第216話 闘技場
結局このメスも、そしてこのメスを作り出したこの国の価値観も竜である事に胡坐をかき、その他種族は塵芥とでも思っているのだろう。
以前の我のように。
しかしながらこの考えは停滞そのものであり、そんな考えをしている以上今よりも高みに上る事など不可能である。
そして、竜種でなかろうとも自分達よりも上の存在となった者が現れた時、いままで侮蔑というレッテルで他種族を見てきた、その濁り切った目では相手の力量など測れる訳もなく、格上の存在である我に対してこのような扱いをしてしまう結果となる訳だ。
だからこそ我はあの時カイザル様に出会い、負けて良かったと心から思うと共に、そこで出会うかつての我よりも強い他種族がいるという事を教えて貰えた事はかけがえのない財産となり今我の思想を作り上げる格となっているのだ。
そう、今の我はあの頃の停滞していた我ではなく、更なる上を目指し日々研鑽しているわけだ。
「ふん、人間なんぞに頭を下げてへこへこしているくらいだから教えてあげるけど、絶対に逃げようなんて思わない事ねっ!! まぁ、手枷をされ、足に重しをつけられた状態で逃げられはしないとは思うのだけれども、そんな事すら考えられない程知能が低いだろうし。わざわざそんなあなたに私が親切に教えてあげる事の有難みも分からないでしょうけどねっ!!」
そして、軽く払うだけでぶっ壊せる檻を壊さないように周囲を払いながら出てくる我の姿を見たメスの竜はそののっそりとした動きを見てさらに我を下に見下したのが見て分かる。
しかしながら、そんな我に対して色々と言いたいのは、過去の我も似たような者であった為気持ちは分からないでもないのだが、毎度毎度語尾に『!!』を付けなければ話す事もできないのか? と少しだけ辟易してしまう。
「はいはい。逃げるつもりなど毛頭ないのだがね……」
でも、もし行きつく先が処刑場などといったふざけ場所であるのならば、その時は我をこんな目に合わせた事を後悔させてやろう。
そんな事を思いながら我は言われた通り大人しくメスの後に続いて歩いていくと、外の光と共に外へ続く階段が目に入ってくる。
「さぁ、ここを上がれっ!!」
そして我はメスに背中を蹴られるようにして階段を登らされ、外へと出る。
その瞬間周囲からは割れんばかりの歓声が我の耳に聞こえて来るではないか。
そして周囲を良く見てみると、そこは闘技場になっているようで、聞こえてきた歓声は闘技場の外に設けられた観戦スペースや、空から羽ばたいてこちらを見ている竜たちの声であったようだ。
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