第209話 イメージ


 そして現状を変える事も出来なければ変えるつもりも無いのも事実なのでこの娘に八つ当たりした所で何も変わらないと思った俺は溜息を一つしてヒルデガルドから視線を外す。


「それで、カイザル様は……昼食は今日も食堂でしょうか……っ?」


 しかしながら俺がこの娘を放置無視した所で、本物の感情ではないにしろ恋した相手に対してアピールしようとしてくるのが思春期というものである。


 そこはアピールをしたい、気に入られたいという欲望よりも羞恥心が勝る性格であれば良かったもののヒルデガルドはぐいぐいと攻めるタイプのようで、話を半ば強制的に切り上げた俺に対してめげずに話しかけてくる。


 前世でかつ思春期の頃の俺であれば好意を持っていない異性から好意を向けられた場合、嬉しく思えたのであろうが今の俺からすれば後々事とを考えると面倒くさいと思ってしまうあたり自分自身歳を取ったなと思ってしまう。


 この年頃は恋心をどう扱えば良いのか分からず、経験も少ない為駆け引きの方法も分からず自分の感情を表に出していく猪突猛進型か嫌われる事を恐れて表に出せない引っ込み思案型かの基本的に二種類であり、ちなみに俺はどちらかと言えば後者であった。


 今思うと何故あんなに怖がっていたのか謎であるのだが、それもまた青春であったと思えるくらいの青春時代であったと言えよう。


「っと、そうだな。 今日も食堂で昼食を取るつもりだが、それがどうしたのか?」


 そんな事を思っていると返事が一向に返って来ない事を不思議そうに見つめてくるヒルデガルドの視線に気づいたので慌てて返事をする。


「あの……実は今日私、カイザル様の分のお昼を作ってきたのですが……良ければ一緒に……その……ダメですか?」

「……まぁたまには良いだろう」

「はいっ!!」


 しかしながらそれはそれこれはこれとして作ってくれた料理を無駄にするのは元日本人として耐えられないので、本当は拒否した方が良いのだろうという事は分かっているのだが断る事はできなかった。





 基本的にカイザル様はぶっきら棒で冷たい、または怖いイメージがある。


 かくいう私もカイザル様の第一印象は怖そうな人であるという印象であったので余りどうこう言えたものであはないのだが……。


 しかしながら本当に冷たい人であればきっと私はあの時犯されていたであろう。


 もしそうならば私を助けずに任務を遂行するように命令した方が効率的な上に【聖女を傷ものにした】という大義名分も得れるからである。

 

 その為カイザル様は冷たいイメージとは違い心の優しい方であると知っていたというのが大きかった。


 

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