて自分だけ助かるなんて出来ない……君達は……アベルを頼むぞ……」
そう言ってレイジは目を閉じた。
「レイジさん!?レイジさん!?」
ミッカは必死に呼び掛ける。
だが、その時、基地内で爆発が起きた。
「くっ……もう時間がねぇ、ミッカ、クルド急ぐぞ!」
ジーク達は急いでスペースドラゴン号に向かう。
だが、その間にも基地のあちこちで爆発は起きる。
その度に衝撃が走り基地内が大きく振動する。
ジーク達3人は何とかスペースドラゴン号に乗り込んだ。
「マルツー、戻ったぞ!直ぐに出発だ!」
《了解しました。スペースドラゴン号発進します》
マルツーの操縦でスペースドラゴン号は発進。
爆発を潜り抜けペンデ基地を脱出。
その直後ペンデ基地は大きな爆発が起こり完全に破壊された。
「ギリギリ……だったな……」
そう呟くとジークも倒れた。
ジークもギリギリだった。
続く……。
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