幕間➁ ただいまより|語り手:真間 塁|は、約1600文字分の休憩をいただきます。

子供を作るタイミング|主演:俳優天十郎が語る|

 仕事でなかなか夏梅に会えない日が続き、


【久々の垢すりタイム】


 最初は黙っていた夏梅が

「塁が蒲のところに行ったみたい。あー何十年ぶりか…」

 俺を見て嬉しそうに抱き着いてきた。


「そうだな…。一人で大丈夫か?」夏目が頷く


「おい、そんなにくっつくな。垢すりできないだろ」

「垢すりなんて自分で出来るから、やってもらわなくてもいい」


「じゃ、やんない」

「天十郎…。最近、やけくそ気味じゃないの?」


「仕方がないだろ、仕事が忙しく、垢すりタイムも中々時間が取れないし、夏梅をこの家から出すか、蒲を出すか二択だろ?膠着状態が続いているのだから、焦っているな。しかし、なんで、蒲は出ていかないのかな~イライラする」


「塁がいるからね。あの人はこの家から一人では出ていかないよ。私の可愛いべべちゃん」


「可愛いべべちゃんって俺の事か?可愛いって大の男に言うな」

「いやだ知らないの?可愛いは最強なんだからね。何をしても許してあげる。って意味なの」


「俺、何を許してもらっているのさ、だけどお前、蒲にタンスを壊させるのは、やりすぎだろ」

「だって、塁がいたんだもん」


「タンスの中にも来るのか」

「まあ、場所を選ばないのは、塁の得意分野じゃないの?」


「頭に来る」

「まあ、落ち着いて、タンスは、ベッドのお返しだから」


「なんだよ。それじゃ、俺、全然許してもらってないだろ」

「そうかも」


「お前のその天然ぶり、腹立つわ~」


 あまり、べたべたくっつかれると、雄の本能が動き出してくる。自分の中でせめぎ合いが始まる。たまりかねて


「ねえ、夏梅。子供が出来たら困らない?」

「別にいいんじゃない」


「どうしてそう思うの?俺だって失敗することはあるぞ…」


「天十郎がいなかった時は、幸せでなくても地獄でなければ、人は生き続けられる。って思っていたんだ。だけど、天十郎が来てから、幸せって勇気がない人には手に入れる事が出来ないって、わかった。それに、家族や子供を作る誓約書があるから蒲から文句は出ないよ」


「あれは、笑えたな…。うまく同意させたよ、だけど騒ぎが大きくなるだろ。なったらどうする?」

「天十郎がどうにかしてくれる」


「それはもちろんだけど」

「安心して、守ってもらっているって天国じゃない」


「天国までいくのか、そんなに嬉しいか?」


「決まっているじゃない。子供がどうしても欲しいわけじゃないけど、誰にどんな事を言われようと、嘘ばかりでも、天十郎が守ってくれる天国なら、どこにでもついて行く!」

「お前、うまい事を言うな。俺がいなくなる前提はないのね」


「もちろん」


「その自信はどこから来るのかね。で、子供はどうするの?」

「ところでさ、あの未来って子、なに?茂呂社長ってなに?」


「いや、だからさ昔の話を出すタイミングじゃなくて、子供が出来た時の事を相談しているんでしょ。そっちの方が今の俺らには重要じゃないの?籍を入れないで子供が出来たら隠し子だろ」

「はあ?違うでしょ。私は寛大な人じゃないからね」


「おい、嫉妬する男は嫌いなんだろ?お前はどうなの?自分は嫉妬深く、子供のことより昔の女の方が重要ということか?だったらどうするんだよ」


「うーんと」

「お前、ほら、考え無しだろ、気にするな仕事の付き合いだから」


「仕事って言葉でごまかされないわよ」

「しつこいな」


「知らなかったの、私はしつこいの」

「で、子供はどうするの?」


「子供は天十郎の考えでいいよ。タイミングも任せるよ。私は子供がいてもいなくても、変わらないと思う。天十郎も変化なしでしょ」

「まあ、そうだけど…。なんか、その自信ありげなところが頭に来る」


「ところで、USBに何が映っているの?」

「ああ、あれ、あたしさ、動画を隠し撮りするなんてさ、そんなに暇じゃないのね。ただ持っているだけ、アクセサリー、なんかライターっぽいでしょ?」


「どうゆう事?本当につかみどころがない奴だな…。なにがしたいんだよ」





【…】


 急に黙り込んだ夏梅を見て、俺は垢すりタイムを始めた。


 そして…。第三幕「聞けば聞き腹」が始まる。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る