第9話「雨の惑星のポンコツロボット」

ここは惑星ボノア。

一年中雨が降りしきる雨の惑星だ。

この星は工業技術が発展し、雨で水が豊富にある為、宇宙を旅する者達にとって外宇宙に行く直前の休憩が出来るターミナル惑星として人気だった。

しかし、巨大な機械の街を少し離れるとそこはスクラップになった機械が山積みされているだけの寂しい場所となっていた。


宇宙を旅するスペースドラゴン号のアベル達は惑星ポッカポルカを出て5日が経過していた。

「いよいよ、外宇宙ね……でも、外宇宙に出る前に燃料のチャージと買い物をして来ちゃいましょ」

「なんだ?まだ外宇宙行かないのかよ?」

「外宇宙に出ちゃったら文明のある星までどの位掛かるか分からないでしょ?だから、出る前に準備をしっかりしておくのよ」

「はぁ〜なるほどね」

そこにクルドがやって来た。

「おーい、飯出来たぞ」

「おっ!サンキュー、クルド!」

「あれ?ジークは?」

「多分トレーニングルームじゃない?」

「ストイックだねぇ」

その頃ジークは……。

やはりトレーニングルームに居た。

ジークは素振りをしている。

もっと強く……もっと強くならなけりゃ……俺はこの先アイツらの足を引っ張っちまう……。

そんな想いで必死に『黒竜』を振るうジーク。

「ハァ……ハァ……ハァ……ダメだ……こんなんじゃ……」

そこにミッカがやって来る。

「ジーク、ご飯出来たよ……」

「おう……先に喰っててくれ。汗かいちまったからな……シャワー浴びてから行く」

「うん……ねぇ、ジーク。怪我したばっかりなんだからあんまり無理しちゃダメだよ?」

「分かってる……でも、この先にもっと戦いは厳しくなる……俺が足を引っ張る訳には行かねぇんだ」

「ジーク……私なんか、何も出来てないよ……」

「お前にはお前にしか出来ない事があるさ。俺は俺が出来る事をやる。それだけだ」

「うん……じゃあ、先に食べてるね」

「おう!」


アベル、ミッカ、クルドは先に食事を始める。

しばらくしてジークがやって来る。

「悪い、待たせたな……」

「遅いぜジーク。お前の分来て食っちまったぞ?」

アベルがジークをからかう。

「はぁ〜!?」

「ハハハッ、冗談冗談」

「テメェ〜……」

「待ってな。今、温めるから」

そう言ってクルドが立ち上がる。

すると……。

「おっ!見えてきたぞ。惑星ボノアだ」

「へぇ〜結構大きい星だなぁ」

「ああ、惑星ボノアは外宇宙に行く前の最後の準備をするにも良いと思うぜ」

「本当!じゃあ、惑星ボノアに寄って行こう!」

「よーし、じゃあ、あの星に進路を取るぜ!」

アベルは操縦席に座る。

スペースドラゴン号の進路を惑星ボノアに向ける。

ジークはその間に食事をする。


スペースドラゴン号が惑星ボノアの雲を抜ける。

「うわぁ……雨だぁ……」

「この星は一年の殆どが雨の星だからなぁ。この星で晴れの日に出くわしたら相当運が良いぜ」

「でも、一年中雨なら作物も育たないんじゃない?」

ミッカが尋ねる。

「ああ、だからこの星の住人は地下に田畑を作って人工的に作物を作ってる。更に湿気対策に食料を加工する技術も発展してるから長旅をする前の準備にピッタリな星なんだ」

クルドが惑星ボノアについて解説する。


「よし、着陸するぜ」

アベルはこの星のスペースポートに連絡を取り着陸の指示を仰ぐ。

指示に従いスペースドラゴン号は無事着陸。

アベル達は惑星ボノアの地に降り立った。


惑星ボノアは今は夜の様で外を見ると真っ暗だった。

この星の街は雨でも快適に過ごせる様に街全体が透明なドーム状の屋根に覆われていた。

「なるほど……この星の人達は雨と上手く付き合ってるのね」

「あぁ、だが、この街を一歩出ると寂しい光景が広がってるぜ」

そう言ってクルドは街の外れの方を見つめた。

「そういえば、クルドはこの星に来た事あるの?」

「ああ、賞金稼ぎやってるとあちこちの星に行くからな……」

「そっか……私は今まで故郷の星から出た事無かったから羨ましいな……」

ミッカは少し寂しそうな顔で言った。

「でも、今は違うだろ?これからは沢山の星に行けるさ」

その時、ミッカは何かを見つけた。

「あっ!」

ミッカは突然走り出した。

「っておい……話聞いてんのか?おいって……」

「どうした?」

手続きを終えたアベルとジークがクルドの元へやって来た。

「ったく……人が良い事言ってる時に……」

ミッカは何を見つけたのか?

