第2話 unusual days ②

「私はあなたの事を知っている。同じ"エトセトラ"なんだから」


私は目の前の少年、氷上レイキにそう伝えた。

氷上レイキ、コードネームは :フリーズ。

表向きはHW研究社、実態はいわゆる"秘密結社"に近い。その組織の構成員であった少年を私は保護しに来た。


「僕を保護…?何故?誰が頼んだ?」


「それは極秘よ。とりあえず一緒に来てくれるかしら?それにそのフリーズってコードネームは今日で捨ててくれる?」


「誰かも分からないような奴に着いていくわけはないじゃないか?それになんで、人名まで知っている?」


「教えられたからよ、誰かからは教えないけど。なら自己紹介するわ。私は藍上琉歌あいがみりゅうか、明日から女子高生の15歳。」


「…知らない、なんで僕を知っている?組織の人間じゃないなら、おかしい。」


レイキは困惑しているようだった。かくいう私も、目の前の少年が真に何者なのか、保護を依頼されただけの現時点ではわからない。


「う…うぅ…」


気を失っていた、ミリタリー調の服を着たごつい男、コードネーム:ジェディは虚ろとした表情で私を見ていた。


「お…まえは…いったい…それにその注射…」


「あら、意外と直ぐに意識が戻ったわね、さすがだわ。言うの忘れてたわね、この注射は応急処置に過ぎない。3日は安静にしてなさい。それにあなたにはもう1つ処置をしておいたから。」


「………」


ジェディは視線をフリーズへ向けた


「すまな…い。もう殺しはしない。悪かったよ…」


するとジェディは泣き出した


「な、なんで泣いてるの!?殺し屋らしくないよ」


レイキは困惑しているようだった。


「俺は…間違っていたんだよ……許してくれよ……ジュディ………フリーズ……、アニマにレイン……」


ジェディは聞き覚えのない名前を泣きながらぶつぶつと唱えていた。


「あとは1人でどうにかして。今日は氷上レイキしか保護を頼まれていないから。」


そうジェディに伝えると、注射の応急処置が効いたのか、立ち上がり階段までおぼつかない足取りで歩いていった。


「ありがと…う、その…名前は何だった…か?」


「あなたは私の名前を覚える必要は無いって言ったでしょ?Dollって事は覚えといて。いつか必ずあなたの役に立つ。」


ジェディはそのまま降りて行き見えなくなった。屋上には、先程まで戦闘で使っていた短剣や、おそらく重要なものが入ってるであろうリュックサック、スコープなど、あらゆるものを置いて行っていた。その行為はまさに"離反"であった。


「その、藍上琉歌さん…?」


「琉歌でいいわ」


「殺し屋になにをしたんだ?」


先程まで冷たい冷気をまとっていたような少年が、今は溶けかけの氷のようだった。


「もうすぐ下に迎えが来る。それまでここで待機しときましょう。」


「質問に答えてよ…あの殺し屋、なんというか様子がおかしかった。性格がまるで変わったような…。それに俺と一緒で"エトセトラ"って事は、なにか力を使ったんだろ?」


それはその通りだ。私はあの男に能力を使った。私の能力は『ウィッチ』そう呼ばれている。


「ご名答!」


私はウィンクしてみせた。少年は少し前にジェディに自らが放った言葉を少し後悔しているようだった。


ピーピーピーピー


携帯が鳴った。


「下に着いたみたいよ、さぁ行くよ」


私はレイキという名の少年の手を掴み、ジェディが降りていった階段を降りていった。


「えっええ……」


「あら、女の子と手を繋ぐのは初めてだった?」


「そういう事じゃ……!」


そのまま、ビルの下まで行くと、世間一般的に見ると明らかに高級車と呼ばれるような車に私は氷上レイキと共に乗車した。


裕二ゆうじさん、お願いね」


「琉歌ちゃん、おっけ〜」


物腰の柔らかい運転手、裕二にそう言うと。車は発車した。



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