第3話

「ふー、無事に終わりました」


組み体操のリハを終えて本部に戻ってきた細川は、少し疲れて見えた。


「あんたさぁ、無理しないでよ?明日本番だっていうのに」


「黒川さん、ありがとうございます。僕は自分の仕事をしっかり成し遂げたいので、体調には気をつけますね」


1年のくせに。こんなにちゃっかり委員になってるし。しかも、なんでそこまで頑張るのかわからないけど。


陸上の記録をとりながら、細川を見たら、次のプログラムの段取り確認をしていた。張り切りすぎだし。


そしてリハの後は、委員だけで昨日終わらせてなかった設営。ライン引きとか来客用の椅子の設置などなど作業は多い。


そして本番でも、細川は本部に入り浸り。

人の仕事のミスまで補う始末。働きすぎ。


無事終了し、片付けとなった。委員だけで、片付け。


「細川ー、お前今日は働きすぎたから休めよ」


「いや、最後までやりたいから」


「細川くん!私達も手伝ってもいい?」

「私も!」


今更?てか、最初から手伝ってやれよ。


いや、委員が全部することに規定ではなっている。手伝ってはいけない規定はないけど…考えたこともなかった。


「皆、ありがとう」





「あれ、あんた1人?珍しいね」


「…黒川さん、お疲れ様でした」


1人で校庭横にある芝生に座っていた。私はその校庭を突っ切って帰ろうとしていた。


「たまには1人もいいものなんですよ。僕は少し無理をしたかもしれないので、休んでから家に帰ろうかと」


「なにそれ。家では疲れを見せない的な?」


「そういうことではなく、リセットしたいと思って。仕事とプライベート」


「変なの」


「黒川さん、聞きたいことがありました」


座っていた細川は立ち上がろうとする


「なに?立たなくていーから」


が、言うこと聞かない


「黒川さんは元ボクサーなんですか?」


「そうだけど」


「今はされてないということですか?」


「そう、ジムのインストラクター」


「そうなんですね」


「なにが言いたいわけ?元ってなんでって?」


「いえ、ご職業を黒川さんの口から聞いていなかったと思いまして」


「なによそれ」


「黒川さんに指導してもらえる方は羨ましいです」


「は?なんでよ、私なんか」


「僕にも、きちんと教えて下さいました。ありがとうございます」


「別に普通じゃん」


にっこりと笑う細川。

まだまだ子どもっぽい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る