自分が思う本当にいいお話というものは、時に以下の条件をきっちり満たしてきます。
・先が予想できない
・しかし期待を超えてくるだろうという信頼だけはある
・そしてその信頼にひんぱんに応えてくれる
自分が精魂込めて書いた作品と同じジャンルに「それ」があるというのは、恐ろしくも強烈な体験です。
広く読まれる話ではないかもしれない。
でもその事実すら読者の優越感に変わるような、替えなんてそうそうききようのない良さがはっきりとある(「下にも置かないもてなしがともなわなければ美味しい食事じゃないと皆いうのか!?」)。
最後にものを言うのは、個性……素材の力、そのかけがえのなさ。
技術は反復できる。伝達することで共有される。難度の壁はあっても、本質的にかえはきく。
でも、素材。出発点にあるそれだけは最後まですべてに影響を与え続ける。
そして技術が出揃うほどに他を置き去りにしていく。
皆それがわかっているから、下手をすればどの地点でもそれに強い印象を持つし、忘れない、忘れえない。
まれにしか出会えないそういうものが、ここにあります。
技術の話ももちろんありますが、ことここに至ってはそれによって見取りやすくなったかえのきかないものをこそ推す(押す)べきと判断しました。
この作者さんの他の作品でもいい。きっと「それ」に触れられるはず。
何かを作る方にほどおすすめです。
摂取、ぜひどうぞ。