第2話 憧れの結婚
確かにどの騎士も見目麗しい。間違いなくそこら辺の竜人族の女子なら失神してしまうレベルの麗人たちだ。竜人族は基本的に見目麗しいものが多いが、やはり力を持つものの美しさはワンランクレベルが違う。しかしどうにもピンとくるものがない。
シルビアは小さくため息をつくと、今回もまた、誰にも声を掛けずに自らの椅子に戻った。明らかに落胆の表情を浮かべる参加者たちを見てさすがに申し訳なく思う。
シルビアとてわかっているのだ。竜人はめったなことでは死なない頑丈な体と他種族とは比べ物にならないほどの長い寿命を持つ代わりに出生率が極めて低い。現竜王にも、一人娘であるシルビアのほかに子はいない。シルビアの結婚には竜王国の存亡そのものがかかっているのだ。
「だがのう、爺。やはりどの御仁もわらわにはピンとこないのじゃ。真実の番とでおうたならば、こう、一目会っただけで天にものぼろうかという夢心地になると聞く。ほれ、わらわの侍女が先月ようやく理想の番を見つけたと申しておったであろう?わらわもそのような運命の出会いをしてみたいのじゃ」
少女趣味と言われようとも、気の遠くなるほど永いときを共に歩むのだ。そのぐらい夢を見ても許されるのではないだろうか。実際父上と母上は運命の番というにふさわしいラブラブぶり。できれば番とはいつまでも末永くラブラブしていたい。シルビアにはそんな乙女らしい夢があった。ところが、
「姫様。王族に必要なのは優れた血筋!姫様には姫様を生涯身を挺してお護りすることができる勇猛な勇者がぴったりのはず!もう国中の勇者を紹介してまいりました。この者たちで最後でございます。この者たちの中からお選びいただけないとなるなら、爺が決めてしまいますぞ!」
あんまりな爺の言葉にシルビアはちょっぴり腹を立てた。
(爺め、あんまりではないか。なぜわらわの番を爺に決められなければならぬのじゃ。竜人族はことのほか番を大事にする。一度番を定めてしまえば人間のように簡単に婚約破棄などできぬ。ま、まぁ、一部例外もあるが。しかし、さすがのわらわもこれには堪忍袋の緒がきれようというもの)
「それは爺の好みであろう~?もうよい。わらわが自分で探してくるゆえ。爺はそこでおとなしゅう待っておれ」
そう言い残すとシルビアは城のてっぺんから飛び降りた。
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