第224話 償いをしてスッキリしたい


 そして我はそのまま自称竜の覇王くんの首を跳ねるのであった。





「ふん、どんなものかと思って我慢していたのだが、結局はこんなものか。竜の国と聞いて少しは期待したんだがの……。これではただ単に癇癪を起して自分の思い通りに周囲を動かそうとする子供と何が違うというのか」


 我が思っていた以上に竜の覇王とやらのレベルが色んな意味で低すぎて、それを闘技場から出た所で思わず愚痴ってしまう。


「…………も、もし訳ないっ!! まさか、あれほどの力を持っていようとは思ってもみなかったんだっ!! 信じてくれっ!!」


 そんな我の前に、赤い鱗を持った竜の娘が、腹を上に向けた状態で謝罪をしてくるではないか。


「たしか、この娘は我を牢屋にぶち込み、散々偉そうな態度を取ってきた竜の娘か……?」

「あ、あの時は竜の覇王……いや、竜の覇王を騙っていたあの詐欺師に騙されており、貴方様の力を疑い、聞く耳持たずにあのような態度を取ってしまった事を──」

「よいよい。そんな事など今となっては何とも思っておらぬ。そもそもあの時に我が本来の力を見せつけておればお主も勘違いせずにいたであろう? むしろ我はこの国で『竜の覇王』と自称するものと手合わせする為にあえて黙っていたのだ。ならばお主の愚行も我のせいと言えよう?」


 正直な話し逃げようと思えばいつでも牢屋をぶち壊して逃げる事ができたわけであるし、何なら自分の思い通りに事が進まないと分かった場合は牢屋をぶち壊し、そのまま竜の覇王を名乗る者をぶちのめしに行っていただろう。


「し、しかしっ!!」

「くどいぞ。お主の取った行動や無礼な態度など、蟻が我の固い鱗に噛みついている程度のものでしかないわ。お主たちが束になっても我に勝てないどころか傷一つ付ける事も出来ず、我のブレス一発で国を亡ぼす事ができるのだぞ? いつでも国ごと亡ぼす事ができるというのは、それだけ心の余裕ができるというものでもある。お主も蟻に鱗を噛まれたとて鬱陶しいと思う事はあれど怒りの感情までは湧かぬだろう?」


 そして、我の説明に一応は納得してくれたようなのだが、どこか腑に落ちないような表情をしているではないか。


「うん? なにが不満なのだ? お主たちを蟻に例えた事か?」

「いえ、そうじゃなくて、貴方様が良くても私の心情的に良くな言うというか、例えるのならば悪い事をした償いをしてスッキリしたいという感じが一番近い……と思う?」

「なんだ? はっきりせんな……。まぁ、お主の心情など我にはどうでもよい事には変わりない」



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