第222話 バカですと自分で言っているようなも


「な、なんだその姿は……?」

「なんだと言われても、お主のようにただ口頭で名乗っているだけの『自称竜の覇王』と違って我は歴とした、鑑定すれば二つ名としてしっかりと刻まれる正真正銘の竜の覇王であるからのう。我専用の装備品くらいあるに決まっておろう」


 嘘である。


 竜の覇王だからこそ装備品があるのではなく、カイザル様の配下に下ったからこそ下賜された物なのだが、それを説明してやる必要もないだろう。


「ひ、卑怯だぞっ!!」

「あ? 人の真似事は雑魚のする事だの何だの言っていなかったか? 武術などは勿論、戦闘の為に特化した装備をする事も雑魚のする事ではないのか?」

「ぐぬ……そ、それとこれとは話が違ってくるだろうがっ!!」

「分からぬ。我にはお主はただ単に駄々こねているようにしか見えぬし、そんな知能が子供レベルの奴が言っておる恥ずかしい言葉の意味など、同じ知能に下げてまで分かりたくもないの。それと、一応言っておくがこの剣はドワーフが我の為に打った名刀【覇王一閃】であるのだが、お主ごときの鱗であれば、まるでバターを切るかの如く簡単に切る事ができるぞ? ほれ」


 そして我はそう言うと自称竜の覇王くんの右腕を切り落とす。


「ぎゃぁぁぁぁあああああっ!!??」

「あぁ、うるさい、うるさいのう……。腕の一本切り落とされたくらいで叫びおって……。先ほどの態度もそうなのだが、あまりにも竜の覇王と名乗るには態度がなっていないのではないか? 戦い方も本能のままただ引っかいたり噛みついたりブレスを放つだけではないか。 そんなものはただのトカゲと何が違うと言うのか。 流石にこれ以上は竜の名を汚されたくなないからそろそろお主にはここらへんで死んでもらおうかの」


 これで竜の覇王と名乗るのだから情けない。 こんな奴を覇王と名乗らせてしまい、偉そうにふんぞり返らせていた他の竜たちもだ。


「へ? あ……あ、そ、そうだっ!! お宝が欲しいのか? 竜の雌が欲しいのか? それとも両方か? もし俺を生かしてくれるならば好きなだけ金品を奪って良いし、雌を孕ませても良いぞっ!! どうだっ!?」

「そんなもの、要らぬわ。そんな目先の欲望でしか物事を考えられないからお主は雑魚なのだよ。 そもそも、そんなものお主を殺せばどの道手に入るものではないか……。それならば尚更お主の存在が邪魔になるので殺した方が良いという結論になるであろう? であれば、お主の命乞いだと思っている行為は、逆に『自分を殺してくれ』と言っているのと同じであり、そんな事すら気付けないバカですと自分で言っているようなものではないか」


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