第3話 シリアルキラー

同僚の鷹村さんと、

リラックマの形をした、中に餡が入っている、可愛いスィーツを食べようとしていた。


可愛いすぎて食べるのがかわいそうなくらいだ。


私の前にはリラックマ、鷹村さんの前にはコリラックマのスィーツが置かれている。


鷹村さんはスマホで写真を撮った後、


水ようかんとか、和風のスイーツについてる、楊枝みたいなプラスチックのスティックで、


コリラックマの耳のあたりの肉を、少しそいで食べた。


「美味しい」

コリラックマの耳は無くなっていた。


私は和菓子はいつも真ん中を割って食べる。

その方が中の餡が見えるし、食べやすくもある。


私はいつものように、リラックマのスィーツの真ん中に、スティックを当てて力を込めた。


普通の和菓子の食べ方ならこれで良いはずだ。

でも、これはリラックマのスィーツだった。


目の前のリラックマは脳天を真っ二つに割られ、

まるで餡が脳味噌のように丸見えになった。


「えっ」


鷹村さんが変わり果てたリラックマを見て言った。

表情でわかる。引いているのが。


でも私のスティックは止まらない。

そのまま胴体まで真っ二つにして、

あの可愛いリラックマのスィーツは、

惨殺されたように、体が左右に生き別れとなった。


皿の上で、サスペンスドラマのような惨劇が起こってしまった。


取り返しのつかないことをしてしまいました。


鷹村さんが笑顔をひきつらせて、

「でも、和菓子って普通、そう食べるもんね」

たしかに水きりやわらび餅ならそれで正解だ。


でもこれはリラックマのスィーツだ。


恐れをなしたのか鷹村さんは、

「じゃあ私、残りは残業の前に食べるね」とそのスィーツを持って、会社の冷蔵庫にしまおうとした。


よく見るとコリラックマの両耳がなくなっていた。

鷹村さんはジワジワと殺すタイプだった。


私はバラバラ死体みたいになったリラックマのスィーツを全部食べた。


まるで遺体を処理するシリアルキラーみたいに。



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