第223話 決闘というものを愚弄している


「こ、この俺を殺したら大変な事になるぞっ!! それこそ、ここにいる俺の国民達や子供達がお前を許さないだろうっ!!」


 そして、甘言で交渉ができないと悟ると、今度は脅してくるではないか。


 こんな事をするよう奴が良く我の目の前で『竜の覇王』などと名乗れたものだな……。竜の風上にも置けぬ。


 そもそも周囲の野次馬として来ている竜たちの反応、自称竜の覇王と名乗るトカゲを見つめる目線が、どのようなものか理解できていれば『自分が殺されたらその者達が許さない』などと言えるはずも無いだろう。


「可哀そうだのう……。周囲の竜たちをしっかり見てみよ」

「は……? へ……? な、何で……、何でそんな目線で俺を見つめているんだっ!? 俺は竜の覇王でありこの国の王でもあるのだぞっ!!」

「その竜の覇王というのが、張りぼてであり、今まで騙して来たというのが分かってしまったのであろう?」

「だ、騙してなどないっ!! 俺は今まで確かに決闘で負けずに生き残ってきたんだっ!! 他の竜の国の強者相手にも圧倒して勝って来たのだっ!! 決して張りぼてではないっ!! それはお前たちもその目で見てきたのではないのかっ!?」

「では、何故我はこの決闘で手枷と足枷を付けられていたのだ? そんな相手を嬲って、それを誉として今まで騙してきたのではないか? と疑われてしまっても仕方がないだろう。 それが例え、今までは本当に卑怯な手段など使っていないとしたとしても、一度でもそんな卑怯な手段に手を染めてしまっては、もう過去の決闘を正当化するのは無理であろう。 何故そんな単純な事に気付けぬのか……。とくに強き者を求める我ら竜は、決闘は他種族以上に神聖なものであるというのに……『今までは『娯楽』としてムカつくやつを決闘というなの処刑という体で誤魔化していたのではないか?』と、疑問を持たれてしまう程に、お主があまりにも酷い負け方、竜種としてあり得ない命乞い、そして張りぼての強者ではなく我という本当の強者を目の当たりにして目が覚めてしまったのであろう」

「……い、嫌だ……っ! 俺はまだ死にたくはないっ!!」

「ここまで来てまだこの国の竜たちの顔に泥を塗るような行動を取るというのか……それが周りの竜たちから見放されてしまっている行為であると何故気付かぬ? いや、……逆に気付かぬからこうなってしまったのか」


 そして我は、翼を使って空へ逃げようとする自称竜の覇王くんの翼を切り落とす。


「そもそも、我を殺すつもりであったのに、何故自分は殺されないと思ったのか……。その時点で決闘というものを愚弄しているとしか思えぬ」


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