第5話
無事体育祭は終了。片付けも大幅に楽になった。さっさと帰ろう。と、思ったところ、身に覚えない紙切れがカバンの上に置いてあった。
「黒川さんへ
3年間お世話になりました。
細川秋人」
なにこれ、みんなにこれ配ってんでしょうね。マメすぎるから。
校庭を抜けようとしたところ、芝生のところで細川を発見した。今日は立って敷地内の川を見てる。あいつ、なんで1人?友達いないわけ?
「なにしてんの?」
「あ、黒川さん。よかった、まだ帰ってなかった…」
「は?」
「僕の手紙読んで頂けましたか?」
「これ?」
「あ…なんか修正入ってますけど、そうです」
「修正?」
「またお会いできたら…って書いたんですけど…」
「あ、そう」
「お会いできてよかった。言いたいことがあったので」
「なに?来年もまた来いって?」
「いえ。僕は、あなたが好きです」
「?」
「黒川さんは、僕に対しても平等に接してくれた。僕のことを知っても」
「なに?どういうこと?」
「僕は、黒川さんが好きなんです。付き合って下さい」
「意味わかんない。私、あんたなんか好きじゃないし」
「…あの、学校外でも会ってくれますか?」
「いや、あんた社長になるんでしょ?無理でしょ」
「会えるときに…時間は必ず作ります」
「彼女いるくせに」
「いませんけど?」
「嘘」
「嘘をつく意味がわかりません」
「だからー」
「僕は、遥が好きだから。一緒にいたいんです」
なんで私の名前…!?
「あ、あんた名前なんで知ってるの?」
「僕が聞きましたよ。1年のときですが」
「いやそんなことより、学生と学外で会うなんてできないし」
「では、卒業してからなら構いませんか?どこのジムにいるんですか?」
「しつこいな」
「すみません。黒川さんともっと話をしたくて」
「…駅前の。でも、こないでよ!」
「卒業してから行きます」
とは言ってたけど…あいつ私のことなんか忘れてるでしょ?社長だし。
「遥さん、細川グループ社長って若い子になったみたいですよー」
二階の休憩室で、昼食を食べながらテレビを見ていたら、後輩がそんなこと言った。確かに3月だしもう卒業したのか。
ふと画面を見たら、
「経営方針と致しましては…」
あれ?これ細川じゃないんだけど。似てるけど…違う。影武者?
「若社長とか羨ましい。玉の輿のりたーい」
あいつ、社長じゃないじゃん。
仕事が終わって帰るとき、ニット帽をかぶった小さめの男の子が一階にあるジムを覗いていた。あんなモヤシだから筋肉つけたいのかな。
「ねぇ、興味あったら見学…」
「…遥、久しぶり」
細川?てか、
「あんた年上には敬語でしょ!」
「え、かたっくるしいって言ったじゃん」
なにこれ、意味わかんないだけど。
なんでここにいるわけ?
「なにしてんのよ」
「遥を探しに。ボクシングジムとは知らなかったな。ジムって言ってたからスポーツジムかと思ってずっと探してて」
「あ、ごめん」
「ううん。今から暇だったら食事にでもどうかなと思って」
「は、てかあんたさー社長って…」
「遥、行こう」
あ!
いきなり手を引かれて連れていかれた。
てゆーか、私服地味じゃん。ニット帽なんてキャラじゃない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。