壱壱:その人の名は斎藤瑠美

三度目のリモート漢検授業を開校しようと準備を進める中、

気持はどこか違う分野に意識が飛んでいた。

「……ピンポーン!」ええー、このタイミングで来客ですか?

玄関に立っていたのは、キューティクルがきめ細やかにケアされた

髪もお顔も美しい美女が一人。

「漢検ファイター、隅田さんのお宅でしょうか?」

数秒のタイムラグ……

「すみません。ええと、僕たちどこかで会いましたっけ?」

明らかに初対面なのに見たことのあるような顔立ち。

と、閃く!「げ、月刊KANKENの表紙の人だ! 名前は確か……」

「斎藤……」「る、瑠美さんだぁー!」

斎藤瑠美 SAITOU RUBI

漢検ファイト創設者:斎藤尊 SAITOU TAKASHIの孫娘。

様々な角度から漢検ファイトを盛り上げる。


僕は小学生相手に8級レベルの漢字を教える底辺を這う漢検ファイターだが

両親が共に教師なだけあって、結構勉強はして来た方だと思う。

理由は今の所判らない。

※「分かる」「判る」「解る」の内、「判る」を用いるのは判別する事柄だから。

しかし、わざわざ自宅まで来たのだ。隅田宛児に出来ることを頼みに来たのだろう。


・読者に身近な四字熟語(四字漢字)を作品の随所で採り上げる!

→ご挨拶程度に米津玄師と爽健美茶をプレゼンテーション。

・斎藤瑠美は絶世の美女 漢字には欠かせない「ルビ」がファーストネーム。

→斎藤尊は東大王の漢字問題研修をしていた斎藤孝教授がモデル。


「どうします? 野郎の独り暮らしに女性が上がっちゃってもいいもんなんすか?」

「それは貴方自身の在り方だと思いますよ。お邪魔しますっ」

瑠美さんはキョロキョロせずに今月号の月刊KANKENを2冊机の上に置き

その中の1冊を持ち上げて、丁寧に中身を開いてゆく。

「最初の注目選手は彼です、梅金万くん 19歳」

同じページに辿り着き、しばらく眺めていると、不可思議な点に気づく。

「ルビさん、この人、芸名っすかあ? 梅をバイって読んだら隣の金で

バイキンになるなって思いきや、万もマンでバイキンマンじゃないっすか!」

「個々人のことは分かりませんが、この女性の選手をみれば、意図が汲めるかも?」

※ここの「分からない」は理解不能、判別不能以外のわからないだから。

「わからない」にしたかったが、横の文字が平仮名で混同し易い為の配慮。

「ううん? 土橋琴子?

ドハシコトコ、ドキョウキンコ、ドッキンコ、ドキンコ

……ああー! ドキン、ドキンちゃんだあ、しかも19歳!」

「ええ、この二人はダブルスでエントリー中です、よもやの確信犯でしたね」

「ルビさん、僕も彼等みたいな漢検ネーム使ってもいいかなあ?」

「それはご自由に。でも、隅田さん、宛児なんて素敵な名前を

名誉ある大会に掲げなくても?」

「掲げますとも。宛児をローマ字でATEJI

僕は戦う国語講師:漢検ファイターATEJIです!」

「わかりました。ローマ字表記、決まりでいいですね?

エントリーはシングルスですか? それともダブルス?」

「当初はシングルスで行こうと思ってました。

でも、ルビさんがわざわざ家まで訪ねてくれたのには理由があるんですよね?」

「話が早いですね。そうです、そうなんです。

私にはATEJIさんのフォローが不可欠なんです。

童心って聞いたことはありますか?」

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