第4話 大西ライオン
テレビを観ていたらMCの人が、
モデルか女優をやってる方に、
「応援してます」と言ったら、
「大西ライオン?」と聞き返されていた。
『応援してます』
『大西ライオン』
満員のライブ会場で、
アイドルのファンが、
「応援してます!」と大歓声を送った。
サイリウム片手に。
でもそのアイドルは聞き返す。
「えっ、大西ライオン?」
なんだかそんな光景を思い浮かべたら笑ってしまった。
が、翌日私にも同じような災禍が降りかかってきた。
会社の喫茶スペースで、ちよっとふっくらした先輩の朋美さんが言った。
「私、肉ダンス始めてさ」
『肉ダンス』
たしかに朋美先輩はふっくらしている。
でもそんな、直接的な名称のダンスを始めなくてもいいではないか。
そもそも『肉ダンス』って何?
ダンスだから踊るの?
ですよね、そうですよね!
私は無難に、
「そうなんですか、ダンス難しいですか?」
と、ボールをストライクゾーンに置きに行った。野球もよく知らないのに。
「そうね、曲に合わせるのが難しいかな」
『肉ダンス』
曲に合わせるのか。
どんな曲だろう。
スーパーの精肉コーナーに流れてる、
あの、のどかな曲だろうか?
「そうなんですか。楽しそうですね」
またボールを置きに行った。2球目だ。
が、そのボールを、朋美先輩は見逃さなかった。
「うん、楽しいよ。そうだ、みさきちゃんも一緒にやらない?」
置きに行ったボールを打たれてしまいました。
それもホームラン性の打球を。
「えっ、私なんて無理ですー」
だから『肉ダンス』って、なんだよー?
色々と言い訳を並べて、なんとか一緒にやるのはあきらめてもらった。
朋美さんが喫茶スペースを出た後、
私はネットで調べてみた。
『肉ダンス』ではなく、
『レクダンス』だった。
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