第20話

「遥、体柔らかいよね?」


「またそんなこと言う!」


「や、違うよー。柔軟性」


「あー、そーですけどぉ?なんなの?」


「いろいろ楽しめそうだねぇ」


「は?」


てゆーか、私なんでこんなことしてんのよ!

秋人にのせられてる!やだもう!


ご飯もそっちのけとか、ほんと秋人なんなのよ。そして、終わると普通にご飯作る秋人。変なの。


「遥の家からここ遠い?」


「遠くないけど。でも職場は遠のいた」


「ごめん、たまに来てくれたら嬉しいな」


「やだ。ここに住む」


「え…ええ?いいの?」


「だってあんた忙しいじゃん。家のことしたげるから」


まぁ、私のできることって掃除とか洗濯くらい?料理そんなしないし。


「わぁ、ありがとう。あ、その前に婚約したんだから、遥の実家に行かないと」


「いや、ちょっと待って。それはあんたのうちからが先じゃないの?」


「大丈夫。うちは20にならないと話にならないから」


「は?でもさ」


「遥の実家どこ?明日の午前中なら行けるよ」


「え、明日?」


「うん」


「仕事は午後からだけど…あ、日曜日だしうちの親いるわ」


「じゃ、決まりー。スーツでいいかな?」


「…いつものでいいよ」


秋人にのせられて、実家に帰省。


「なに、遥…いきなり帰ってきて」


いやそうな顔をする母。


「あー…ちょっと話があって」


「お前また留学か!金はないぞ!」


金の話ばかりな父。


「違う!ちょっと、会わせたい人が…」


「はぁ?あんたが?」

「お前が?」


「うるさい!連れてくるから!」


もー、うちの親嫌なんだけど!


「はじめまして。細川秋人と申します。遥さんとお付き合いさせて頂いております」


「ま!待てよ?あなたテレビで見た!」

「え?あの若社長?」


「それは、弟です。私は兄で、子会社社長をしております」


「えー!?細川グループ?」

「なにぃ?あの有名な?」


「うるさいんだけど」


「私は遥さんと、結婚を前提にお付き合いさせて頂きたく思い参りました」


「いや、遥なんてただのバカ娘ですよ?」

「あなたまだ若いからもっとお金持ちのご令嬢がいいんじゃ…」


「いえ、私は遥さんだからこそ結婚したいと思いました」


「いや、だめよ!遥なんか行儀悪いし、頭悪いし」

「うちは金がない。遥は恥をかくだけだ。あなたには遥は合わないよ」


「なによそれ!私がなんの恥をかくっての?」


「私は、社長です。これからもっと事業拡大していく方針です。そのためには彼女の支えが必要なんです。お願いします」


「え!そ、そんな頭下げられるほど、この子はいい物件じゃ!」

「社長さん!やめてください。金とかくれてもだめですって」


「結婚は来年の1月を予定しております。父には了承済みです」


「えー!?そ、それは断れないってことですよね?」

「あの、私たちは何をしたら」


「遥さんのことをお任せ頂けたらと」


「遥、恥をかかせるなよ」


「は?」


「うちの子をよろしくお願いします」


いつの間に丸め込んだのよ!



「あぁー緊張した」


「うそだ。秋人いつも通りじゃない」


「ふふん。これでうちに住んでもなんの問題もないね?」


「え…う、うん」


なんかいつの間にか手を繋いでる。しっかりちゃっかりしちゃって!


「おー?秋人ー?」


大学生風の男が近寄ってきた。うちの近く学校多いのよね…


「あ、早川。久しぶり」


「てめー連絡先なんで教えてくれないわけ?難しい問題の質問できないじゃん」


「あーごめん。今度教える」


「…てか、その人…見たことあるな?」


「あぁ、僕の彼女。で婚約者になったよ」


「え?お前…え?確かこの人卒業生の…」


「うん、そう」


「いや、お前がわからない」


「遥、友達の早川だよ。体育祭の委員一緒にやってた」


こいつ、取り巻きか。


「や、お前!いろいろ聞きたいぞ?」


「じゃあ電話しなよ。はい」


「お前名刺とか!」


「急いでるからまた」


「おい!」


少し離れたら即、電話が。


「おい!てめ!意味わかんねーよ!」


秋人はすぐ出たけど、なんでスピーカーフォン?私に聞かせたいの?

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