第11話

「あーもう食べられない!お腹いっぱい」


「よかった。遥はお肉好きなんだね」


「そーよ。昔は焼き肉屋を潰す勢いで食べてたからね」


「すごい。食欲あるのはいいよね」


「…なんかここ暑い」


「お酒結構飲んだもんね」


「…脱ぐ」


ジャージって意外と暑い。さらにお酒飲んだし。


「え、中それ?お腹冷えない?」


「ジムでいつも着てるわよ?」


スポーツウェアで、ヘソ出しな格好である。

あ、この格好だと筋肉があらわになっちゃった。私のシックスパックに近い割れたお腹をどう思うかな。


「風邪ひかないようにね」


「無視かよ」


「?」


キョトン顔の秋人。むかつくー


「この筋肉、どう思う?」


「え?僕には到底つけられない。努力の結晶で、素敵だと思う」


「ほんとにー?そんなこと思ってる?」


「うん。遥は素敵だよ?」


「…でも私、ただのスポーツジムと同じようなボクシングジムで上を目指そうとしない輩に教えてるだけ。なーんにもおもしろくない。私がどんなに筋トレしても無意味なの!」


「遥、無意味なんてことはない。遥ならきっと自分の道を見つけられるよ」


「うるっさい!偉そうに」


「遥は照れ隠しで怒るよね。僕はそんなとこも好きだよ」


「黙れ。チビのくせに」


「…チビはどうしようもない」


「あんたさー、その身長いつから伸びてないわけ?」


「ねぇ、遥。秋人って呼んでよ」


「…は?私の話し聞いてた?」


「身長は、中学2年止まり。…言いたくなかった。はい、遥の番!呼んでよ」


「はぁー?」


なんで私が


「秋人」


「うわ、恥ずかしい」


呼んだ瞬間すごい照れたのか、手で顔を隠した。なにこれ。面白い。


「調子に乗りすぎたみたいで、すみません…」


急に敬語とか。


「あんた名前あんまり呼ばれないの?」


「うん、僕は細川グループの息子で覚えられてるから…わぁ、遥が呼んでくれた!」


今度は隠した手をグーに変えてガッツポーズしてご機嫌になった。ひとしきり、話しが落ち着いたところ


「もう遅いから、そろそろ帰ろうか」


「ねぇ、明日は仕事なの?」


「んー、そうだね。僕、そろそろ社長業任されるかも。だから、遥となかなか会えなくなりそう…再来週は空くかな…」


「ふーん、忙しそ」


「また連絡する」

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