第17話

道行く途中、クラスが同じだった男子に小声で就任おめでとうと言われたが…いや僕じゃない。このダサい服でも話しかけるなんて、勇気ある人だ。


さて…ほんとにこの辺りなんだろうか?

来ないでって言われたし、1度も下見に来てない。食べ物屋さんなら渡り歩いたことはあるけど、スポーツジムは無視してたから、全くわからない。


…ない。


駅前ってそもそもこの駅前なのかも怪しい。あるのは、ボクシングジム。スポーツジムではない。けど、ここしかない。


ガラス張りなので、中を覗いてみた。

わー、なんか激しい。

筋肉があるトレーナーさんがたくさん。もしかしたら通ってる人かもだけど。

ふむふむ、女の子もいる。


サンドバック?を使ってる人は、背中もお腹も出して…あ!


あれは遥じゃない?露出すごいけど…そしてすごい筋肉。中のスタッフさんは、遥っぽい人になにやら聞いてる。ほうほう、遥に間違いなさそう。…が、見失った。いない。

トイレかな…。


ボクシングの世界なんか見たことない。

人様の練習風景を覗き見ていたところ、声をかけられた。


「ねぇ、興味あったら見学…」


振り向いたら、そこには遥が。


「遥、久しぶり」


「あんた年上には敬語でしょ!」


そして照れ隠しなのか、わけのわからない説教をされた。


「え、かたっくるしいって言ったじゃん」


「なにしてんのよ」


「遥探しに。ボクシングジムとは知らなかったな。ジムだけ言ったから」


「あ、ごめん」


素直に謝られた。うう、かわいい。


「ううん。今から暇だったら食事にでもどうかなと思って」


「は、てかあんたさー社長って…」


まずい、あれあんたでしょー!会見してんじゃないわよー!と叫ばれたら困る。


「遥、行こう」


手を引いたらすんなりついてきた。


「喫茶店にしよう。個室の」


「なにそれ、勝手に決めてるし」


でも、嫌がってない。


「中で話そう」


素直に頷く姿なんて、学校で見たことないよ!やばい!かわいすぎる!


喫茶店では、遥からの質問攻めにあった。僕じゃないことを見抜いたのには驚いた。性格を把握してる…!

話そうとすると質問にあう。遥にご飯勧めてもそれどころじゃないくらい、話をしてくる。

そして、僕の話になるとそっけない。なるほど、興味があるとのってくるのか。そんな中、遥と連絡先交換に成功!会ってくれると約束も果たす。


すごい!僕、遥に案外好かれてる!かも?


「勇人!このだっさい服も悪くないね」


「ええ、兄さんひどいな。オシャレなのに」


遥は、外見を気にしないんだ。うーれーしー!そして、遥と連呼しても気にしない。いや、それは呼ばれ慣れて…いやいや考えたくもない。


遥とのまとまった時間をとるために、いろんな部署での仕事も早く終わらせられるよう務めた。いかに効率よく、迅速にできるかがかかってる。

遥の連絡先わかってはいても、めーわく!かけてくるな、なんて言われたら困るし。必要ない連絡は避けた。


ジムまで行くと、後輩っぽい遥を慕っている子に僕達が会っているのを見られた。が、遥は僕を連れて立ち去る。ええ!置いてけぼりくらうかと思ったのに?

むしろ、照れてる!怒ってるかのようだけど、恥ずかしがってる。僕といるの、嫌がってない。


それから奢ると言ったら受け入れた。ごねるかと思ったのに。それから、酔うとより饒舌になった。素直さが増すような気がしたので、試しに名前を呼んでくれとせがんだところ、普通に呼んだ。僕の名前覚えてる!あ、携帯に登録したから?いや、連絡してない!

嬉し恥ずかしである。


しかしながら、社長という職になった以上、忙しい。遥との予定より仕事を優先しないといけない。流石に夜遅くに約束というのはまずいし。

遥が仕事が終わっただろうという時間に連絡すると、優しく話してくれた。僕に向けてと思うだけで嬉しい。


約束の日にジムを覗くと、若い子が遥ににやにやしてる。縄跳びする遥はかっこよかったけど、あの子揺れるアレを見てるでしょ?僕は出会った頃知らなかったけど、早川が言ってた。気に留めてなかったけど…うーん、気になるよね。あの子は遥目当てじゃないの?遥は気に留めてない…。


そのことを話して少し拗ねたら、また照れて。でも、僕に自分の話をしてくれた。

遥はボクシング好きなんだなぁ。

そして、驚いたのが、ジャージの下はさっきのヘソだしの服。そ、そんなので歩いてたとは…!やばいよね?

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