第12話 図書館の掟

この前、芥川賞を取った本が、とてもかわいい装丁だったので読んでみた。ら、内容がとてもエグかった。


なんでこんなかわいい装丁にしたのだろう。

タイトルもほのぼのしてるし。


でもエグかった。

自分の彼女が作って、会社でみんなに振る舞ったお菓子を足で踏み潰してゴミ箱に捨てる主人公。


エグい。

でも心にズンと残る、良い作品でした。


この本は図書館で借りたので、月曜日は図書館の休館日だからポストに返却した。


そして帰ろうとすると、図書館から人が出て来た。

えっ、と思って図書館の入り口まで行くと、

普通に開いていた。


自動ドアの所に貼り紙があり、

『祭日の今日は開館します。

翌日、火曜日が閉館となります』


入れてしまったではないか。

返却ポストに入れてしまったではないか。


図書館には鉄の掟があり、開館中は返却ポストに本を入れてはならず、ちゃんと図書館内で返却しなきゃならないのだ。


取り返しのつかないことをしてしまいました。


きっと図書館の人は思うだろう。


「まったくルールも守れない人って最低ね」

「ちゃんと開館中は入れないで下さいって、書いてあるのにね」

「こういう人って、平気で道端にコンビニのレシートとか捨てるのよ、丸めて」

「あと燃えるゴミの日に、プラスチックゴミを捨てて、清掃局の人に『これは持っていけません』ってシール貼られるのよ」

「ほんとゴミ出しもちゃんと出来ないから、彼氏も出来ないのよ」

「そうよ、そうよ」


途中でゴミ出しの話に変わってるし。

それに最後、ただの悪口だし。

そうよ、そうよってなんだよ。


私は、ごめんなさい、次回はちゃんと確かめてから返却しますと心に誓って、足早に図書館から去った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る