第225話 無視すれば済む話
「で、では私も勝手にそうさせてもらうっ!! 勝手に謝罪させてもらうっ!!」
「がははははははっ!! 何だねそれはっ!? 普通は俺の方が選択肢を与える側であり君はその与えられた選択肢から選ぶ側であろうっ!! まぁ、好きにすれば良いのでは? 別にそれで我に迷惑を被るという訳でもあるまい」
なぜそのような思考になったのか分からない、追い詰められて気でも狂ったのかとも思ったのだが、そう啖呵を切る娘の目は本気であった。
その目を見て、前の世界で我が堕ちてしまう前の、懐かしい記憶を思い出す。
いつの世も、どの世界でも女は強いという事か……。
「えぇ、そうさせてもらおうっ!! そして私は謝罪の品として私自身をあなたに捧げようっ!!」
「……は?」
「というか、我が国の長を殺しておいてそのままトンズラするつもりではなかろうなっ!? そんな事がまかり通る訳がないだろうっ!! 自分でやった付けくらい自分で何とかするべきではないのかっ!?」
「ぐぬ……っ」
そして我はそのままここを飛び立ち、一度カイザル様の元へと戻ろうかと思っていたのだがその事を見越していたのかこの娘は我に自分自身を捧げるという物理面、そして強者の責任という精神面で我を縛ってくるではないか。
「そんなもの我には全く関係ない。そもそも我に喧嘩を売って来たのはそちらであり、ただ単に我はその喧嘩に乗ってやっただけである。そこに何故責任というものがついて来るのか分からぬな。むしろ責任というのであれば長を我の手で殺された事が今回我に喧嘩を売ったと言う責任ではないのかね? あと、君がいくら口頭で我に対して身を捧げるだのなんだのと言ってきたところで、そんなものは無視すれば済む話であろう?」
この娘の言いたいことも多少はわからないでもないのだが、だからといって娘の言い分を聞いてやる義理はない。
それこそ自業自得というものであろう。
「では、今回の件は他国に包み隠さず話し、噂を広げようっ!! その話聞いてどう思うか、そしてどう広めるかまでは関与できないのだが、その噂を聞いたカイザル様? とやらはどう思うだろうか?」
「…………貴様、そんなに死にたいのか? それか貴様もろともこの国を消し去ってやろうか?」
「そうしたいのであればすれば良いさ。でも竜の国が一日で消え去ったという噂は必ず出てくるだろうな……。それと、むしろこの国をそのカイザル様とやらに捧げる為に新しい竜の覇王としてこの国を統治するつもりはないか? そうすればきっとカイザル様とやらも喜ぶと私は思うけどな?」
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