第12話
私は秋人に翻弄されてる。
「遥さん、また新規の男の子たち入りましたよ」
「どんだけ暇なのよ」
「ボクシングってかっこいーですもんね?」
「うん、そうね」
秋人から連絡は来ない。
だけど、突然連絡が来た時は、今日会える?
という急いで連絡してきた感じがあった。
しかし、約束の時間になっても来ないし、連絡もない。あいつ、すっぽかす気?
しょうがないから私から連絡する。
「ちょっと、あんたなにしてんの?」
「ごめんごめん、今から走って行くから!」
結局ジムまでやって来た。
「いや、ほんとごめん」
「なにしてたの?」
「明日の仕事のことで、立て込んでしまって」
「わざわざ私と会わなくていいのに」
「遥に会えないと寂しいから」
「ふーん?で?どこ行くの?」
「僕が案内するね」
こいつ飯屋よく知ってるよな…
「こないだは秋人って呼んでくれたのに、もう呼んでくれないの?」
「名前呼びすんのめんどくさい」
「そっか。わかった」
ものわかりよすぎんのもどうなの?
「遥、僕来週から海外に行ってくるから、しばらくは会えない」
「ふーん、忙しそ」
「また会える時は連絡する。会いたいのに、…辛いな」
「別に私は辛くない」
「そっか。じゃあ食べよう」
秋人は、どんどん忙しくなる。こんな風に話す暇もなくなる。そして、どこかへ…私とは別の世界に行ってしまうのかな。
「ごめん、帰国が遅れそう」
「…いいけど」
「遥、また連絡するから。必ず」
「うん、わかった」
必ずって、あーもう!あいつなにしてんの。
サンドバックに打ち込む。これを打ってると集中できて気が紛れる。
帰国したと秋人から連絡があった。だけど…
「なに?まだ海外なの?」
「いや、帰ったんだけどちょっと立て込んでて…今日はほんの少ししか会えないけど…誘ってもいい?」
「いいよ」
「ファミレスでいい?」
「いいよ」
ファミレスで待っていた秋人はいつもの元気がない。時差ボケ?
「あ、遥」
「なんでそんな疲れてんのよ」
「いや、いろいろ。やること多くてね」
「私と会う暇作んなくていいから、仕事してよね」
「ありがとう、でも遥と会えば落ち着く」
「…そう」
そんなはっきり言われたら困る。
「遥からいつも元気もらってるよ」
「ふーん?」
「ごめん時間だ。じゃあ、また連絡する」
次はいつって話ししてない。
またっていつ?
もう会わないの?
その二週間後、秋人から連絡があった。
「遥、会いたい」
「いいよ。どこで会う?」
「今から公園でいい?待ってるから」
私、なんでこいつに合わせてんだか。
「遥、ごめん…今日も忙しくて少ししか話せないけど」
「いいよ」
公園のベンチで話す。外は少し肌寒いけど、ま、大丈夫。
「遥、仕事って難しいね」
「うん、そうね」
「僕は社長というポジションで、これからやっていけるのか心配なんだ」
「あんた、できるでしょ。無理しすぎなければ」
「うん、遥ありがとう」
「別に」
「あ、行かないと」
「…次は?いつ会えるの?」
「…え?」
「秋人と会えるのいつなの?」
「ええっと…」
カバンからスケジュール帳を出してペラペラめくる。
「まとまった時間は…とれない。…けど、遥がもし、家に来てくれたら」
「いいよ」
「へ、え?いいの?」
「家どこよ」
「ええっと…地図書くから。はい。あと…これカギ」
「…あんたは仕事戻るの?」
「いつ戻れるかわかんないけど…夜中かもしれないけど…」
「わかった。勝手に上がるから」
「うん、じゃあ、また後で!」
は、カギもらっちゃったよ。
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