第217話 一度しか命乞いは聞かぬぞ?
「ほう、ようやっと来たか」
そして、その闘技場の観戦席の中で明らかに他の席とは作りが違う豪華な場所があり、その席にあるひと際豪華な作りの椅子に座っている黒い竜が我の事を見るとゆっくりと立ち上がり、そう呟く。
「お前が自分の事を『竜の覇王』だとか抜かした奴か?」
その竜は翼を広げてゆっくりと我の前に飛んでくると、そう問うてくる。
「はて、何をそんなに苛ついておる? そもそも竜の覇王とは昔から我の事でろう。その事に苛ついていたのだとしたら、お主……まさか自分の事をこの我を差し置いて竜の覇王と名乗っていたとでも言うまいな?」
別に正直な話しをすれば誰がどこで竜の覇王と名乗っていようが別に気にした事はないし、そういう肩書というのは自然と周りが言い始めるものだと思うので誰が覇王か言い争ったところで不毛な争いでしかないと思っていたし、それが嫌なのであれば力づくで潰せば良いだけだろう
しかしながら喧嘩を売られたのならば当然買うし、我が自分の事を覇王と名乗る事で相手が苛立っているのであれば何度でも覇王と名乗ってやろう。
たかがそんな事で自分の感情をコントロールできないあたり、こやつもまた以前の我を見ているようで、なんだかむず痒くなってくる。
この国は我にとって忘れ去りたい過去に触れて来る者ばかりではないか。
「ほう……我が家臣から聞いた通りのバカだな、お前は。まさかこの俺の国で自分の事を『竜の覇王』などとぬかす様なバカはいないと思っていたのだが、いやはや世界は広いものだな」
「世界は広いか……それに関してだけは同感であるな」
そう、世界はお主が思っているよりも広いぞ? 小僧。
「そんなお前は、我の逆鱗に触れた訳だが、その自らの事を覇王と名乗る事に弁明があれば聞いてやらん事もないぞ? まぁどの道今ここで、俺の手で殺されるだけだろうがな……っ!!」
「まぁ、そうであるな。そっくりそのままお主に変えておこうか。どうせこのまま手枷や足の重りを付けた状態で相手を倒して来たであろうことが、今の我の状態を解こうともしない現状から窺えて来ることからも、お主のような腰抜けが竜の覇王を語るなど百万年早いわ。良いか? 一度しか命乞いは聞かぬぞ? 後から命だけは助けて下さいと言っても遅いと知れ。 死にたくなければ今ここで我に跪き頭を垂れて命を乞え。さすれば今まで我にしでかして来た全ての罪を許そうではないか」
しかし、我もまだまだカイザル様のように自分の感情をコントロールできない事に少しばかり落ち込んでしまうものの、こんな卑怯な手段で覇王を名乗っているコイツは生かしておく理由も無いだろうとも思う。
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