第9話 ヤバイやつ

バス停にあるベンチに座っていたら、足元の雑草に混じってクローバーや名前も知らないお花が咲いていた。


そのお花にころころと太ったミツバチが止まって、花の蜜を吸っていた。ころころしてるからか、とてもかわいい動きをしてる。


思わず写真を撮る。

昔、読んでたハチミツとクローバーにちなんで、

『ミツバチとクローバー』と題して、

インスタにアップしようかなと思った。


しばらくかわいいミツバチの動きを見ていたら、

ミツバチが吸ってるお花の近くに、四つ葉のクローバーがあった。


四つ葉のクローバー。


久々に見た。子供の頃以来か。

私はそのミツバチさんがどいたら、その四つ葉のクローバーを摘もうと思った。


が、ミツバチさんは中々、どいて下さらない。

その花の蜜がかなりヤバイのか、夢中で吸いついている。


よく見るとミツバチさんの目がイッちゃってる気がした。


白い粉を溶かして、炙って吸ってる人の目だ。

もう行くとこまで行っちゃってる人の目だ。


私は白い粉を炙って吸ってるミツバチさんを邪魔しないように、そっと手を伸ばして、四つ葉のクローバーを摘んだ。


その私の目の前を、待っていたバスが、ベンチに座ったままの私を乗らないものだと思って通り過ぎて行った。


通り過ぎて行った。


取り返しのつかないことをしてしまいました。

私は四つ葉のクローバーを手に途方に暮れていた。


ミツバチさんはまだヤバイやつを吸ったままだった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る