今まで使えないクズだと家族や婚約者にも虐げられてきた俺が、実は丹精込めて育てたゲームのキャラクターとして転生していた事に気付いたのでこれからは歯向かう奴はぶん殴って生きる事にしました
第214話 過去の我は黒歴史と化してしまっている
第214話 過去の我は黒歴史と化してしまっている
だからと言って腹が立たない訳ではないので、機会があればブッとばしてやると心に刻む。
「名前か? 我の名前はヘイロン。この世界の頂点に立つ竜の覇王とは我の事よっ!!」
「…………お前、我々の前で竜の覇王と申すか?」
しかしながら、我の名前を聞いても何の反応をしない所を見るに、カイザル様が言っていたようにどうやらこの世界は本当に異世界のようである。
その事に我は心が躍るような感情が湧き上がってくるではないか。
以前の世界の、我に歯向かう者がいないある意味で我にとっては平和な世界もそれはそれで『我こそが世界の頂点である』と思えて良いものであったのだが(カイザル様と出会うまでの話ではあるのだが)、しかしながらまだ我の知らぬ強者が居るかもしれぬというのは、若き頃を思い出すな……。
流石にあの頃とは違い年も取っており、カイザル様のお陰で感情ではなく知性で動く事を覚えた今の我からすれば、当時の我はただただ青かったなと振り返ってみると思う事ができる。
それだけ我はカイザル様と出会えて精神面で成長したという事だろう。
「あぁ、我こそは竜の覇王なり。サインが欲しいと申すのであればいくらでも書いてやろう。当時と違い今の我は大人の対応ができるからのっ!!」
◆
どうしてこうなった。
今我は竜王国の牢屋に閉じ込められていた。
こんな玩具みたいな牢屋など今すぐにでもぶち壊して逃げ出す事はできるし、この我に対してこれ程までに無礼な態度を取ったこの国を怒りの業火で焼き尽くす事もでき、我をこんな牢屋に閉じ込めた事を後悔させることできるのだが、それでは『何故我がこんな扱いをされているのか』という事が分からないままなので、それが分かるまでは大人しく牢屋に入ってやる事にする。
というか、こうして自分なりに動いてみて我はいかに獣じみた生き方をしていたのかと自己嫌悪に陥ってしまう。
今まで気に入らない事は全て力で解決して、本能のままで生きて来たツケが今この現状を招いていると言っても過言ではないだろう。
要は『我は一般常識を知らない』という事を突きつけられているのである。
ここで、怒りで暴れてしまっては、カイザル様とである前の獣状態の我に戻る事になり、それはただ単に『力が強いだけの空飛ぶトカゲ』でしかないではないか。
カイザル様にそう言われた日には、我は自害してしまいそうな程に恥ずかしい事であり、できる事ならば過去に戻って生き方を改めてしまいたい程に今の我からすれば過去の我は黒歴史と化してしまっているのだ。
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