ミッカはただただ、一心不乱に走った。

スペースポートを抜けるとそこは直ぐ街の外れで、ドームの無い雨が降りしきる地帯だった。

「……やっぱり……」

ミッカは雨でびしょ濡れになり、壊れ掛けた小さなロボットを見つけた。

スクラップにされた古いロボットの様だ。

ミッカは雨の中必死にそのロボットを持ち運ぼうとするが、スクラップと言えど重いロボットをミッカ一人で運ぶのは無理だった。

そこへ、アベル達が追いついて来た。

「おーい!ミッカ!どうした〜?」

アベルが声を掛けるとミッカは振り向いた。

「あっ!丁度いい所に!手伝って!」

「え?」

アベル達もミッカに強引に手伝わされ雨でびしょ濡れになりながらロボットを街の中に運んだ。

「ったく……どうしたんだよ?ミッカ……」

「ごめん……何かこの子放っておけなくてさ……」

「でも壊れてんだろ?捨てられてんじゃん」

「私なら直せるかも知れない!そしたら……ゴミじゃなくなる……」

そもそも機械いじりが好きなミッカはこのスクラップのロボットを放っておけなかったのだろう。

しかし、この街の警備員らしき男が声を掛けて来た。

「ちょっとちょっと君達……スクラップを街に入れられちゃ困るよ……街が汚れちゃうだろ!」

「あ、あの……この子修理すればスクラップじゃなくなると思うんです!」

「ダメダメ。この星でスクラップになったロボットはこの星の技術でも、もう直せないって事だからどうにもならないんだよ。それはただのゴミなの」

「そんな……可哀想じゃないですか!」

「あのね……ロボットは感情を持たないの。捨てられて悲しいとかクソッ!人間め!とか思わないから。役目を終えたロボットはそうなる運命なんだよ」

「そんな……お願いします!一度だけ私に修理をさせて下さい!」

ミッカの真剣な訴えに警備員も渋々了承した。

「分かった……その代わりそのロボットの泥で汚れた街は掃除して行ってよね。この星の人達は街が汚れるのが嫌いなんだから」

「はい!ありがとうございます!」

そして、アベルとミッカはロボットをスペースドラゴン号に運ぶ。

そして、ジークとクルドは……。

「で……何で俺らが掃除しなきゃならねぇんだ……」

ジークが文句を言う。

「まぁ、まぁ、良いじゃない。ミッカちゃんの優しさに免じてさ」

クルドがジークをなだめる。


雨でびしょ濡れになった為、まずはミッカがシャワーを浴びる。

「はぁ〜温まった〜」

ミッカがシャワーから上がるとアベルがロボットに付いた泥や汚れを落してくれていた。

「アベル……そのロボット綺麗にしててくれたの?」

「ああ、折角シャワー浴びたのにまた汚れたら意味ないだろ?」

「ありがとう……まぁ、修理してる内にまた汚れるとは思うけどね……」

だが、ミッカはアベルの気遣いが嬉しかった。

ミッカは早速工具を持ってきてロボットの修理に取り掛かる。

その頃掃除を終えたジークとクルドが戻って来た。

「ふぅ〜……掃除終わったぜ……」

「あっ!ありがとう二人共!3人ともシャワー浴びて来たら?」

「そうだな……俺らもシャワー浴びて来るか」

「だな」

「やれやれ、何で野郎3人でシャワー浴びなきゃ行けないんだ……」

「まぁいいじゃねぇか。裸の付き合いをすれば仲も深まるってもんだ!」

アベルはジークとクルドを連れてシャワーを浴びに行く。

その間ミッカはロボットの修理を続けた。


その頃、惑星ボノアに近付く巨大か戦艦が一隻。

その戦艦にはディザスター帝国鉄人兵団総督のガルモとその部下達数名が乗っていた。

部下の一人がやって来る。

「ガルモ総督!間もなく惑星ボノアに到着します!」

「よぉし……全員着陸に備えよ!」

ガルモは何故わざわざ外宇宙から惑星ボノアにやって来たのか?


続く……。










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